第26話 盗賊騒ぎ
半年後、ウリューたちの訓練は順調に進み、新たに30人の新兵も入る。
「半年後には100名に揃えられる。事務員も増えて来たし、これで、ようやく軍隊らしくなってきたわね。」サメロは満足そうだった。
始めの頃など、サメロが自ら事務処理をしていた。今は専門の事務員が、職員の給料、機材の発注などの処理を行え、彼女は実務に専念できるようになっている。馬も購入し機動力も格段に増している。
「次は車を使っての車上訓練に移れる。」
この半年で、基礎訓練を終えている。ほとんどウリューやアリの訓練について来れなかった者が今は二人の傍で淡々と体を動かしている。
彼らなら新人たちの手本となって引っ張って行けるだろう。
町は今も発展を続けている。地下資源を利用して、工業化が進んだ。仕事があれば、人が集まる。人が増えれば、商売が盛んになり、金が動く。金に釣られて人がまた来る、好循環が生まれた。町は今爆発的に発展する手前に来ていた。
ただ、人が多く集まると、よからぬ者も来る。町の犯罪率は増加の一途になってもいる。
「町の見回りを強化してくれ。」町長はサメロに町周辺のパトロールを要請してくる。
「俺たちも乱暴者、盗賊らを捕らえてきたが、もうそれでは対応できなくなったわけだ。」
防護団はこれを受け、3人編成で町近郊を巡回することになった。
ウリューたち幹部も時間があれば、部下を連れパトロールにいくようにしていた。
そんなある日、ウリューは3人の部下と共にパトロールに出かける。
昼過ぎ、馬に乗り町の郊外を巡回し小高い丘に登っていると、遠くから車が走っているのが見える。
「隊長、あの車は先日盗まれた物ではないですか?」部下が問いかける。
3日前、大きな商家から深夜に庭に置いてあった車の盗難事件があった。原野のようなこんな所で車が走っていることが既に異常だ。盗難車と見て間違いないだろう。
崖上から下を見ると、いままさに車が猛スピードで走り抜けようとしている。
「バン、バン」さっと銃を取りだし、タイヤを狙って撃つ。
崖を遠回りして、坂道を降りていたら盗難車を逃がしてしまう判断だった。
車は少し走って行ったが、10mも行かないで停まった。すぐに、降りてきた男たちはタイヤを見て騒ぎ出す。
その中の一人が丘の方を見て、何やら叫んだ。そして慌てて、原野の方に逃げ出していく。
どうやら、馬に乗ったウリューたちを見つけ、パンクの原因も悟ったようだ。
「逃すな、追え」馬の腹を一蹴りする。それに部下とチョロが続いた。
男たちは道から外れ、岩だらけの荒野に逃げようとした。荒野の向こうには森があり、その中に隠れ込もうと考えたようだ。
乗り捨てられた車にたどり着くまで、1分も経たなかったがすでに男たちは100mも遠くに逃げている。普通だったら盗賊たちは原野の向こうの森に逃げ込んで姿を隠せただろう。
だが盗賊たちにチャンスはなかった。
人と馬の速力はあまりに違ううえに、さらにチョロがいた。
チョロは逃げる獲物を本能的に追いかける性質がある。
原野を走る男たちは格好の獲物となった。背後から追いかけ後ろからがぶりと足に噛みつくと、逃げていた者にもう抵抗する気さえなくなっていた。
子牛くらい大きい怪物にがぶりとやられたら、どんな男でも「助けてくれ」と泣き出すに決まっている。
チョロは次々と逃げていく男たちを追い詰め、隊員たちはこれを捕縛していく。
一人だけ岩陰に隠れ、痕跡を消した盗賊もチョロによって簡単に見つけ出された。
原野の捕り物劇は盗賊を見つけてから10分足らずで幕が下りることとなった。
「よく簡単に捕まえたもんだな。後は俺が奴らを可愛がってやる。」盗賊たちを連れ帰るとアリが指をぽきぽき鳴らして言う。
自信ありげに言った言葉に嘘はない。盗賊たちはその日の内に降参する。
アリの尋問がどのようなものだったか知らないが、ともかく盗賊たちは彼らの本拠地をあっさり白状してくれた。




