第18話 森の秘密
「ただな、儂はお前たちの脱出してきた森がロボットの故障と関連があると思っている。」
「それはどうしてです?」
「まず、どういうわけかあの森にはおかしな獣しかおらん。他の星で見られるような獣はほとんどいなくて、奇妙な動物だけがいる。そして植物も他と違ったものがほとんどだ。あの森では様々な生物が独自に進化して、そのスピードが早い。何かが進化を早めているようにしか思えない。あの森は何もかもが狂っている。あの森には何かある。ロボットになにか影響を与えているように思える。」
サトーはそこで少し口を閉ざし、ウリューの顔をじっと見た。
「お前さんは森で、一人で3年も生きてきた。森で何を見た?」
鋭い問いかけだった。
ウリューも当然、光の存在が森の不可思議な現象とひきおこしていると疑っている。
(どうするか、ありのまま光の事を言おうか)
少し考えた後、「いや、別に変ったことは見なかった」と秘密にしておくことにした。
「あの森の秘密を探ろうと、これまでも何度も探検隊が送られている。だが、無事だった者はほとんどなく、帰れなかった者も少なくない。ほとんどが未知の野獣に襲われている。銃器が使えず、獣から致命傷を受けた者がほとんどだ。
「初期の頃、ロボットを投入しようとしたが、森に入る前に使い物にならなかった。複雑な電子回路に何らかの干渉を受けるのだろうと考えた。」
高度な電子回路を持つロボットは使えなくても、古い形式のプロペラ機なら問題なく森の上空を飛べると考えた。エドに頼んで上空から森の地形を確かめようとした。それがエドに危険な目に合わせてしまって、行方不明になったと聞いた時は、何をしてよいか途方に暮れた。本当にエドを連れ出してくれてありがとう」改めて礼を言い、エドに深々と頭を下げたものだ。
ウリューにとり最も関心のあるのが、宇宙港の状況だった。
「船はどれくらいの頻度で発着している?」
「週に1便が発着するかどうかだな」
「たったそれだけ?」ウリューのいた人工星は軍事基地で商業は活発でなかった。それでも日に軍機を除いて4,5便は発着していた。
「ところで、お前さん、これからそんなこと聞いて、何をしようと思っている?」
「何をしようかと言って、俺は身重の妻を置いて、帝国を逃げ出してきた。妻を連れ戻すのが今の俺の目標だ。」
エドを助けてジャングルを抜けたのも、リサに会いたいためだ。その決意は変わってない。
「それは、今すぐは無理だろう」
「なぜだ?」
「この星は、さっきも言ったようにロケット発着そのものが制限されている。しかも帝国軍と連合軍双方により厳重に警備されている。お前さんは堂々とそれらの前に出られるのかね?」
「そ、それは」思わず口ごもる。
図星だ。ウリューは自分の身元は詳しく話してない。上官を殺害して脱走したことも絶対の秘密にしている。それでもサトーはウリューが帝国軍の前に出られない身分だと見破っていた。
ただ、それ以上の詮索はされなかった。
サトーにとって、ウリューの過去に関心などないのだろう。
「あの森は特別だ。進化が異常に速いし、狂ったように新しい生き物が産まれている。それが、何が原因であるかが分からない。ただ森がこの星でロボットが故障することと関係あると見て良いだろう。何かがあの森にいて、森全体を狂わせ、ロボットも狂わしている。」
サトーにとって、関心ごとはあくまで森だった。
その後は、事務所が手配してくれた宿に戻り、休むことが出来た。




