第14話 ジャングル突破
エドとチョロを連れて、ジャングルに入っての1日目。早速、エドが顔を青ざめた。
バサ!!急にエドの頭上近くを怪鳥が飛び去る。
「ひー!」思わず、情けない声を出して、うずくまってしまった。
「情けないな。あんな鳥に怯えるなんて」ウリューは少しあきれ気味だ。
「そりゃー、びっくりしますよ。急にあんな鳥が襲って来るなんて。」
「ここでは、あのくらいの鳥は普通にいるぞ。」
「ひえー、怖すぎますよ。町にあんな鳥は出ませんよ」
エドにとっては初端から恐怖の罠が待ち受けていたようなものだった。
それでもなんとか恐る恐るウリューの後に付いていくと、「気を付けろ!あの藪で待ち伏せしている。」と注意される。
チョロも体制を低くしていつでも飛びかかれる姿勢を取る。
藪にウリューが石ころを投げつけると、ザザーと体長3mもあるネコ科の猛獣が飛び出してきた。
頭上よりも高く跳ねて、襲い掛かてくる猛獣。
(あんな、大きな獣なら僕なんて一瞬やられてしまう)恐怖でエドは目を瞑ってしまう。
ところが何時まで経っても、なんの衝撃が襲って来ない。
それどころか、ドサ!と何かが草地に落ちる音がする。
恐いながら、目を開けると大きな獣が地面に倒れていた。
額には黒く小さな穴が空いている。ウリューが銃撃したものだ。
「凄いですね。額のど真ん中ですよ。脳を貫通して、即死ですよ。」エドが驚きの声を上げる。
「それくらいいつでもやっている。」
「だからジャングルで3年も生活できていたんですね。射撃の名手です。その銃はレールガンですよね?」
「ああ、そうだ」
ウリューの手にすっかりその銃は馴染んでいる。
腕をどの位置に上げ、どの方向に向ければよいか、体に覚え込んでいる。野生の獣が生きるために自分の武器を研ぎ澄ましたように、ウリューは銃撃の腕を上げていた。
「ウリューさんは、獣の気配が分かるのですか?」
「ここで生きていると、なんとなくだが獣が潜んでいるか、分かって来るよ。チョロなんて俺よりももっと先に分かっているようだ」
その言葉にエドは納得する。
エドは恐怖の連続だった。ウリューが居れば安心だと分かっていても、不意に現れる獣には肝を冷やされるばかりだった。
そんなエドだったが、少しずつジャングルに慣れていくものだ。慣れると怖さも薄れ、一人で動こうとする。
小用をしようと、離れかけると呼び止められた。
「おい待て、勝手にそっちに行くな」
「え?小便をしたくて」「ちょっと待て」ヒュ、ウリューの右手から破裂音。ドサ、そして、エドの5m先に大蛇が木から落ちる。
「うわ!」
「よし、用を済ましに行っていいぞ」
「いや、今ので、尿意が引っ込みました。」
「情けない、じゃあ、俺が先に済ましておくか」ウリューが悠々と藪に入り、エドはため息をつくしかなかった。
その夜は倒した獣で焼き肉を食べる。
「本当にウリューさんと一緒でなければ僕は一歩も進めません。今日はありがとうございました」
「おいおい、まだ1日目だぞ。礼を言うのはジャングルを出てからでいいぞ」
「いえいえ、感謝するのはいつも大事です。」
「まあ、そう言うことにするか。とりあえず、今日はもう休め。俺が先に見張りしておくから、時間になったら起こす。」
「はい、分かりました」
エドは冒険初日の夜、緊張してか、寝付かれないようで、何時まで経っても、寝返りを繰り返していた。
でも時間が来たら、構わず叩き起こされ、見張りを引き受けることになる。
「チョロがいるから、獣が寄って来ればすぐに気づいてくれるはずだ。あまり緊張しないで見張りをしてくれ」
そう言われたが、エドの顔は寝不足でまだぼんやりしたままだ。
それでも、その夜は運よく獣が寄ってくることもなく夜明を迎えられた。
獣を狩りながらの旅。恐怖と緊張続きの旅。決して順調とは言えないが、エドも次第に慣れて行ってくれた。
最初の頃は周囲をきょろきょろして緊張しっぱなしだったが、周囲のことも気を配れるようになって来る。
「ウリューさん、あなたの持っている銃はレールガンのようですが、弾切れはないのですか?小屋を出てから大分経つのに、いくら何でも、電池切れしてもおかしくないでしょう。」と質問する。今までだったら、自分のことしか考えられなかったが、そんな質問まで出来るようになった。
「俺の銃はほぼ、無限に使える。」
「え、そんなことあるんですか?」技師らしい疑問だった。
「俺は、森で懸命に生きてきた。そしていろんな知恵や力を手に入れられた。銃をどうやったら長持ちできるか、いろいろ工夫してみたら、やれるようになっただけだ。」
「ふーん。そうですか。」コツや経験でバッテリー切れをなくせるものではない。物理の法則と相反する答えで、納得は出来なかったが、それ以上は質問しないことにする。
(ウリューさんにも秘密にしたいことはある。それを聞かないのが旅を続ける仲間としてのマナーだ)
先の見えないジャングルでの行動。ほぼ毎日猛獣との遭遇が続く。どれもが人間より大きな怪物だらけ。
そして、懸念していた断崖絶壁もあった。ここは遠回りして少しでも安全なルートを探すしかなかった。
旅を続けて、8カ月。
大河を越え、深い谷も走破した。
そして、高い山が連なる山脈も越えた。
峠の地点で遥かに続く広大な大地が遂に見えた。
「これでジャングルを抜けられたな」
その言葉にエドも感慨深く頷いた。




