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銀星狼伝説  作者: 寿和丸


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第2話 別れ

「あなた!」リサが抱き着いて来る。

「大丈夫だ。怖い思いをしたな。」安心させるようにじっと抱いた。

リサは怯えていて、まだ震えウリューの胸に顔をうずめてくる。


そのまま、抱き合っていたが、ようやく安心したのかリサが顔を上げる。まだ美しい顔は涙で濡れていた。

そして彼女は、床に倒れている男を見てハッとする。

「死んでいるの?」怖がるように聞いてくる。「うん。」

「この男は、少し前にあなたの上司だと名乗って、ドアを開けさせたの。酒臭くて酔っているのが分かったわ。でも私はあなたの上司だからというので、居間に通したの。そしたらいきなり私に襲い掛かって、寝室に連れ込んで乱暴しようとしたの。私が抵抗すると、この男は殴ってきたわ」

リサの服は所々破れ、肌も露になっている。

ジェフは今日、ウリューがいないのを知っていた。いや、三日間のパトロール命令を下したのも、奴が仕組んだことだったかもしれない。奴はウリューを基地から出しておいて、留守をいいことにリサを襲おうとした。狡賢いあいつなら考えそうなことだった。酒を飲んで、気が大きくなって悪さをしたに違いない。全く度胸もないくせに悪知恵だけは働く奴だ。そう思うと、いよいよ許せなくなる。

「これからどうするの?」心配そうな顔をして聞いてくる。


この事態をどう打開するか、しばらく考えた。

(出頭してありのまま、この事態を当局に報告するか?

いや、ダメだ。当局が俺の話をそのまま信用してくれるとは限らない。

ジェフは帝国母星の出身、いわば貴族様だ。当局にとって貴族が犯罪すると認めるはずがない。

貴族の出から犯罪者を出すわけにはいかないはずだ。

それに比べ、俺は親の顔さえ分からぬ浮浪児のようなもの。俺を犯罪人としてでっち上げることのほうが当局にとって都合が良い。

そうしたら誰も俺の話など聞いてくれない。俺は裁判になっても負ける。

いや、裁判までいかず、直ちに処刑されるかもしれない)

今の状況は絶体絶命であった。


「リサ、俺の話を良く聞け!」考えた末、決意を話す。

「俺はこの基地から逃げ出す。お前はここに残り、事情をありのままに話せ。」

「逃げるって、悪いのはあの男よ。正当防衛じゃない、どうしてあなたが逃げるの?」

「あの男は俺の上司で、おまけに貴族の出だ。俺は“上官殺し”となり、反逆罪として扱われ、正当防衛は成り立たない。」

「そんな、あなたが悪いわけじゃないのに、そんなことってあるの?」

「ああ、裁判となれば十中八九俺は有罪となり、極刑は免れない。いや即、処刑されるかもしれない。だから俺は逃げる」

「そんなの嫌よ、それなら私もついていく。あなたと一緒にどこまでも行くわ。」

「いや、それはだめだ。お前のお腹には俺の子がいる。その子を連れて行くわけにはいかないんだ!」

その言葉にリサは自分のお腹に手をやる。1週間前、彼女は妊娠していると病院で言われていたばかりだ。


検査結果を知るとウリューの喜びは相当なものだった。

「俺の子か!俺に子供が出来るんだな。」

ウリューは子供の時から家族がいなかった。ずっと一人で過ごし、ようやくリサと出会い結婚し、そして今、子供が出来る。

「男だったら何という名前にしようか。女の子だったら、リサのような美人にきっとなる。」

「そんなのは、まだ先の事よ。気が早いわね」笑い合った。

そんな会話をしたばかりなのに、でも今の夫の表情は全く違って固いままだ。


「そんなのいやよ、ウリューと離れるなんてできない」その声は涙で震える。

「お前と子供のためだ。連れてはいけない」(やっと手にした家族だ。危険なことに巻き込むことはできない。リサとお腹の子の命が一番だ。)

「だって、ようやく一緒になれたばかりじゃないの。あなたと離れてどうやって生きるの。」

(リサの気持ちもよく分かる。だが決意は変えられない)

「お前を連れて逃げれないんだ」

なおもごねるリサを強引に納得させ、一人で逃げることにした。


「いいか、警察には30分経ってから通報しろ。正直になにもかも話すんだ」

それで事態が解決するとは思えない。でも、少なくともリサと子供には危害は及ばなくなるはずだ。

「分かったわ。」渋々頷いてくれる。

「でも、きっと戻って、私の所に帰って来て!」

「ああ、約束する」

「きっとよ!」

別れのキスをして家を出た。


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