第10話 不思議な存在
横穴にも夥しい数の骨が散乱していた。
バキバキと骨を踏み折りながらチョロと穴の中に進んで行くと、急に天井が高く横幅も広がった場所に着いた。
その奥に、光に輝く物があった。
それは丸い球のようでありながら、実態があるかないか分からない光そのもののようにも見える。
それに近づいた時、ウリューの脳に直接{よく来たな、小さき者よ}と入って来る。
「誰?」
{私だ、お前の目の前にいる}
目の前には光の球があるだけ。「あなたは光なのか?」
{そうだ。私はお前の脳に直接声を伝えている}
「俺になんのようだ。あなたは何だ?」そう聞いたが、声は震えている。
目の前の存在があまりに異質だった。
光が考えを伝えることが出来るのだろうか。
(そんなことあり得るのか)一番に思ったのがそれだった。
目の前の出来事だが、それを受け入れるのは出来ない。
{疑うのも、無理ないかもしれないが、私が何でここにいるか話したら少しは分かってもらえるだろう}
そう言って、不思議な存在は話しだした。
{私が、ここにいるのは目的があっているのではない。仕方なくここにいる。
およそ1万年前、私はここの恒星を観察していた。ここの太陽は変わった星で、周囲の星より誕生したのが古いと考えられていた。その成員に興味があって、接近して様々なデーターを得ようとした。ところが長く観察していると、急に太陽のフレームが不安定となり、磁気嵐にまきこまれてしまった。船が操作不能に陥った。なんとか太陽からの影響を避けて、この惑星まで来れた。ただ船は操縦不能でこの惑星にまっすぐ突っ込む形で、墜落するしかなかった。
いまいるこの穴はその時出来たものだ。
現状、今の私は地中深く埋まった船に閉じ込められている。}
「脱出できないのか?」
{この船は特殊な構造をしており、私と船は一体化している。船が地中から抜け出せない限り、私も出られない。}
「俺が力を貸してもダメなのか?」
{お前たちの科学技術では私を救えない。}
「俺たちの船は宇宙を飛び廻っているぞ。お前の船を掘り出すのは不可能ではない」光の言葉にむっとして言う。
{船を掘り出しただけでは、私は助からない。船の機関が復活しないと私は此処から出られない。私の一族の者でないとこの窮状は抜けられないのだ}
「お前の一族に救援を要請したのか?」
{ずっとやり続けているが、応えてくれない。船の機関が停止し、遠方へまで救援要請が届かないようだ。今私に出来るのは船から少し離れて、このような非物質的姿で現れることだけだ}
{そこでお前に頼みたいのだが、私の眼になって船の外、地表の様子を私に見させて欲しいのだ。お前の身体に私の一部が入ればそれだけで、お前の五感が私に伝わる}
「俺の身体を乗っ取るつもりか?」
{いや、私の一部が入ってもお前の自主性に替わりない。お前は自分の考えで行動できるし、お前の意思になんの干渉も与えない。その代わり、お前のエネルギー変換能力を与えよう}
この提案にウリューは何かしらの不信を覚える。まだ光の存在を使用できていなかった。
「ここにはたくさんの獣が来ていただろう。どうして獣に目の役割をさせなかった?」
{獣の知能が低すぎた。奴らは本能に従いすぎて、恐怖に怯えこの穴を駆け回り、私の指令を無視してしまう。お前の見た獣の骨はほとんどが私の一部が乗り移ったものだが、皆、私の願いに反し、本能のまま動き回り、穴から出る事さえ出来なかった。}
「俺だって、この穴から出られるか分からないぞ」
{お前に知恵があるのなら、この穴からでる知恵があるはずだ}
「お前の眼になって俺に差しさわりがないのだな?」念のために聞く。
{外の情報を知りたいだけだ。お前の行動を制限しない}
「嫌だと言ったら?」
{無理にでもなって貰う}
圧倒的な存在感。光の要望を拒否できそうにない。
「分かった。痛くしないでくれ」光の存在の力を拒めそうになく、受け入れるしかなかった。




