第11話 新しい能力
光の存在の言う通り、穴から出るのは獣にとっては難しいことだった。
穴の壁は凹凸があって簡単に抜けられるように思えたが、意外とすべりやすく、10mの高さを抜けるなど不可能なのだ。
しかも穴底の宇宙船からのエネルギー放射のせいか、植物の根が一切なかった。
穴の壁は掴まる物がないほぼ垂直の壁だった。
「確かにこれでは、ここに落ちた動物は穴の底で必死に登ろうとしても、徒労に終わっただろうな。疲労と飢えで死んでいったに違いない。」
穴の底の白骨が何よりの証拠だ。
壁に鉄パイプで刻みを付け、それを足場にして何とか穴から脱出する。道具の使えない獣では到底無理と実感した。
ただチョロをどうして助け出そうかと思っていると、やはりチョロは只の犬ではない。
ウリューの付けた足場を利用して見事によじ登って来たのだ。
「やはりお前は一番の相棒だ」
愛犬をいつもより強く抱きしめたのは言うまでもない。
小屋に戻り最初に取り組んだのは新しい能力を調べることだ。
「エネルギー変換能力、何が出来るんだ?」
「火でもおこせるのかな」試しに掌から火を出してみようと思ったが変化なし。
一心に一点を見つめ、念じるが、火は出ない。
「しまったな、あいつにエネルギー変換の方法を教えてもらっておけばよかった。」ぼやいてしまう。
どうも簡単ではなさそうなので、一旦は諦め、焚火をしようと薪を集める。薪に火を点けようとした時、エネルギー変換で火を起こせないかと思いつく。
「太陽の光を枯れ木の一点に集中するイメージをするんだ。」
すると、長く集中するまでもなく、煙が立ちだす。
「お、これはいけるか。」さらに念を集めると、炎が立ち始める。
「これは何にもない所から火を出せないということだな。」
訓練時代、“無から有は生みだされない”と教えられていた。それを身をもって実感した思いだ。
エネルギーを変換できるとしても、ゼロからでは何もできない。
太陽の光を薪に集める事で熱が出る。それが火になった。
その後、他の条件でも試したが、太陽の光を浴びている時と浴びていない時とは大きく違う。光を背に受け、熱を集中した方がずっと効率が良い。
さらに、エネルギー変換の練習すると改善されていく。
何回も火をおこすことを繰り返すと、そんなに気を込めて集中しなくても簡単に火を起こせるようになる。
「これもコツと慣れだな」
やはり燃えやすい物のほうが、火を点けやすい。
そして、必ずしも日光を浴びなくても、体内の力だけで、点火できるようにもなる。
「よし、努力の成果だ」遂に、暗い場所でも物を燃やせるまでになった。
能力の開発をいろいろ試して「太陽の光や、体内の熱を使って火を燃やせるなら、電気にかえられないか」と思いつく。
しばらく使ってなかったピストルを取り出す。あの上官のジェフを撃ち殺した銃である。
「こいつを使えないかな」
この銃はレールガンと同じ原理で作動する。1グラムもない小さな鉄の弾しか撃てないが、発射速度は音速の10倍近い。このジャングルで、獣を狩りまくってくれた。生き残れたのはこの銃があったからでもある。
ただ、今はバッテリー切れで弾が打てない状況になっている。
銃把を握りしめ念を込めてみる。すると、「うっ。」思わず呻く。
身体のエネルギーを一気に失った感じになる。エネルギーを銃に吸い取られた思いだ。
だが、「おおぅ!」ピストルの表示部を見ると、エネルギーが充填されている。
「これはいける。」
試しに岩に向って撃ってみると、見事にぱっくりと穴を開けられた。
以前と変わらない性能だ。
「だーん」飛んでいる鳥を見事に撃ち落とせた。
いままで、空の鳥など諦めるしかない。鉄パイプの槍では到底届かないし、ピストルのエネルギー残量を気にして、ミスはできなかった。
空を飛ぶ鳥などただ見送るだけだった。
それがミスしてもエネルギーの心配がない。
撃ち落とした鳥をチョロが嬉しそうに加えて持って来てくれる。
「久しぶりの焼き鳥がくえるな」
ジャングル生活にもう一つ余裕が生まれた。




