第34話 説得コマンドの成功に必要な物って何?
11月9日に第2回J9GPが開催されたので初投稿です。
ケンゾウさんの部屋を後にした俺は、ミロアさんサヴァちゃんといっしょに昼食を取った後、客間でゆったりくつろいでいた。
『この部屋の床って植物が編み込まれて出来ているのね! なんだか懐かしい感じがするわ!』
畳に大はしゃぎなミロアさん。故郷に思いを馳せているのだろうか。だとしたら、頑固なまでにジザニオン入りを拒否するのはなんでだろう。
……ダメだ。考えることが多すぎて何から考えればいいのかわからん。こんな時はお菓子でも食べてリラックスに限る。
「それにしてもサヴァちゃん、そんなに顔をしわくちゃにして、どうしたっていうんだい?」
「ハルさん……このお菓子、あんま美味しくないッス……」
な、なんだってー!?
いや待て。俺はあのモサモサの団子を経験したではないか。あれと比べたら幾らかはマシという可能性もある。
俺は意を決して、お菓子の包みを破き口の中に放った。
結果として、俺の顔もサヴァちゃんと同じような感じになったと記しておく。
うん。マズくはない。しかし美味しくもない。何かで見た事があると思ったら、アレだ。ただ栄養さえ補給できればいいと思っている人の食事だ。
『私は食事なんてできないから、あまり気の利いた事は言えないと思うけど……そのお菓子ってばそんなに酷いの?』
「そりゃもう。風味も食感も全然ダメ。期待も粉々に砕かれたよ……」
「栄養素だけが食事の全てじゃないッス……」
『そうなのね! 食事についてますます知りたくなってきたわ!!』
それから俺たちは、根掘り葉掘り聞いてくるミロアさんの興味が尽きるまで質問や解釈の受け答えに応じ、日が暮れた頃にはどっと疲れがたまっていた。
ミロアさんが満足しきったとおもったら、彼女が目を輝がやかせて俺の方を見てきた。
『さあ、今度はハルの番よ!』
「……ゑ?」
『何か悩みを抱えているのはお見通しなのよ! ちょっとしたことでもいいから白状なさい!』
「カンネンしてハクジョーするッス!」
「じゃあ、この国の飯がマズい」
『確かにそれも大切な事だけれど、あなたの悩みは他にもあるでしょう?』
「どうして、俺が悩んでるってわかるんだよ。ミロアさんにもサヴァちゃんにも、何も言ってないのに――」
『何も言ってこないからよ!』
「そうッス! 確かに自分、ちょっと頼りない部分はあるかもしれないッス。けど、ハルさんが悩んでるんなら力になりたいッス!」
ふたりの熱い後押しもあって、俺は考えてることを話すと決めた。ちょっと感動したのは、恥ずかしいから、今は心の中にしまっておこう。
「死面徒、いるじゃん。それがさ、最近強くなってきてさ、俺ひとりじゃ戦うのも厳しくなってるっつーか、そんな感じで。メイちゃんが協力してくれたらうれしいんだけど、全然来ないし、おれはどうしればいいのかなー、って悩んでる」
俺が話をしてる間、ふたりは真剣な顔で聞いてくれた。
「とりあえず、こういう時は正面からぶつかって、気持ちを伝えるのがいいんじゃないッスか?」
『慣れない事をしても、余計にぎこちなくなるだけよ。そんな状態で相手の心をほぐすのは、難しいと思うわ』
ファルも『光の魔法の源は俺のありのままの心』みたいなこと言ってたし、俺にとってはその方がいいのかも。ならばさっそく行動あるのみだ!
ふたりの言葉に勇気を貰い、俺はメイちゃんを探すべく駆け出す。
メイちゃーん! メイちゃんメイちゃんメイちゃんメイちゃんメイちゃんメイちゃん! メイちゃーん!
数10分くらいの捜索の末、俺はメイちゃんを見つけた。彼女がどこにいたかと言うと、屋敷の中庭に面した縁側。そこに座って日向ぼっこをしていたようだったので、俺もちょっと離れた隣でお日様を浴びさせて頂く。ああ……お日様が気持ちいい。もちもちのお団子と緑茶が欲しいねぇ。だけど悲しいかな、ここのお団子はモッサリパサパサ。
「……何しに来た訳?」
「…………あれ、何だっけ?」
お団子の事を考えてたら、何をやるのかすっかり忘れてしまった。やばい。
「はぁ……」
「あー、俺が何しに来たかはどうでもよくね? それよりも、今は日向ぼっこしてようよ」
いい日差しだ。澄み渡る青空も俺の頭を遥かに超えているし、吹いてくる風も涼やかで気持ちがいい。食事はあんなに味気ないのに。
柄でもなく、物思いに耽る俺だったが、今はそれが心地よい。畳の匂いのせいかな?
「私に何も、言ってこないの?」
「何? 何か言って欲しかった?」
「そういう訳じゃ、ないけど」
「そっか。じゃあ、何も言わない」
「『じゃあ』って……それでいいの!?」
「うーん、分かんない!」
俺はにへらと笑って答える。
無責任そうに思われるかもだけど、何が正解なのか分からない事だってあるし、答えを忘れちゃったりすることもあるから、仕方ないのだ。
それからは、互いに何も言わず縁側で柔らかな日差しを浴びながら、のんびりと過ごしていた。
しかし、平穏は俺が思ったよりあっさりと崩れ去る物らしい。
[ハル、死面徒だ! 場所は――]
「分かった! すぐ行く!」
俺がファルを変形させ跨ると、メイちゃんが尋ねてくる。
「……本当に行くの?」
「うん! だって、『それが使命』ってのもあるし、俺のやりたい事だから!」
そう答えた俺はアクセル全開で天へ飛び上がった。俺はやりたい事をやってくスタイルなんだよ!
そういや俺って何かに答えてばっかだな。
* * *
ファルのナビに従って死面徒の活動場所まで来た俺は、すぐさまバイクから飛び降り落下しながら戻ったファルを掲げ変身し、スーパーヒーロー着地。膝にクルって本当だね。
さて今回の死面徒の頭は、ガムのケース? もしやガム面徒か。粘着力の強いガムで、俺の動きを制限してきそうだ。
「いったい何をやっていたんだ?」
「見ての通り、ガムの試食会だよ」
爽やかイケメンボイスでそう言ってくる推定ガム面徒。変な見た目なのにこんなイイ声で喋られると、どうにも調子が狂う。
ともかく周囲の人は、みんなガムを噛んでいたようだった。今のところ特に目立った異変は感じられないし、むしろ元気に見えるけど、何をしてくる気だ?
「ただのガム試食会じゃないだろ。俺の知ってる死面徒なら、こんなとこで終わらないはずだ」
「焦らずともいずれ分かるさ!」
「……なあファル、今って大体何時頃だ?」
[今は午後だと記憶している]
「じゃあみんな、お腹いっぱいで眠いはずなのに、あんな元気なのか!?」
「気づいたようだね。眠気と疲労をエナジーに変換して、それを回収するのが私の役目さ!」
そんな……! あのお腹いっぱい食べた後特有の眠気に浸れないなんて、かなり絶望的じゃないか! これは許せそうにない。
[キミがとりわけのんびり屋なだけかもしれないがね……]
「ガム面徒! みんなの眠気は返してもらう!」
「私はガム面徒ではない! 私の名はメントール面徒だ!」
「ッ……!」
ダジャレかよ。笑いのツボに深く入っちまったじゃねーか。
何とか頑張って笑いをこらえていると、メントール面徒がこちらへお辞儀をしてきた。
「貴方も頭スッキリにして差し上げましょう!」
ガムのポッドから鮮やかなミント色の光弾が放たれる。何だその攻撃方法!? びっくりして判断が遅れてしまったので、ただ盾で弾くだけに終わった。俺のはるか上空で光弾は大爆発。エメラルドの粒子が降り注ぐ。
「おお、素晴らしい……! 感謝しますよ、光の魔法少女! この粒子が漂う空間では、私は通常の25倍のパワーを発揮できるのです!!」
/(^o^)\ナンテコッタイ。
敵の攻撃を防ぐどころか、逆にパワーアップに貢献しちまったぜ。
頭を抱えようとしたら、すぐ目の前にメントール面徒の姿が。
「遅い」
認識した時には、既に衝撃が走っていた。
「頭スッキリアッパーカットォ!!」
何が頭スッキリじゃ。こちとら頭クラクラやぞ。
こう言う時は逆転のチャンスに賭けよう。{6}か{9}が出れば、粒子を散らせるんだけど。
───────{11}───────
そうはいかないのが運ゲーたる所以。とはいえこの効果なら、デタラメに剣を振っててもいつかは当たるのではないだろうか。
メントール面徒が視界から消えた瞬間、俺はそれを実行に移す。
「無駄だ」
あっさりと俺の右手首は踏みつけられた。あっ、そっかぁ……。攻撃回数は増えても攻撃そのものは増えてないから無駄だったんだ。
ぐりぐりするのやめて。痛い。この体制では堪らん。もう1度必殺技を。
───────{1}───────
これは、俺の上に死面徒がいるこの状況ではチャンスではないか!?
しかし金ダライはピンポイントに俺の頭へ落ちてくる。どんなメカニズムだよ。ハズレ設定したの恨むぞ、先代。
散々な目に遭う俺に見かねたのか、メントール面徒が俺の手首から脚を放す。あー、まだ痛い。
「このメントール粒子を用いればこういう事も可能になるのです!」
メントール面徒は手の中にありったけの粒子を溜めこんでいる。これは大技の予感……! 絶対に阻止しなければ!
───────{5}───────
電流攻撃。いけるか?
いや、いくしかない! やるんだよ
! だって早くしないとあのヤバそうな攻撃が来るし! いやいや見かけだけで実際は大したことないってパターンもあるんだけどさ、今回はどう見てもガチなんだだよ。けれど俺が剣を振るっても、そのほぼすべてが回避されてしまう。早くしないと、何とか阻止しないと……!
「メントールのどスッキリ砲!」
間に合わなかった。咄嗟に体勢を低くし盾で防ぐ。が、かなり力が強い。
[ハル! この攻撃でさらに多くのメントール粒子がばら撒かれている!]
うせやろ。だったらこれって実質無尽蔵で、俺が耐えきってもさらに強くなったメントール面徒が控えてるって事!? ダジャレで思いついたようなネーミングしてる割に性能がガチすぎないか?
「今からでも遅くない! ファル、これって反射できる!?」
[無理だ! エネルギーが、ケタ違いすぎる……!]
「それは俺も感じてるってば!」
あ、これアカンやつ。そう思った頃には、俺は既にミントグリーンの極光に飲み込まれていた。
耐え切れず吹き飛んだ俺は、空中に放物線を描く途中で誰かにキャッチされる。誰か、助けてくれた……のか?
「オレはダンベル面徒! 光の魔法少女、貴様を抹殺すべくこの地へやって来た!」
今理解しました。絶望ってこの状況を言うんですね。
晴くん史上最大のピンチ!
メントール面徒、なんか書いてる途中で能力盛られてクソ強くなったやべーやつ。
使命をあほくさいと思っている訳ではありません。何もかもを捨てて使命に殉じる事をあほくさいと思っております。




