表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

しーちゃんのお話

 私は叫んだ。一応、周囲に気を使って小声です。

 一瞬冗談だと思ったけど、しーちゃんは真剣だった。

「新居って!?」

「新築一戸建てなんだが、うちの父が暴走した結果だ。まだ結婚できる年齢じゃないのに、準備を進めていて……出来たから引っ越せって言われたんだ」

 鷹之森家って結婚祝いとして事前に一戸建てを建ててしまうのか。

「静流様、どうするのでしょうか」

「それを含めて、今後のことについて話したいと思っていたんだ」

 しーちゃんと私。私は付属の大学にそのまま進学する。しーちゃんは自分の力を試したいとのことで外部の大学を受験する予定。結婚はお互い社会人になって落ち着いてからという流れだった。その前に同棲するのもいいねなんて言ってたのに。結婚できない年齢で引っ越していいだなんて。

 一つ屋根の下。二人っきり。

 二人っきり……しーちゃんは『俺様』モードにはならないだろう。だって、誰にも気を使うことなんてない。

 小動物のハムスター全開のしーちゃんのあられもない姿が見れる。

 朝、寝ぼけ眼のふんにゃり笑顔でおはようと言ってくれるしーちゃん。

 朝ご飯を笑顔で食べるしーちゃん。

 昼休みは今までどおり、ふにゃふにゃお昼寝のしーちゃん。

 夕ご飯は朝ご飯と同じように笑顔で食べてくれるしーちゃん。 

 夜、湯上がりの火照った体ーーーやはりここは上半身裸が望ましいーーーを惜しげもなくさらすしーちゃん。

 私的にはバスタオルからチラリズムされる割れた腹筋をガン見したい。(大丈夫、しーちゃんは鍛えているから)

 就寝時、間接照明に照らされ色気を垂れ流ししながらおやすみと言ってくれるしーちゃん。

 きゃあぁーーーーーー!!

 独り占めよ!独り占め。予定より早くしーちゃんと二人っきり。

 目の前にいる美人さんを自分だけで独占できるのよ!!

 ごめん、しーちゃん。私は大っ賛成です!!

 私は一人でテンションMAXになってしまい、しーちゃんに宥められてしまった。階段下だというのに何をやってしまったのか。

 苦笑いのしーちゃん。恥ずかしい。

「ーーー僕もゆいちゃんと一緒に住みたいけど」

 うっきゃあ!耳元で言わないで。

 しーちゃんの顔も真っ赤になっていた。お互い見ないふりしてみた。

 

 


 翌日のお昼休み。いつもの生徒会長専用室でまったり過ごす。今日は珍しくしーちゃんを膝枕していない。ストレスが溜まったのか、私はしーちゃんの膝に座らされ、抱きしめられている。泣いてはいないのでとても溜まっているわけではなさそうだ。

「昨日、すごかったよ。帰ったら晴人さんが来てて。ゆいちゃんはまだ渡さないからなバカ社長って、父に怒ってた」

「そうなの!?昨日、酔っぱらって帰って来たからしーちゃんちに行ってたなんて知らなかった」

 しーちゃんの吐息が首筋にかかってくすぐったい。

「ひとしきり罵った後、二人して飲みに行ったんだ」

「もう、お父さんたら……」

 驚くべきことにうちの父としーちゃんの父誠一様は顔合わせで何度か会ううちに意気投合して仲良くなってしまったのだ。もちろん、仕事とプライベートは違う。ちゃんとうちの父は実力で出世しました。

「一緒に住むこと、母も一応反対姿勢だったんだけど本人たちの判断に任せるって。鞠子さんは何か言ってた?」

「やだなー、しーちゃん。うちのお母さんが反対するわけないでしょ。目キラッキラさせて賛成してた」

「ーーーうん。何か分かった。鞠子さんは乙女だもんね」

 しーちゃんはダメージを受けたらしく、顔を俯かせた。うちの母は最強の乙女ですよ。

「しーちゃん、私は一緒に住みたいよ?しーちゃんをもっと甘やかしたい」

 しーちゃんの頭をぎゅっと抱き込む。ずっと小さい頃からしーちゃんは頑張ってた。御曹司だから当然だと言われるかもしれないけれど、しーちゃんは頑張ってると思う。

 だから、私はそんなしーちゃんを受け止めたい。たくさん幸せにしたい。今も幸せだけど、もっと幸せにしたいのだ。

「ーーーゆいちゃん、僕だって一緒に住めたら嬉しいけどね。ずっと一緒だとーーー多分我慢できないよ?」

 俯くしーちゃんの表情は見えないけど、耳が真っ赤になっているからきっと顔も赤いのだろう。我慢できないって……えっとそっちの話しだよね?

「しーちゃん……?」

「ゆいちゃん」

 ふいに顔を上げたしーちゃんの唇が私の唇にちょんと触れる。

「しーちゃん……」

「ゆいちゃん分かってるかな。僕だって男なんだよ?」

 真っ赤に頬を染めて、上目使いで言われても困る。鼻血が出そうだ。

 しーちゃんはまた私に近づいたけれど。

 ーーーコンコン。

「静流様、唯子様。そろそろお時間です」

 無情にもくるみちゃんのお声がかかりました。

「やっぱり笠井が憎いよ……」

 しーちゃんはどんよりした。

 私はただただ鼻血を我慢した。




 くるみちゃんに週末の予定を確認をしてもらい、もう一度鷹之森家に集合して話しをつめることになった。

 やっぱりお互い未成年なので、保護者の同意は必要です。一番の障害はうちの父になるわけだ。清い交際を!と笑顔で言ったうちの父のおかげでしーちゃんとはキス以上のことはしていない。だから、お昼休みの台詞は本当に……。家に帰った今、思い出してしまって、絶賛鼻血を垂れ流し中です。

 しーちゃんと出会って十年。レバーが欠かせなくなりました。

 しーちゃんの可愛さに耐性つくかなと密かに思っていたけど、無理そうだなあ。あの笑顔で押し切られたら絶対賛成してしまう。とことんしーちゃんの可愛さには弱い私。

 しーちゃんも俺様を止めて、小動物のまま方が良いんじゃないかな。一切邪気がないふんにゃり笑顔で商談を押し切るしーちゃん。平和に話がまとまりそうだ。あっ、でも、鼻血が我慢できない私のようにしーちゃんの笑顔にやられて惚れちゃうかもしれない。男女関係なく。

 ーーーうん。やっぱり、しーちゃんは俺様のままがいいか。この案は却下。

 今だってしーちゃんの『俺様』モードにファンは多い。ギャップ萌えでさらにファンを増やしてどうする。ひいてはライバルを増やすことになって肉食獣にしーちゃんが狙われる!

 今日はもう寝よう。しーちゃんのせいで思考が爆発している。お休みなさい。






 ーーー結局、結論から言うと、しーちゃんと私は一緒に住むことになった。

 だが。二人っきりという状況がお互いにとってどれだけ破壊力を持つのかを失念していた。いくら熟年夫婦並みの関係性を構築していたとしても、まだ年齢的には若いので。加えて私はしーちゃんの笑顔でダメージを受けるわけで。

 何が言いたいのかというと。

 しーちゃんはすごかった。







◆おまけ◆鷹之森生徒会長親衛隊隊長の証言【前編】


 鷹之森生徒会長親衛隊隊長の小坂祐太こさかゆうたです。何故、ここに出演することになったかと言いますと静流様と唯子様について証言して欲しいと新聞部(天の声)に依頼されたからです。園内新聞おまけでネタを探しているそうで、自分から見たお二人を話させていただきます。


ーーー小坂さん、本日は宜しくお願いいたします。まずはどういう経緯で親衛隊へ?

「宜しくお願いします。そうですね。自分は初等部からなんですけど、鷹之森静流様と同じクラスになりまして。同い年なのに他の人より風格がありました。とにかくすごくて憧れました。最初は遠巻きに見ていた一人だったんですが、ああいう人ってすぐに親衛隊ができるんですよ。あの時は上級生が立ち上げまして、メンバーを募集していたところに入隊しました」

ーーー友達にはならなかった(苦笑)?

「当たり前ですよ(笑)。格が違う。皆、静流様に対して抱く思いは友情よりも尊敬とか崇拝に近いんじゃないでしょうか」

ーーー咲山唯子様は中等部から編入でしたね。

「そうですね。でも初等部の頃にも静流様は学校行事の度に唯子様をお連れしていましたよ。唯子様も可愛らしい方だから、すごい騒ぎになりましたね。おもに女子が(苦笑)」

ーーーその時は隊長じゃなかったんですか?

「ええ、違います。一隊員でした。さっきも言いましたが、静流様は格が違う。本来なら同級生が親衛隊を立ち上げるのですが、学年を越えて上級生が立ち上げたものだから、立ち上げた上級生が隊長をやっていました。その後は指名制でしたか。あれほど全学年がまんべんなく入隊している親衛隊は珍しいですよ。指名も次の学年の優秀な生徒を指名できますし」

ーーーでは、小坂さんが隊長になったのは六年生の時ですか。

「そうなります。それからはずっと隊長をやらせてもらっています」

ーーー唯子様が中等部に編入された時は事件が起こりましたよね?

「ああ、あの時(苦笑)。あれは闇に葬りたい事件です」

ーーーあの事件は何が原因だったのでしょう?

「一言で言うと、女子の暴走です(苦笑)」

ーーー暴走ですか。

「ええ。初等部の頃から話題になっていた唯子様が入学されましたからね。あの子は静流様の何なんだというところから始まり、静流様は騙されているとか、排除しなければ危険だという過激な意見もありました」

ーーー親衛隊隊長でも抑えきれなかったんでしょうか?

「正直、無理でしたね。あの時は女子の上級生が口出ししてきまして。自分も中等部に上がったばかりで上級生に逆らえなかったんですよ。自分の前に親衛隊をやっていた方々でしたからね」

ーーー大変だったんですね(苦笑)。

「自分にできたのは男子の方を抑えることだけでした。男子の親衛隊は先輩も含めてですが、静流様を尊敬しておりましたので。静流様に迷惑をかけないようにしていましたから、すんなり言うことを聞いてくれました」

ーーー女子の親衛隊が暴走した結果、唯子様を取り囲み静流様に一喝される事件が起きたと。

「実は、自分は現場に駆けつけるのが遅れまして。静流様が唯子様を庇われたところから見ていました」

ーーー静流様は格好良かったですか?

「いやあ、あの一喝は男の自分から見ても惚れ惚れしましたよ。思わず自分も叫びそうになりました。まあ、その後静流様に呼び出されて抗議されましたが」

ーーーどのようなことを?

「これ以上、親衛隊が唯子様に手を出そうとするならば強制解散させる、と」

ーーー強制解散ですか。唯子様は愛されているようですね。

「静流様が唯子様を見る眼差しは本当に違うんですよ。お二人が一緒にいると雰囲気も違いますし。そんなお二人を見守るために、強制解散を思いとどまってもらうよう静流様を説得し、暴走した先輩方に厳重注意しました。また、親衛隊の規則を徹底させるように指導しましたね」

ーーー現状は問題ありませんか?

「ええ、大丈夫でしょう。先輩方も鷹之森家が唯子様の後ろ盾と分かったので」

ーーーありがとうございました。


ーーーインタビューの途中ですが、思いの外、小坂さんのお話が盛り上がりましたので急遽後編へ続くことになりました。次回も引き続き宜しくお願いいたします。


ーーー望月学園新聞部一同ーーー


 


ありがとうございました。うすうすと感じている方もいらっしゃるでしょう。本編よりもおまけに力入っている、と。ええ、ええ本当に力入れています。今回も遅れた理由はおまけのネタが思い浮かばなかったからです。ゆいちゃんの一問一答と迷ったけどこれも面白いんじゃないかと。本当にお遊びですので懲りずにお付き合いしていただければと思います。宜しくお願いします。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ