第19話 工場見学
いつも読んでいただき有難うございます。前の話(第19話)で誤字を訂正し、1行加えました。よろしければご確認ください。
翌日、町長に挨拶する。
町長と言うのはこの町の代表者で、選挙で選ばれるらしい。
議会というものはなく、権限の多くを町長が握っていることになる。つまり相当な権力者と言うことだ。
そんな人物に挨拶に行くのは、少し緊張する。
「ウリューさん、起きてますか?」元気よく、エドが迎えに来てくれた。彼は町に来て元気を取り戻しているようだ。
二人でまず事務所に顔を出す。
「やあ、昨日はよく眠れましたかな」所長が穏やかに迎えてくれる。
その所長に連れ立ててもらい、町長に挨拶することになった。
「いやあ、エドお帰り、よく無事で帰って来てくれた。ウリューさん、エドを助けてくれてありがとうございます。エドが行方不明になった知らせを聞いて、心配でたまりませんでした。あなたのおかげです。本当にありがとうございました。」町長が厚く礼を言う。
町長はシスラーと名乗って、40手前、背が高く、瘦身で所長と並ぶと好対照だ。精悍な顔つきで、笑顔で迎えてくれたが、目の奥に鋭い光を放っている。なお所長の名はライアンという。
「早速だが、エド。森をどのくらいまで調査出来たのだ?」
「町に近い、東南側の半分近くまで、調査出来ました。森の中央近くまで来た時、飛行機の調子が悪くなって墜落して、北の方は調査出来ませんでした。森の半分だけですが、調査記録はありますので、後で報告します。」
「目立つような地形はなかったか?」
「大きな川と断崖があったほか、森の向こう側には高山の山々が見えました。頂上付近は雪に覆われており、相当な高さだと思います。あれは今まで、報告されてない未発見の山です。」
「そうすると森は南と北の山で挟まれていると言うことになるな。」
「ええ、盆地のような地形ですね」
「それだけ分かっただけでも、調査してもらった甲斐がある。報告書を期待するよ。ところでウリューさん、エドとばかり話をしてすみませんでした。この町は農産物や鉄鉱石などの集積地として発展してきましてね、近年になって、自動車などを作り出して様変わりしてきました。昨日来たばかりでお疲れでしょうが、どうぞゆっくり、この町をご覧になってください。」
それで、対談は終わる。あっけないが、有益なものに感じられた。
その後、自動車を作っている工場に行く。
「ここでは主に組み立てと主要部品の加工を行っている。」サトーが約束通り案内してくれた。
「エンジンはどうなっているんですか?」
「一部の部品は外部に任せているが、本体は此処で作っている。」
加工現場を見ると、工員たちが真剣に作業に取り組んでいる。
時々話声や笑いも出るが、手の方は止まってなかった。
「ロボットが使えないから、人手に頼るしかない」とサトーは自嘲気味に話すが、その顔にはロボットなしでもここまでやれるという、自信が見えた。
ボール盤、旋盤、フライス盤などの加工機械はあるが、どれも手作り感満載だ。それだけ、工夫され手になじんでいるように思える。
ベルトや歯車などがむき出しな上、明らかな加工ミスで出来たと思われる歪な穴も見える。お世辞にも最新的とは言えない。ただ、工場はこじんまりしているが、備品は整然としていて、清掃も行き届いている。
「ネジやナット、板金など既製品は外から手に入るから、ここでは車体シャーシやエンジンなどの他所から手に入らない物を作っている。次に組み立て現場に行って見よう。」
組み立ての現場は更に印象的だ。
5,6人が一つの車体を組んでいる。人は少ないが手際よく作業が進んでおり、動作もゆっくりとして急いでいる様子が見えないが、確実に作業をしようとしている。ネジ一本だって、真剣に締めようとする姿勢が現れていた。
「ここでの生産数はどのくらいなんです?」
「月に7,8台だ。」
少ないように思えたが、この町の人口から言って、それくらい販売量で十分行き渡るのだろう。




