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銀星狼伝説  作者: 寿和丸


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第1話 報告の後で

下級の軍人だったウリューは、辺境の無法惑星に逃げ込み、そこで一大勢力を築き上げる物語です。

「ウリュー、敵の有人機を撃ち落としたんだって!すげぇじゃねぇか」軍事管理区から居住区に入ると、友人のサムが話しかけて来る。

「いや、たまたまだ。下手すりゃこっちがやられていた。」

「まあ、そうかもしれんが凄いことだぞ。その話は詳しく話してくれよ。」

「うん、箝口令が解かれたら言う。」

「箝口令?そうか。それならしかたないか。」残念そうな口ぶりになるが、さらに絡んでくる。「それにしてもそわそわしてんな。早く嫁さんの顔が見たいのか」

「そ、そんなことはないぞ。」

「図星じゃあねえか。顔が赤いぞ」

「うるさいな」

なおも、冷やかし半分で語りかけてくるサムを振り払って、帰宅を急ぐ。


ウリューは新婚ほやほや、4カ月の甘い生活の真っ最中だ。

結婚してから家にいる時はほとんど離れることもなく、ぴったりと寄り添っているのが常だ。

それなのについ先日、隊長のジェフから偵察飛行を命じられてしまった。軍人にとって上司からの命令は絶対であり、絶対逆らえない。

泣きたい思いで3日間のパトロールに赴いたのだ。しかし1日目にして、敵側の飛行艇と遭遇し撃ちあいとなり、運よく撃ち落とした。しかし他の連合軍の部隊の可能性も考え、偵察行動を止め、直ちに帰還し、基地幹部に報告を終えた所だった。


(まさか基地司令まで出て来るとはな、思いもしなかった)

単なる上司への報告だけに済むと考えていたが、基地の幹部全員が顔を揃え、そこにはなんと基地司令官までが出席していた。

司令官なんて写真でしか見たこともない、話をしたこともない超大物だ。そんな“お偉方”からの詰問を受けて、足が震える思いだった。

この基地の建設をする時に、軍事利用するだけでは勿体ないと、批判の声があった。効率が悪いとする批判を抑えるため、産業活動するための民間施設なども併設された。しかし軍関係者の意見が優先的に通るようになっている。

すべての面で軍人が幅を利かし、人工の星の最高権力者が基地司令官なのだ。司令官の一声で、人工星の全ては決まってしまうと言ってよい。

もし司令官が「お前を無罪にする」と言われれば、どんな重罪でも放免されるし、「お前を処刑する」と言われれば、無罪の者でも銃殺される。それほどの権力を基地司令官は握っている。

そんな司令官と直々に話を交わすなんてウリューは夢にも思ってみなかった。


そのお偉方から解放され、真っ先に思い浮かんだのは愛妻リサの顔だった。

昔ならこの時間なら、サムとつるんで酒場にしけこんでいたのだが、もうそんな気分は遠い過去に置いた。

(早くリサに会いたい。リサの奴、驚くだろうな)

どんな顔をするだろうかと思いながら、玄関ドアを開けると、妻の女靴と並んで、男の靴がある。

乱雑に脱ぎ捨てられたのがありありだ。


(強盗か?来客か!)よもやと思いながら、いやな予感がする。

音を立てないようにしてリビングに入るが、誰もいない。台所の方にも妻の気配はない。

(寝室にいるのか?)

寝室に行く前に、書棚から、銃を取りだす。

万が一のことだが、強盗に入られ暴れられ、そいつがリサに危害を与えるかもしれない。

寝室のドア付近でじっと聞き耳を立てる。

「止めて、乱暴しないで。」恐怖に震える妻の声が聞こえてきた。

もう、我慢できない。いきなりドアを開け、部屋の明かりを点けた。


そこで見たのは、ベッドにリサを押し込んでいる男だった。

もう、何も考えることなく、男の肩を強く掴み、ベッドから突き落とす。

仰向けに床に転がった奴の顔を見ると、上官の隊長ジェフだった。

「まさか!」そんな思いもあり、十数秒の沈黙が支配する。


「おまえ、何しているんだ!」ようやく口にした言葉には怒りであふれている。

「違う!これは違うんだ。」いつも威厳に満ちて、落ち着き払う男の姿はない。

上半身、裸になって、何をしようとしたかは明白だ。

ウリューの眼は血走っていて、もうどうにも止まらなくなる。

ゆっくりと銃口を上司に向けると、ジェフは驚きから恐怖に変わる。

ウリューにしても脅しのつもりで、銃口を向けただけで、殺そうと思っていたのではない。

しかし、「ま、待て!私の話を聞け。」

(この時になってもこいつはまだ上司の命令口調になっている!

こんな時ならまず謝るのが先だろう。こいつは何を思っている!)

「ふざけるな!」思わず怒鳴ってしまう。それで銃を強く握り、弾き金にかかる指に力が入ってしまった。

「ビュ!」銃口から弾が飛び、ジェフの額の真ん中に黒い穴が空く。

上官は叫ぶこともなく床に倒れた。


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