第22話 酒場にて
「ところで名前をどうする?自警団はすでにあるし、防衛軍なんて名乗れば、星都を刺激しかねない。何か良い名前にした方がいい。」
「アリにしてはいい事を言う。確かに自警団は紛らわしいな。私も賛成だ」
「だったら、防護団はどうだ。これまでの自警団は鉱石場の警護のために作られたものだ。町の住民を獣から防護するために作ると言えば、都からも文句は出ないと思う。」町長が言う。
「防護団?なんか防護服みたいな名前だが、自警団と区別がつくならそれでいい。アリはどうだ」
「まあ、言い出したのは俺だが、自警団と区別できれば名前にそんなに拘ってはいない。星都からの文句が出なければいいじゃないか。あんたはどうだ?」
「そうだな、俺もそれでいいと思う。ただ、リーダーを早く決めておいた方がいいじゃないか。」とウリュー。
「そうだよな、団長は早く決めよう」そう言って、アリはサメロを見る。ウリューも同じ。
「分かった、だが、お前たちも副団長として私を支えてくれ」と自然の流れでサメロが団長となる。
サメロは3人の中で年長だし、何より軍歴が凄い。三人のなかで佐官クラスはサメロだけで、おまけに30前に少佐に昇進していたのだから、幹部エリートの道に進んでいたことになる。
ウリューなんて基地にいた時こそ少尉であったが、佐官になれるとは夢にも思ってなかった。
(俺は孤児院育ちで、昇級試験にも応じられるはずなどなかった。一生基地で偵察、警備をさせられていて、使い捨ての駒として終わっている。それに比べ、サメロは30前に少佐になっていたんだ。連合軍の中隊を率いて俺の前に立っていてもおかしくないんだ。)
一応、ウリューも部下を持てる地位でもあったが、その部下は入隊したばかりの新兵ぐらいだ。とても、隊を率いるなんて考えられなかった。アリも同様なのだろう。
「おい、仲間になったついでに一杯やらないか?」話し合いが終わり、アリが気さくに言って来る。
「別にいいわよ」「俺も構わない」ウリューとサメロも同意して、こじんまりした飲み屋に入った。
「ここは俺の行きつけの店だ」アリが言う。以前サトーかと飲んだ店に比べ、小さく、それだけ落ち着いて話せる。
乾杯の後、それぞれが気になっていることを聞き始めた。
「あんた、森で暮らしていたんだって。よく生きていられたもんだ。町でも噂だ。」
飲み会の進行役はここでもアリだった。気になったことをズバズバ聞いてくる。
「森の中で子犬を拾ってこれが危険を一早く見つけてくれた。それとこの銃で獣を倒せたのが大きい。」
「その犬のことも評判だ。でっかい犬であんたによく懐いているらしいな。それと噂だと百発百中だと聞くが凄い腕前だな」
やはり、軍人は武器のことになると気になるようだ。
「まあ、たまたま当たっただけだ。」あまり自慢したいタイプではないので、それとなく話題を変えようとする。
「それはいいとして、俺は墜落するようにこの星に不時着したんだが、あんた方は、経歴から見て、この星に来るようなことはなかったろう。何故だ?」
「言うまでもないが、この足のせいよ」そう言って義足を上げた。「サメロもおなじだろ?」
「ああ、私はね、野戦訓練の時、不発弾が近くで爆発してね、その破片が右目に刺さってしまった。それで、こんな格好になったのさ。」彼女はなんでもないように話す。
「でも、連合軍は医療技術も高く、再生医療も優秀だと聞いていたが?」
「確かに連合の医療技術は高く、眼の再生もできる。ただな、眼の再生はデリケートで時間も大金もかかる。」
「金は軍から出してくれないのか?」
「勿論出る。だがな、軍はクローン再生よりも人工眼球を進めるんだ。その方が安上がりだし時間もかからない、何より性能も上がると言って強く進める。精巧に作られたレンズやセンサーを組み込んだ方が遠くのものも、暗闇でもよく見えるからな。」
「だったらなんで、人工眼球を入れなかったんだ?」
「軍はね、人工眼球にレンズやセンサーだけを入れないのさ。チップも入れる。それがどんな動きをするかも説明もしない。だから私は人工眼球を断った。それで私は軍を追われた。アリ、あんたもそんなことだろう?」
「ああ、そんな所だ。軍は義足に自爆装置を組み込んでいるかもしれない。そんなおっかない物、体にくっ付けられるか。だから俺は精巧な義足を断った。そうしたらお払い箱よ。」アリが嘆息して大袈裟に手を広げる。
義足に自爆装置を組み込むなんてウリューは初めて聞く話だった。
「そんなことあるのか!連合軍は何でそんなことをするんだ?」
「あんたはまだ、軍歴が浅かったようだね。私のように長く軍にいると、いろいろ変なことも耳に入る。アンドロイド兵には自爆装置や強制命令機能が組み込まれているというのは、信ぴょう性の高い噂なんだよ、それは帝国軍でも同じだよ。」
サメロから爆弾発言が飛び出した。




