第5話 不時着
操縦室には緊急避難用に補助エンジンが積まれてある。無法惑星の進入路に、なんとか方向を変えることができた。
しかし、一番の問題は惑星への着陸である。星への進入は自動操作により、無事にコースに入れたが、そこから先はほぼ運任せになった。
彗星が地球に落下するとき、大気と摩擦してほとんどが燃え尽き、地表にまで落ちて来ない、流れ星となって消えるのが普通だ。それだけ、大気に突っ込むことの危険性は大きい。
ウリューの乗る船は何とか進入コースで入れたが、速度までコントロールできなかった。
緊急用の補助エンジンだけでは、惑星の引力に抵抗できず、猛スピードで惑星の大気に突っ込んでいくことになった。
「くそー」操縦席には何か焦げるような匂いがする。外から見る者がいたら、赤い火球が惑星に突っ込んでいくのを目撃できたことだろう。
落下速度はぐんぐん加速する。
そして「ズドーン!」強い衝撃と共に地面に墜落した。
それは激突と言ってよかった。
「ふー」何とか破壊砕けた機体からようやく抜け出せた。
振り返ると、地面に深く食い込んだひしゃげた機体がある。よく助かったものだ。
運転者の安全を第一に考えた設計思想。思い切り操縦者の安全に考慮して作られた操縦席に、守られたものだった。
意外なほど、何処にも怪我はない。
「さて、これからどうする。」
周り鬱蒼とした森林が広がっている。どうやらジャングルのど真ん中に墜落したらしい。
木々を焼け焦がして、無残な姿の機体が地面に突き刺さっている。
(もう目ぼしいものはないのだろう)と思いながら探して、見つけたのは丈夫そうな金属パイプだけだ。
(これなら、槍ぐらいには使えるだろう)試すように振り回してみる。
「とにかく付近を探して見るか」鉄パイプを持って、てくてくと歩き出した。
惑星ズダールは無法の星と呼ばれるが、ほぼ未開地帯と言ってよい。
帝国と連合の二つの勢力のほぼ中間地点、どちらの勢力にも与しない地帯の為、法律が行き渡ってない。
両陣営から一応、この星にも駐在員は出している。ただ、この星には目ぼしい産業がなく、軍隊や役人を派遣するだけの価値がないと判断されていた。
だから、ここには軍隊も警察もなく、そしてどちらの側にもなびく、ごますりに長けた自治政府だけが存在した。
当然、法や規律など存在しない、強い者が支配する世界だ。
人間はそれぞれにグループを作り、集落ごとに活動している。集落間の交流は少なく、独自に孤立していた。
ここなら、帝国軍から脱走したことも誰からも罪に問われない。基地を逃げ出して真っ先に目指した理由だった。
だが、ジャングルに逃げ込もうとは思ってない。
ウリューは全く文明とはかけ離れたジャングルに放り出された。
密林の藪を払い避けながら、しばらくほっつき歩いた。
20分ほど歩いた時だった、割と広がった空き地に出ると、背後から殺気を覚える。体を丸め、転がるように前に倒れる。
その直後、シャーという風切り音と共に、頭上を通り過ぎるものがあった。
そいつは「ガッ!」と降り立った、大きな鳥に似ている。
二本足で立ち、体長は3m近く、羽を持っておらず、長い毛で覆われていた。
「こいつは何だ?」呆れながら目の前の怪鳥と対峙する。
そんな戸惑いを怪物は見逃さない、長い嘴で鋭く突いてくる。
その突きは厳しく、頭を狙って襲い掛かる。
何度も、何度も繰り返し襲って来た。
その激しい突きに、ウリューは反撃もできない。
必死に左右に身を躱し、嘴の攻撃を避けるのが精一杯。とても反撃に転ずる隙が無い。
そして、嘴攻撃を躱していると、うっかり石に躓き、前のめりに転んでしまった。
「やばい。」焦るが、なんとか起き上がるのがやっとだ。
ただ、怪物鳥もウリューが急に目の前から消えて、見失ってしまったようで、首をきょときょと見回している。
結果的に見れば、躓いたのが良いフェイントになって、怪鳥は目標を失った形だ。
転んだときに咄嗟に掴んだ、砂を怪物鳥の顔にぶつける。
これが効いた。「グェー」という叫びを上げる。
偽鳥は瞼がなく、見事に目つぶしになった。完全にウリューを見失い、背後ががら空きとなる。
「いまだ!」持っていたパイプを奴の後頭部に叩きつける。
たまらなく、怪物鳥は膝をつく。
そこを、何度も叩きつけると遂に、倒れ込んだ。




