第4話 逃走
基地を飛び出してから、5分後に追跡してくる3機の飛行艇を確認する。
(やっと来たな。)
出来るならもう少し先まで逃げておきたかったが、追いかけてきたならしょうがない。
とにかく逃げ回るしかないのだが、追跡船から突然光線弾を撃って来る。
ただまだ、距離が離れており、射程範囲外だ。
(あんな所から撃って来て、弾の無駄使いも典型だな)そう思っていると、追撃機も数発撃って、すぐに止めた。
警告のつもりで撃ってきたのだろう。
だが、当たれば一発で、こっちはお陀仏になる。
「冗談じゃねぇぞ。こっちは丸腰、シールドなんてないんだ」
必死に操縦桿を左右前後、無茶苦茶に傾けた。
まるでパトカーに追われるトラックと同じだった。スピードも装備も段違い。小回りは効かないし、狭い路地にも入れない、こっちにできることは赤信号だろうと、歩道だろうと無視して突っ走るしかない。
ちょうど、小惑星流域になった。こんなのに衝突すれば宇宙船など一発で粉々になる。安全を見てスピードを緩めるしかないのが常識だった。
だがウリューはそんなこと言ってられない。捕まったら重罪になるのだ。
(上官殺しに、宇宙船強奪、それに脱走となれば、即、銃殺ものだ。捕まってたまるか)半分やけくそになって小惑星群を構わず突っ走る。
その度胸について来れず、追跡の船はスピードを落としてくれた。
だがそれもほんの時間稼ぎにしかならなかった。少しは引きはがせたが、小惑星という障害物がなくなると、また追跡の船が距離を縮めて来る。
「やべぇ、このままじゃすぐ追いつかれるぞ」
追いつかれても止まるつもりはないが、追跡機は撃ち落とすことに躊躇しないはずだ。
射程内に入れば躊躇もなく撃ってくるだろう。
どうするかと思って、スクリーンを見ると、左前方にいくつもの点がある。
気付けば、昨日、連合軍の有人機を撃ち落とした区域に来ていた。
「これは連合側の軍ではないのか?」
連合軍だとしたら、明らかにウリューが撃ち落とした有人機に関係あるだろう。
行方不明の僚機を捜索しに来たに違いない。
帝国軍に捕まったら間違いなく処刑される運命だ。それなら、連合軍側に逃げ込んだほうが助かる見込みはある。
連合側に捕まっても、敵国からの脱走者と扱ってくれ、命だけは助かるかもしれない。
「それだったら、好都合。」迷わずに連合軍隊に機を向ける。
この意図を追跡機もすぐに理解したようだ。彼らも敵側の軍隊近くにまで不審機を追うような危険を冒すつもりはない。
射程距離の範囲外だったが、高速弾を撃ってきたのだ。
3機から、多くの弾が飛んで来る。
どれもメクラ滅法の撃ち方だったが、一発が機をかすめてしまう。
「う!」大した衝撃ではないが、それでも当たった振動は伝わった。
すぐに、機関をチェックする。
「チ!」舌打ちが出てしまう。
エンジン機関が一部破損し、方向舵を自由に操れなくなった。
ただ、追跡機も今より連合軍戦隊の近寄るような真似はしたくないようだ。
それ以上の追跡を諦め、引き返していった。
「ふう」去って行く帝国の追跡機を見てほっとする。
そこに連合側より通告が入った。
「そこの貨物船、所属と飛行目的を答えよ」と言ってくる。
「こちらはラジャンドリー会社の貨物船。運航中に、舵が操作不良となりこのエリアに来てしまった」運搬船にあった船籍帳簿の記載した内容をそのまま報告する。
「帝国軍に追われていたようだが、その理由を答えよ!」
「帝国から逃走してきた。連合軍の艦船と見受けるが、連合国に亡命を希望する。助けてもらいたい」
「それなら、ただちに停船せよ!」
「それができない。さっきの攻撃で、エンジンや操舵関係がやられ、今は惰性により走行している。停止するのは困難だ。」
その答えに、艦隊はしばらく沈黙した。
ウリューの運搬船の扱いを協議しているようだ。
「最初に民間会社の所属と言いながら、亡命を言って来るのは矛盾する。」
連合軍はウリューの説明を不審に思っているようだ。
「いや、ですから、貨物船に乗って亡命してきたんです」懸命に弁明する。
だが、この弁明に効果はなかった。
いきなり発砲してきたのだ。
どうやらウリューの弁明は信用されなかったようだ。
わずか1日前に僚機が撃ち落とされたのだ。そのエリアにのこのこ現れたんだから、連合軍が何か企みがあると思ったのかもしれない。
正体不明の奴が亡命したいと申し出ても、面倒事を抱え込むだけと判断したのだろう。
さっさと撃墜して、何もなかった事にした方が、事後処理が楽と考えてもおかしくない。
「どかーん」荷物室から爆発する。
空気=酸素のない宇宙で通常は爆発などするはずもなかった。
ただ、積んでいた荷物がパレード用の花火となれば違う。
その花火は宇宙空間でも映えるように過酸化物を大量に内蔵していた。いわば、発火剤つき花火だった。
それが、一気に引火。大空、いや、宙域に満開の花が咲いた。
「たまやー」昔の江戸っ子が見たら、盛大に喜んでくれた光景が宇宙空間に出現する。
色とりどりの花火が、真空の世界に開いた。空気抵抗のない世界で花は無限に広がり宇宙の果てまで広がっていくようだ。勿論花火はすぐに燃え尽き消え去るのだが、人の眼を釘付けにしてくれた。これは良い目くらましになる。
連合軍側は花火に気を取られ、ウリューの乗った船など気にしなくなってくれた。
貨物室は一発の弾で、大爆発し、運搬船は半壊状態になってしまう。
ただ、操縦席と貨物室が分かれていたのが、ウリューには幸いだった。
操縦席は貨物室から完全に分離され、爆発の威力で急加速してしまった。
出来る限りの操舵をして、方向を変える。
そして向かった星系は無法惑星ズダールだった。




