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銀星狼伝説  作者: 寿和丸


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第3話 脱出

このアンドロギウス帝国軍基地は、エリザトン渦状肢における帝国と連合の双方の勢力争いの中間地点に存在する。この星域には手頃な惑星や衛星もなかったことから人工的に建設された。基地そのものが、赤色恒星FIIRK星系の最縁部を周回する、宇宙に浮かぶ人工の星なのだ。巨大なラグビーボールを少しつぶしたような円盤の形をしている。この星は決して小さいとは言えないが、この星の中で逃げ回れるほど大きくはない。ウリューが指名手配されれば、警察官はもとより、役人から民間人まで、通常の仕事を放棄して血眼になって追いかけまわされることになる。その探索はこの星の表から裏まで及び、ここにいては必ず捕まるのが必須だ。

捕まりたくなければ、この星を抜け出すしかないのだが、抜け出すには宇宙船がいる。貨物船などに忍び込むか、船を奪うしかない。ただ大きな宇宙船に忍び込めてもいずれは見つかる。つまり小型な宇宙船=飛行艇を奪って逃げるしか方法はなかった。


だが帝国の宇宙軍基地から飛行艇を盗み出して、抜け出すのは困難を極める。基地内に忍び込むことさえ難しい。

(ここから絶対抜け出してやる)それでも決意は固まっていた。

あんな上司を殺したぐらいで、処刑されるなら、徹頭徹尾逃げて、生き延びる。

そしていつか帰る!リサとの固い約束だ。


この星全体は軍事的安全性の理由で厳格に昼と夜を区分けされている。軍事部門は24時間体制で活動しているが、民間部門は、夜において活動してはならないことになっている。民間人の活動を制限することで、保安向上しようとした。だから昼は活発だが夜は静寂になっている。朝6時から夜の6時までが昼、夜の6時から朝の6時までが夜と厳格だ。夜の時間になると、安全上と経済合理性から全ての公共機関は活動を止め、通常の経済業務は即座に停止しなければならない規則になっている。


そして今、夜の時間だった。この時間を利用しない手はない。

軍事施設は昼ほど活発ではないが、警戒は厳重で忍びこむなど到底、不可能。あとは民間施設を狙うしかない。運搬用の宇宙船を頂くつもりで商業施設に忍び込んだ。

レジャー施設の方に行くと、個人用の金持ち所有ボートがある。ボートと言っても暇を持て余して、金をつぎ込んだ金持ちのものだ。高速で小回りもできる優れたものに仕上げてある。これを頂ければ、軍用機でも、スピードでも小回りでも負けない。最初はそっちを狙っていた。でもレジャー施設には多くのガードマンが厳重に警護している。高価なボートなどを盗られないように警護が厳重なのだ。

だから警戒の薄い商業施設に狙いを定めた。


商業施設にも守衛は当然いるのだが、少人数で詰めているはずだ。無警戒といえるが、扱う物は日用品や食料品などで、高価な物など置いてない。これを奪っても金にならないから、狙う奴など考えられないのだ。

守衛室のドアを「バーン」大きな音を立てて入る。

そして、銃を見せびらかすように、目の前に突き立てた。

反射的に二人の守衛は両手を上げ、抵抗しないことを示す。

「大人しくしていれば命は奪わない」そう言って脅すと、ガードマンは全く抵抗も見せない。後は二人を厳重に縛り付け床に転がすだけだった。


運搬船の格納庫に行くと、ここは、もぬけの殻状態。拍子抜けしてしまう。

そこには6機の宇宙船が並んでいた。

どれもが貨物運搬用で、大型機であるがスピードは出ないし、小回りもきかない。

そのなかで最も速そうな小型トラック船に乗り込んだ。

座席室にトラックの運行記録が置いてあった。運送するわけではないので読む必要もないが、念のためチェック。

「何々、特殊花火だって!」物騒な物が積んであった。

「何だって、そんな物置いてあるんだ。」

特殊花火は空気のほとんどない宇宙空間でも花開く特別な仕組みになっている。


どうして、そんなものを積んでいるのかと考えると、基地は間もなく開設記念日で、祝典が行われることになっている。その為の祭典の催しものとして、花火を運び込んできたのだろう。多分、夜の6時近く到着して、受付だけ済ませて荷下ろし作業は明日にしたのだろう。

(どうするか。そんな危険な荷物を積んでいるなら、別の船にするか。)

少し迷う(こんなのを積んで、もし銃弾をぶち込まれたら、誘発して一発でオダブツだ。他の船にするか)

(でも、できるだけ小型の方が見つかりにくいし、小回りも効く。それに花火が何かに役に立つかもしれない)と思い返した。

 

そのまま、エンジンは駆けないで自分の体力だけで外に運び出す。

そして、カタパルト軌道に乗せることができた。

カタパルトを発動させて、飛び出したらもう後戻りはできない。

「行くぞ」覚悟を決めて、リモコンでカタパルト発動SWをON。


商用飛行艇が勢いよく発射される。普通なら、同時にSMR(小型原発炉)も稼働させて、最大出力で出発するのだが、カタパルトの推進力だけで、基地から離れるつもりだ。SMRは予備運転のままにしておく。とにかく目立たないようにするのが一番だ。

艇は静かに基地から離れて行く。

「まだ、気づかれてないな」

基地から抜け出すような飛行艇があれば、ただちに非常警報が鳴り響き、全方向にサーチライトが光り出すはず。

時間はかかるがカタパルトに押し出された力だけで、少しずつ遠ざかって行った。


5分後まで何事もなく、機はゆっくりと基地から離れて行く。が、距離はまだ10キロしかなく、基地の勢力範囲だ。

そこに突然、機内のスピーカーが鳴り響く。

「そこの運搬船、所属と機体番号、飛行目的を答えよ!」

そんなものに応えるはずもない。

一気に、SMRを全開し、推力を一杯にする。


少しして基地からも追撃の飛行艇が飛び出した。


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