第6話 回想
倒した鳥の肉を焼いた。
昔、練習生の時、サバイバル訓練で、動物の解体など食料調達の方法を教わったのが役に立った。
食後、焚火をしながら、この一両日のことを思い返す。
思えばサプライズの連続だった。
パトロールの最敵機と遭遇し、敵の有人機を撃ち落としたのが始まりだった。その時の状況をお偉方に緊張しつつの報告、そして帰宅すると妻が暴漢に襲われていた。しかも暴漢者は上司だった。怒りの余り上司を殺害、そのまま脱走したが、乗っていた飛行艇を爆破され、何とか無法の星ズダールに不時着。
この一日にも経たない時間が、2,3年分の出来事のように思われる。
(今頃リサはどうしているんだろう?警察にはうまく説明できたのかな?)このサプライズの最初のできごとに考えがいく。
冷静に考えれば、上司を殺すことはなかった。
留守中の俺の家に乗り込んで、妻に暴行しようとしたのは明らかだ。
警察もその状況では俺たちの話を信用するしかない。
しかし、上官を殺してしまっては、どんな弁明も成り立たなくなってしまった。妻への暴行よりも上官殺しに警察は重きをおく。
上官殺しの罪で俺は良くて禁固刑、処刑されても不思議ではなかった。
(基地司令官と話をした後で、俺の頭は普通ではなかったのかもしれないな。
緊張して頭が天ぱっていた所に、ジェフの奴があんなことをして、俺は冷静でなくなっていた。
発砲したのだって、殺そうと思ってしたことではなかった)
思い返すと、リサとの出会いも偶然だった。
パイロットの研修で、帝国軍の辺境の州都でもあるサルワ星に行った時、座学で疲れた頭を休めようとふらりと入った酒場。
「はいお待ち、ビールとつまみでーす。」注文した品を女の店員が持ってくる。
娘と目を合わした。
「あら!あなたウリューね。」驚きの声で娘が言う。
「う!お前は?」まじまじと娘の顔を見返した。
「私よ。私、リサよ」
「リサ?お前、リサなのか!」その顔に見覚えがあった。
リサとはこの星の孤児院で一緒に育った仲だった。
ウリューは帝国の星サルワで親の素性が知れない孤児として、幼少から養護院で育った。一方のリサも幼い時に片親では育てられないと母によって同じ養護院に預けられた。二人は歳も境遇も近いことから養護院の中でも親しくなり、いつも一緒に遊ぶ仲だった。幼いながら二人には恋心が芽生えるようになるのは極自然の成り行きでもあった。
そんな二人だったが、12歳になると、ウリューは運動神経がよいことを見込まれ、軍人養成学校に送られ、そこでパイロットとして宇宙軍に編入されていく。
リサは大人になるまで孤児院で暮らし、客対応の巧さから、サービス業に入って、そのままこの星で暮らしていた。
そして久しぶりの再会となったのだ。
「ウリューは養護院を出てずっと宇宙軍にいるの?」
「ああ、パイロット一筋だ。本当の土を踏むのもこの2年なかったよ。」
「いいなあ、私なんかずっとここよ。」
そんな話をしていると「おい、遊んでいるんじゃねぇぞ」厨房から怒鳴り声がする。
「はぁい。今行きます。じゃあ、また来るわね」そう口早に言ってリサは一旦席を離れた。
店が退けた後、近くの公園で待ち合わせると、話したいことはいくらでもある。そのまま二人は近くのホテルに行き、一夜を共に過ごした。
そして朝を迎える時には、もう離れることなんか二人には出来なかった。
連絡先を教えあって別れたのだが、ウリューが基地に戻ると、なんとリサが追いかけてきた。
「ウリューとは離れたくないのよ」そう言って、にこりと笑う。
「俺だって、リサと別れて暮らせない。」二人は強く抱き合った。
すぐに上司に結婚の許可を申し出たのは言うまでもない。
独身用の宿舎から、家族用の宿舎に移ると、もうそこにはリサがいる。
「私は身ごもっています。」と嘘までついて、同居の許可を得たとようだ。
「え!許可を取ったのか?」
「そうよ。結婚届の許可までも得られたわ。」
「いやいや、いくら何でも早すぎないか?」
「あら、ウリューは私と一緒になるのが嫌なの?」当然首を横に振る。
完全にリサに主導権を奪われた。押しかけ女房にもう頭が上がらない始まりでもあった。
でもそれがまた楽しい。
ウリューにとっても結婚生活は初めて知った家族であり、有難さ、幸せそのものだった。孤児院と軍隊の世界しか知らない彼にとって、こんな甘い生活があるなんて思いもしなかった。
毎日が嬉しい事の連続。任務を終えると真っ先に帰宅するのは当たり前だった。




