第24話 格闘訓練
次の日から本格的な訓練が始まる。
準備運動、ランニングなど基礎訓練してから、格闘訓練を始める。
まず、アリが前に立って言う。
「今日はボクシングを教える。パンチを急所に一発当てるだけで相手を立てなくできる。ただ、パンチを出すだけで倒せない。ボクシングがどう言うものか教える。」
アリは地面に肩幅より少し大きめの円を描いて、その中に入る。
「俺はこの円から出ない。5発、俺に殴って来い。一発でも俺の顔に当てられたら、今日の夜、旨い物たらふくおごってやる。たった1発でもいいから当ててみようと言う奴、いないか?」
防護団に入ろうとする者は、もともと腕力に自信がある。
小さな円から、出ないと言っている。しかも、もし当てることが出来たら食事をおごって貰える。
(当たらなくても、恥じをかくだけだ。もし当てれば飯が食える。)自信ありげに数人の新人が前に出る。
どれも一癖ありそうな面構えだ。
「よしお前だ。かかって来い」アリはその中でも体格の良い若者を指名する。
まだ、背丈こそアリよりのっぽだ。(やってやろうじゃないか)とオーラが出ている。
訓練の前、面白いことになってきた。ウリューもサメロも何も言わすアリのやり方を見ていた。
そして新人たちは二人を取り囲むように人垣の輪を作る。
一方、のっぽ君は両腕を回してやる気十分だ。
「いつでも、いいぞ」アリが声かける。
「や!」のっぽ君が思い切りの右ストレートを顔面に狙う。
だが、アリは身体をわずかに傾けると、パンチは空を切る。
「くそ!」今度は右手と見せて左手のフック。新人ながら、単純な奴ではないようだ。
でも、アリは身体を逸らすとまたも空振り。
「ふん!」今度はのっぽ君は左右のパンチを連続に繰り出す。
それでもアリは難なく躱してしまう。
そして最後の一つも当てられなかった。
「よし、あと5回チャンスをやる。でも、全部外したら、今日の訓練は手抜きしない。それでもやって見るか?」
「やります!」
のっぽ君は意地張なのだろう。このままで引きさがれないと顔に書いてある。
でも貰ったチャンスをつかめなかった。
アリは本当に円から出なかった。それどころかほとんど足を踏み直さない。でもまともに一つも当たらない、いやかすりもしなかった。
のっぽ君は思い切り力を使ったのだろう、肩で息をしている。
(先生はこんなにも強いのか)驚嘆する。それは全員同じだった。
「いいか、皆、よく聞け。俺はこの円から少しも出なかった。足もほとんど踏み変えなかった。だが、こいつは1発も当てられなかった。何故だか分かるか?俺はこいつのパンチだけを見てなかった。肘、肩、腰など身体全体を見て、さらにメモの動きも見ていた。そうすると相手の狙いが分かる。だからおれは彼のパンチを一つも受けなかった。ボクシング、それだけでなく格闘術は自分の力だけでは相手を倒せない。相手の狙い、動きを利用して倒すんだ。このことをしっかり覚えておけ!」
それから本格的にボクシングの練習が始まる。内容は結構きつく、瞬発と持久力を高めるため、20mの距離を往復させるものだった。
「まずボクシングの前に、耐久力の訓練だ。俺の合図で全力疾走しろ!」手を叩く。全員が走り、20m行ったところで止まる。
「よし、戻れ!」ゆっくりと戻り始めた所で、また合図があり、全力疾走。
その繰り返しだった。
10往復した所で、全員が昨日のように足が止まる。
それでもアリは終わりにしない。
20数回越えたあたりで全員が地面に崩れ、もう誰も立っていられなくなる。
「よし終了」
アリの声は悪魔じみていた。




