第35話 増援出現
ポケモンシャイニングパールの懐かしさに脳をやられています。
それと今回、最近の更新分より長いです。
乱入してきた死面徒に空中でキャッチされた俺は、そのまま落下し地面へ叩きつけられた。勿論その地面は、メントール面徒が放出した粒子で満ちている。勘弁してくれよ。こちとらもうダメージがデカすぎてフラフラなんだ。2体いっぺんに相手できるような状態じゃない。
もうまぢ無理。意識が飛びそう。
[ハル、駄目だ! 今意識を無くしてしまうと、敗北と同じ意味になってしまう!]
「そうは言ってもさ、この状況だよ? 俺もう疲れた……」
[キミが倒れてしまったら、この世界はどうなるというんだい!? この世界だけじゃない! キミが此処に来る前に居た場所もだ! だから無様でも惨めでもいい! 立ってくれ!! お願いだ!!!]
「はは、随分とムチャなお願い言いなさる……」
それになんだ、いつになく熱いな、ファル。ここはその熱量に免じて、ちょっくら限界超えてみっか。体はまだ痛むけど。
「驚いたな。まだ立ち上がる気力があるのか」
「さっきまで無かったんだが、急に湧いてきたんだよ。不思議」
「ならばそれも枯らしつくすまで!」
2体の死面徒が同時に俺に襲い掛かる。気を抜くとやられてしまう。脳を極限まで稼働させろ……!
ダメージを抑え込むように分泌されるアドレナリン。脳細胞もフルスロットルで目から入ってくる情報を伝達する。その過負荷すらどこか心地よいと感じてる最中、今まで見えなかったメントール面徒の動きが、見えた。
「何だとッ!?」
迫る拳を的確に盾で防ぐと、メントール面徒からそんな驚きの声が漏れる。俺は伽藍洞になった胴体へ一閃。
「ぐあっ!」
「下がっていろメントール面徒よ! オレが前に出る!」
そう言うやダンベル面徒は俺の前へ。メントール面徒は後ろに引きメントール弾で援護してくる。
戦ってみて初めて分かる相手の力量。こいつ、一撃一撃が重い重量級ファイターで単純に強い。素のスペックならメントール面徒よりも上だろう。
ならば俺はどうするか。さほど考えなくても答えは決まった。
今この場にある物を最大限利用するだけ!
俺の目は今、メントール面徒とダンベル面徒をそれぞれ捕え、動きを観察している。そしてダンベル面徒と組み合いを交わしつつ、メントール面徒がメントール粒子をある程度までチャージしたのを確認した。
発射された弾を俺はリフシールドで反射し、ダンベル面徒へぶつける。光弾を食らい怯むダンベル面徒。俺はこれを好機と畳みかける。まずX字に斬り、ジャンプしつつ正中線に沿って斬り上げ、からの蹴りつけ。空中でジェイルアンカーを発動し動きを封じてから俺とメントール面徒の間にダンベル面徒が来るよう位置を調整し〆に必殺技。
───────{4}───────
まあまあな出目だが、今は相手にしっかりダメージを与える方が重要だ。ダンベル面徒はそのパワーで既に鎖を引きちぎっていた。過度な追撃は厳禁、と。
ダンベル面徒との距離を離し、メントール面徒を警戒しながら様子を窺う。
するとダンベル面徒が走り寄って仕掛けてきたため、攻撃してきたと判断し拳を振り放ったタイミングで、俺は身を屈ませて必殺技を放つ。
───────{2}───────
しかし、なんとジャンプされ避けられた。ならばと俺は地面に両手をつき逆立ちの姿勢でオーバーヘッド踵落としを食らわせる。
無防備に踵を食らったダンベル面徒はダウン。俺も尻餅をついたが、その姿勢のまま必殺技を発動。なりふり構ってなんかいられない。
───────{9}───────
握ったヴィブジョーソードを振るえばかまいたちが飛ぶ。それは着弾するまでの間、充満するメントール粒子を吹き飛ばし、まだ少なくないながらも粒子を減らす事ができた。
「おのれ……!」
「しかしメントール面徒よ、相手は手負いだ。連携で一気に畳みかけようぞ!」
「承知!!」
そう言うや二体の死面徒は二手に分かれた。何をしてこようが俺のやる事は変わらない。
足掻いて、足掻いて、光が見えるまで足掻き切る。
たとえ死面徒が挟み撃ちにしてきても同じだ。丁度剣を持っている側に、遠距離戦を主体とするメントール面徒がいるというのも厄介だが、剣でエネルギー弾をどうにかできない訳ではない。その場合、メントール粒子の散布を許してしまうが。
そうして威力を増したメントール弾が俺に襲い掛かってくる最中、ダンベル面徒をよそ見してはいられない。奴の攻撃は、今の俺にとっては一撃くらっただけでノックアウトだから。盾で応戦するも、盾越しに伝わってくる衝撃が次第に俺の腕に響いてくる。
そして、均衡が崩れた。
メントール粒子が十分にチャージされた砲撃と、俺の顎を狙った神速の足刀。
マズイ。ここまで思考がはっきりしているからこそわかる。攻撃を捌ききる事は出来ない。それでもと精一杯の抵抗として防御を試みるも、威力は強く、俺はとうとう地に伏してしまう。ここまでか……!
「まずは一人だ」
「メサイア様に逆らう愚か者め。己が過ちを、その足りない頭脳でも十分に理解できただろう?」
「…………ざっけ…………!」
「ふむ。最早喋る気力すら使い果たしたか」
そう言われるや俺は蹴飛ばされ、2、3回バウンドながら地面を転がる。
[大丈夫かい?]
「んぁ? ぽへ~」
[覚醒モードが切れた!]
さっきまでの集中はどこかへ消えちゃった。どこ行ったんだろうね。誰か探してくんない?
「こうなってしまえば奴は形無し。後は思うがまま甚振りつくそうぞ」
「この世からスッキリさせに行きましょう!」
もはや絶体絶命。死を覚悟し受け売れようとしたその時、俺の上の方から声が聞こえてきた。
「アビサル・ガタゾル・ルルエスタ! 闇よ、空舞う粒子を呑みこみなさい!」
すると闇に包まれたと思いきや、それが明けた時には空気中にメントール粒子は無くなっていた。
「なんと!? 私のメントール粒子をかき消したというのか!!」
それにあの詠唱、聞き覚えがある。という事は、来てくれたんだ!
メイちゃん!
「私に発破かけた手前、こんな所で無様にくたばってんじゃないわよ」
「助かった! けど、俺が生きてるだけでかなり儲けものじゃない? これで2対2だぜ!」
「バカ。ズタボロのアンタも介護しなきゃならないから実質1対3よ」
俺はメイちゃんに担がれながら無理やり立たされつつ、メイちゃんにお礼を言う。そうしたら帰ってきたのは俺も敵だという言葉。
なんじゃそりゃ。シミュレーションゲームでプレイヤーが動かせない第3勢力は敵って理論と同じような事か? 思い出したら腹が立ってきたな。砂漠マップの魔導士、忍者、1ターン2回行動……経験値返しやがれ!
「気をつけてメイちゃん。えっと、筒みたいなやつの方は攻撃で自信を強化につなげるし、両端におもりが付いてるやつは単純に強い」
「……それさえ解ればだいぶ有利ね」
「褒めてくれてもいいのよ?」
「うっさいアホ!」
アホって言われた……親にもクラスメイトにもそんな事言われた事ないのに……。みんな親切だったんだなって……。
こんな風に気分が落ち込んだ時は、無理やりにでもポジティブに行こう。バカでアホな部分が、俺のチャームポイントだってな! バカでアホじゃない俺なんて俺じゃないんだぜ!
「アイムフーラーフーリッシュ! イズ、マイアイデンティティー! イェーーーーーーーーーーーーーーイ!!!!」
「うっさい。アンタってば本当にクソお気楽ね。親の顔が見てみたいわ」
「父親の方は今写真でしか見られないけどそれでいい?」
「アホ。そんな事を軽々しく言うんじゃないわよ」
「お喋りはそこまでです! メントール砲!」
「……! 闇よ包め!」
「え、何?」
メントール面徒が砲撃を放った途端、俺を押しのけてメイちゃんが前に出る。
メイちゃんが展開した闇が、メントールを呑みこむ。メントールは闇の彼方へと消えていった。
「しまった! これではメントール粒子が拡散できない!」
「これでアンタを実質無力化できるって訳!」
「なるほどぉ!」
「ならばオレの出番だぁ!」
飛び出してきたダンベル面徒の拳をメイちゃんは刀でいなす。凄いテクニカルだ。
メントール面徒の援護射撃に的確な対応を行いながら、ダンベル面徒とも切り結ぶメイちゃん。
ボロボロの俺だけど、これを黙って見ている場合ではない。いつ形勢が死面徒側に傾くかもしれないからだ。
そろりそろり。気配を殺しメントール面徒の背後に回り込む。
───────{10}───────
斬りつけたメントール面徒の動きが止まった。もう1度だ。
───────{8}───────
しめた。これならまだこちらのターンを続ける事ができる。
───────{5}───────
「この体……あばばばばっ!」
氷漬けから解放されたメントール面徒は電撃を食らい痺れる。その隙に俺は『ジェイルアンカー』でヤツを拘束し必殺技を放つのだった。
───────{10}───────
まだまだ俺のターン!
───────{9}───────
感覚で、まだメントール面徒が止まっている時間はもう1発分残っていると判断し、風の刃をダンベル面徒への牽制に使う。
本命はこの次だ。
───────{12}───────
ついにキターーーー!!!
キュインキュインとけたたましく鳴るヴィブジョーソードを、時間流が止まったメントール面徒へ思いっきりぶち当てる!
そして時は動き出す。
「焼肉の後の口臭ケアをお忘れなきよう……!」
まずは1体撃破!
「おのれ、よくも同胞を……!」
「よそ見している場合!?」
「チィッ!!!」
震えるダンベル面徒にメイちゃんが斬りかかる。俺もこのまま、休憩するわけにはいかないか。
[ハル、この剣は続けて同じ数字は出ないようになっているよ]
「了解。何度か空振りすればいいわけね」
それじゃあ一撃必殺の12が出る確率は実質11分の1って事じゃん! やったね!
でもさっき、俺が放った背後からの風の刃にも反応してたし、ダンベル面徒に攻撃を当てるのはなかなか難しいんじゃね? ジェイルアンカーも、あまり通用しないし。
「メイちゃん! 俺も手伝おうか?!」
「要介護人に戦闘参加されても足手まといよ! アンタはそこで黙って見てなさい!」
「でも! そいつめっちゃ強いんだって! 俺ひとりじゃ敵わない位に!」
「アンタじゃ勝てなくても私なら勝てるのよ! 今からそれを実証してやるわ!」
えー、でも……とりあえず必殺技は撃っとこ。
───────{9}───────
数少ない遠距離への対抗手段だ。これに力をこめて……抜き放つ!
「またもそれか! 芸の無い奴め!」
「そいつはどうかな?」
直線に飛んで行ってた風の刃はダンベル面徒に当たる直前で軌道を変え、足元に着弾したのだ。ダンベル面徒はその衝撃で空中に打ち上げられ、無防備な状態。狙い通り!
「今だよ!」
「余計なお世話よ! アビサル・ガタゾル・ルルエスタ。悠久に漂う闇よ、我が刀に集まりて常夜の帳を下ろせ!」
おおう、メイちゃんの詠唱がいつになく本気だ。じゃあ俺も必殺技で12狙ってみますか。1でさえなければ、カッコつくんだが。
───────{5}───────
……ああだこうだ言ってられないな!
「ヒドゥンスラッシャー!!」
「ライトニング一閃!!」
俺たちは跳び上がりながら、落ち行くダンベル面徒を交差しながらX字に切り抜けた。
「闇に溺れて沈みなさい」
こうして事件は幕を閉じたが、メイちゃんにとってはある意味ここからが本番なのだろう。それを見届けるまで、俺は倒れる訳にはいかない。
メイちゃんの肩に担がれるように引きずられて、やって来ました立派なお屋敷。門をくぐった先の玄関前には、仏頂面のケンゾウさんが立っていた。
腕を組んでいるケンゾウさんを見てメイちゃんは僅かに後ずさり、俯いて怯えを見せる。
ケンゾウさんが手を出すと、メイちゃんは目を瞑って身体を強張らせた。恐らく、拳骨でも飛んでくるんじゃないかと思っているのだろう。
警戒するメイちゃんの頭に、ケンゾウさんのしゃがれた手が、ただ、ぽん、と置かれた。
「頑張ったな……我が孫娘よ」
そう言ってケンゾウさんはメイちゃんの頭を優しく撫で始める。しかしメイちゃんは、そんな手をばっ、と払い除けた。
「今更こんな事されたって……どうしたらいいのかなんて全然分かんないんだから!!」
目から大粒の涙を流しながら打ち明けるメイちゃんの様子は、驚き、そして戸惑いといったところか。
ケンゾウさん、頑張れ! 俺の見立てじゃ、あともうひと押しだから!
「……わしが言う資格はないかもしれないが、これだけは言わせてくれ。お前は昔から良くやっている。誇りの孫娘だ……」
その言葉でとうとうトドメを刺されたか、メイちゃんは走り出しケンゾウさんに勢いよく抱きついた。
これは、感情が爆発したね?
「バカ! おじいちゃんの大バカ!! なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」
「すまない……不出来なわしで本当にすまない……」
「そんなに謝ったって……許さないんだからね……!」
嗚咽混じりに訴えかけるメイちゃんを、ケンゾウさんはぎこちないながらも抱きしめる。
ケンゾウさんの衣服はメイちゃんの涙ですっかり濡れきってしまった。けれど、ケンゾウさんにはその事を気にしている様子はない。
俺のお節介が実を結んだのを見てほっとしていると、唐突にファルが尋ねてきた。
[しかしハル、どうして今も変身を解除していないんだい?]
「あーそれね。変身解除したら今までの疲労とか全部帰って来てぶっ倒れそうで、でもケンゾウさんとメイちゃんの様子は見届けたかったから今も変身したままなの」
この後変身を解いたら、思った通りすぐに意識が落ちぶっ倒れた。メイちゃん、迷惑かけてごめんなさい。




