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鷹之森家訪問

 鷹之森家訪問ーーー。

「やあ、ゆいちゃん。パパだよーーー」

「あっ、はい。こんにちは、誠一さん」

「いらっしゃい。ゆいちゃん。ママですよぉ」

「お邪魔します。馨さん」

 崩れ落ちる、しーちゃんの父、誠一様。同じく母の馨様。いつものやり取りです。

 昔から心の中では様付けしてたけど、実際にはさん付けで呼んでいる。しかし、お二人はパパ、ママと呼んで欲しいらしくてアピールが激しいのです。しーちゃん一人っ子なので義理でも娘ができるのが嬉しいそうだ。私としてはまだ結婚してないから恐れ多くて呼べません。だから、いつもお二人はがっかりして崩れ落ちる。

「ーーーだから言っただろう!パパ呼びなど百年早いと!」

「百年経ったら皆死んでますって」

 うちの父とそれにツッコむ母。

「ーーーおのれ、咲山!残業を押しつけてやる!」

「あなた、その台詞は情けないですよ」

 誠一様と窘める馨様。

 うーん。鷹之森家と咲山家。打ち解けたのはいいけれど、父親同士のやり取りのレベルが低いのはいかがなものなのか。

 しーちゃんと私は苦笑いするばかり。

「いい加減、本題に入りましょうか」

 にっこりと微笑む、馨様。この方が一番力を持っていると言っても過言ではないでしょう。

「ーーーで、先走って一戸建てを建ててしまった経緯を説明してください」

 改めて応接間に案内されて、落ち着いたとたん、父が切り出した。

「ゆいちゃんはもう年齢大丈夫だし、静流も来年で十八なんだからもういいかなぁって思って…‥」

 は?という五対の目が誠一様に向けられる。皆、何となく裏があるのかなと思っていたけれど、裏も何もなかったなんて。

「いや、もちろん、静流とゆいちゃんは社会人になってから結婚するって聞いていたけどね?早いにこしたことはないしーーー早く私もパパと呼ばれたいんだよ!!」

 ちゃんと話していたのに最後は本音がただ漏れになっていた。私が結婚してないことを理由になかなかパパ、ママ呼びをしないものだから早く一緒に住まわせ、結婚させてしまえということらしい。正直ドン引きです。大企業の代表取締役社長の叫びが応接間を駆け巡る……しーちゃん、何とかしてください。

 しーちゃんを見つめると……目を反らされた。無理のようだ。馨様は苦笑い。父と母もドン引きしている。

 漂った変な空気に気づいたのか、馨様がこほんとセキをつき。

「こ、こういう理由ですので、鷹之森家では二人が一緒に住むことは反対しません。先走ってしまって咲山さん達には申し訳ないと思っております」

 ーーーいかがでしょうかとこちらの反応を伺ってきた。

 私は賛成派なので、父の顔色を見る。母も同じ。決定権はやっぱり父にあるのだから。すでにしーちゃんも私も希望は言ってあるので、後は大人達の対応に任せることにして、席を外したのだった。

 しーちゃんの部屋へ行き、二人してため息をついた。誠一様の言葉に疲れてしまったのだ。

「ゆいちゃん、うちの父がごめんね」

「ただパパ呼びされたかっただけなんて……」

「うーん、僕もびっくりだよ」

「今度から呼んであげた方がいいのかな?」 

 結婚を急がせたいくらいに呼んで欲しいのなら呼ぶしかないだろうか?でも、やっぱりまだ恐れ多い気がしてしまう。

「そんなの気にすることないよ。呼べるとき呼べばいい」

「うん」

 しーちゃんがふんわり笑ってくれればそれだけで安心できた。私も笑顔で返事をした。

「ねえ、ゆいちゃん」

「なーに?」

 しーちゃんが私のところまでやって来て、目の前で跪いた。おもむろに手を取られ、握りしめられる。

「咲山唯子さん。君を愛しています。どうか僕と結婚してください」

 何ーーーーー!?しーちゃん、何度目のプロポーズですか!!

 握られた手にチュッとしーちゃんの口づけが降る。真剣な表情でこちらを上目使いで見上げる。その上目使いに弱いことを分かっていてやるとはすっかり確信犯だ。

「ーーーはい」

 返事がこれしかないのも分かっているくせに。同じことしないでください。顔に満足って書いてありますよ?

「本当は自分の力でゆいちゃんを養いたいんだけど。仕方ないよね……」

「うん。もう家建てられちゃっているからそれは仕方ないと思う」

「でも、今後僕が稼げるようになったらちゃんと僕のお金で家を建てるよ」

「しーちゃん、頼りにしてる。大好き」

 そのまま、しーちゃんに手を引かれ抱きしめられる。お互いの体温はすぐに馴染み、離れがたくなってしまう。ぎゅっと抱きしめ合う力が強くなった。しばらくそのままでいたのだけど、ノックの音に慌てて離れる。

 声をかけてきたのは馨様だった。

「静流、ゆいちゃん。話、まとまったから家を見に行きましょう」

 さすが、話が早いです。




 新居予定の物件は鷹之森家と咲山家の中間くらいの距離ににそびえ立っていた。ご近所宅よりも豪華で浮いているという訳でもなく、程良く馴染んでいた。浮いていたら多分住むことを拒否していただろう。多分じゃなくて絶対かな?

 誠一様は仕事があるということで案内人は馨様だ。しーちゃんとうちの父と母と私も一緒に続く。

 真新しい家は当たり前だけどがらーんとしていて寂しい感じがする。

「きゃー素敵ねえ」

「これはインテリアに力を入れたいわね」

 母親二人が実際に住む私達よりも盛り上がっていたので、インテリアの類に口出しするということですか?

 しーちゃんの方を見ると。遠い目をしながら首を横に振られた。

 好きにさせようっていうことですね。了解です。

 母親二人はさらに盛り上がり、勝手に移動し始めた。リビングに三人、ぽつーんと取り残される。私もあちらの二人に合流するのが正しいのだろうが、ついていけないので遠慮した。

「……」

 支配するのは沈黙。微妙にピリピリしているのは父が醸し出す威圧っぽいもののせいだろう。

「……静流くん」

「はい」

 父が口を開く。空気が緊張感を増した。

「君達は結婚するといっても、まだ先の話だし何よりも未成年なんだ。前に言ったこと覚えているかな?」

「はい。清い交際をするとお約束しました」

「じゃあ、分かっているよね?一緒に住むからといって、ゆいちゃんに気軽に触れてはいけない。そういうことは結婚してからだ!」

「……はいっ」

 父がズイッとしーちゃんの目の前に立ち、顔を近づけて睨みを効かせる。次の瞬間。

「分かればいいんだよ……皆乗り気で味方がいなくって……鞠子さんは叩かれるし……」

 しーちゃんに念押しできたからだろう、一気にテンションが低くなりじめじめし出す父。ため息しか出ない。しーちゃんも苦笑いしていた。

 その後は何事もなく、下見が終わり解散となった。

「来週くらいには家具、家電を揃えられると思うわ。楽しみにしていてね。鞠子さん、また明日打ち合わせしましょう」

「はーい。宜しくお願いします。馨さん」

 帰り際の会話を振り返ってみると、母親二人で家具、家電を決めることになったようだ。来週揃えるなんてどれだけ楽しみなんだろう。しーちゃんと私はやっぱり苦笑いするしかなかった。

 父はまだテンションが下がっていたけれど、しーちゃんに言いたいことを言えたせいか帰り道はだんまりしていた。

「最初のうちは見回りするからな」

 と帰宅したとき言っていたけど。

 前途多難だなあと思った。








◆おまけ◆鷹之森生徒会長親衛隊隊長の証言【後編】



ーーー小坂さん、前回に引き続き、今回も宜しくお願いいたします。

「はい。宜しくおねがいします」

ーーー前回は、中等部時代の事件を聞いたところでお時間となりましたが、今回はズバリ静流様、唯子様お二人の普段のお姿を小坂さんからどのように見えるかお聞きしたいと思います。まずは、普段はお二人と接点はありますか?

「うーん、あまり無いように思います。基本的に副会長の笠井さんがそばにいるので(苦笑)」

ーーーでは親衛隊はどのようなお仕事をしているのでしょうか。

「静流様は生徒会長ですし、あの外見ですからね。ファンが多いので移動の際、スムーズにできるようにファンを誘導したりしています。後は護衛みたいなものでしょうか。唯子様にも何人か親衛隊に張り付いてもらっていますよ。静流様とお二人のときは大丈夫ですが、唯子様お一人のときは未だに詰め寄る馬鹿がいますからね」

ーーー中等部事件から周囲に認知されたはずですが。

「高等部からはさらに外部受験生が増えますから……知らない者もいるんですよ」

ーーーそうなんですか?

「ええ。外見と鷹之森の名前に寄ってくる。蠅みたいな奴らです」

ーーー中々辛辣ですね。

「あの溺愛ぶりを見ているくせに何故言いがかりをつけなければならないのか、本当に疑問なんです」

ーーーそういえば、それに似たような事件がありましたよね?転入生の話ですけど。

「生徒会の書記に付きまとっていた転入生ですね?あれも大変でした。我々は静流様の親衛隊なので表立って動けなかったんです。静流様も唯子様も静観するよう指示されまして」

ーーー書記の親衛隊の方は?

「書記にお願いされていて、こちらも動けなかったようですね。そうこうするうちに転入生は生徒会室に出入りするようになってしまったんです。我々親衛隊でも滅多に出入りできない生徒会室に」

ーーーあの転入生もすぐに転校してしまったので事実確認ができなかったんですが……。

「いや、あまりそこには触れない方が良いと思います。自分もこれ以上は言えません」

ーーー……では、話を戻しまして(苦笑)。現状、親衛隊は唯子様をどのように思っているのでしょうか。

「中等部事件の後は、唯子様に反発する者は一人もおりません。むしろ、お二人が一緒にいることを指示する者だけですね。目の保養になるとかで」

ーーー目の保養ですか。

「前回も言いましたが、お二人でいらっしゃると静流様の眼差しが違うんで、その様子を見ていたいらしいんです」

ーーー親衛隊の意識も変化したということでしょうか。

「はい。先輩方も大人しくなりましたし、結構平和になりました」

ーーー最後に小坂さんはお二人をどう思われていますか?

「そうですね……お守りしたい方々ですね。静流様も唯子様も本当にお互いを思いやっておられますので、少しでもお手伝いできればと思います。自分が親衛隊隊長のうちは頑張ります」

ーーーそうですか。もっと小坂さんにはお聞きしたいところですが、紙面の関係上インタビューを終了させていただきます。前編、後編とお付き合いいただきまして、ありがとうございました。

「いえ、こちらこそありがとうございました」



ーーー生徒会長親衛隊隊長小坂さん、本当にありがとうございました。


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