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プロローグ 会議のお知らせ

二章開幕です。


「おはようございます! 冒険者ギルドへようこそ!」


 領主様の晩餐会が襲撃されるという大事件から早一月。冒険者ギルドの賑わいは事件前と大差ない有り様だった。

 あれ? あの忙しさはセレナちゃんの策略の所為だったのでは? 忙しさが変わって無いんだけど?

 そんな私の疑問は依頼人との会話や内容でその全容が明らかになって来た。

 要は街中で悪さをしていた連中をまとめて摘発したはいいものの彼らが取り仕切っていた小物たちの制御が外れ、これまで襲われなかった地区や商会の人まで襲われるようになったというのだ。

 アルムさん、もうちょっと丁寧にやって欲しかった。まあ丸投げしたのは私だしな。


「ギルマス、次の依頼を頼みます」

「……ちゃんと休みを入れてくださいねラーゼンさん」

「はい!」


 依頼人に混じってカウンターにやって来たラーゼンさんに依頼票を渡す。あの事件から変わらない仕事量とは違い、随分と変わってしまったのはラーゼンさんだった。

 私の胸を貫くという私にだいぶ原因がある事故から自信を喪失し、閃光の晩餐会なんて呼ばれる襲撃事件で冒険者ギルド支部が破壊されたと聞いた彼はその時間、自宅で腐っていた事に妙な責任を背負ってしまったようで今やストイックに仕事をこなす冒険者になってしまった。

 いや、受付嬢としては助かるが私としては無理しているのが明らかだし、彼に惚れていた人たちは今のストイックさの原因が私だと決めつけ一方的に私を非難しているらしい。まいったね。

 ともあれ人間そう簡単には性格は変わらない。ラーゼンさんにはそのうち彼の自尊心を満たせるような大きな仕事を任せるとしよう。


「ギルドマスター、早くしてくれないか? 私は忙しいんだ」

「はい。申し訳ございませんイザベルさん」


 行列に並んでいた冒険者……赤茶色の髪を後ろで束ね、少し肌の焼けた細身だが筋肉質な身体付きをした槍使いの女性、イザベルさんに私は真摯に謝罪して用意していた依頼達成の報酬を手渡す。


「ふん、一日中座ってるんだ。これくらいさっさと済ませてくれ」

「はい、気をつけます。お疲れ様でした」

「……ちっ」


 舌打ちされてしまった。


 まああまり深く考えても仕方がない。依頼人も冒険者もまだまだいるのだ。


「次の方どうぞー!」

「フランドール、先にこちらの用件を済まさせてもらいたい」

「?」


 また列の外から話しかけて来る人が現れた。この行列が目に入らないのだろうか?


「あれ? メアリさん?」


 そこに立っていたのは王都の冒険者ギルドで同期だった受付嬢のメアリさんだった。紺色の髪を短く切り揃え、ピシリとしたタイトなスーツを着こなした才女の姿を見て私の表情はパァッと明るくなる。


「遂に来たんですね! 応援が!」

「……は? 何の話だ?」

「? 辺境支部の現状を憂いた本部がようやく他所の支部から応援を寄越してくれたのでは?」

「だ、れ、が、辺境なんて田舎支部の受付嬢などやるものか! これを見ろこれを!」

「そ、それはぁ!?」


 私はメアリさんが左手首に付けた銀飾の腕輪に目を見張る。それは限界までサイズを抑え込んだ時計、いわゆる腕時計だった。それもヴィナス商会の人気モデルだ。


「よくお似合いですよメアリさん! それ人気で手に入らなかったんですよね! 私同じブランドの懐中時計にしたんですよほら!」


 私は胸元から小さな鎖を引っ張り上げて手のひらサイズの銀飾の懐中時計を見せる。

 時計塔がぶっ壊れて時間の把握が体内時計だけになって不便だったので自分へのご褒美として買った品だ。ローンだけど。


「う……そ、そっちじゃなくコッチだコッチ」


 メアリさんが指したのは冒険者ギルドの紋章が刻印された金色に輝くバッジ……それは本部所属を示す証だった。


「えっ? メアリさん、本部に配属されたんですか!?」

「そうだ。辺境のギルマス代理なんて半端な出世をしたアナタと違ってね」

「へぇ〜」


 冒険者ギルド本部に勤める人はギルドの中でもエリート中のエリートだ。正直そんなエリートは是非現場で活躍して欲しい。


 それはさておき冒険者ギルド本部に一般職の受付嬢がなろうと思ってそう簡単になれるものではない。

 なんせギルドの中枢。各支部の情報が全て集約される最重要部署だ。

 そのため審査はメチャクチャ厳しい。それこそギルドマスターになる審査のほうがまだ緩いと感じるほどに。

 まあ実際私が代理なんかになってるしね。ギルマス審査とかゆるゆるでしょうとも。


「おめでとうございます! で、用件とは? 依頼人の皆さんを待たせちゃうので手短に」

「本部から、エルドラドを含めた周辺国のギルドマスターの招集命令だ。七日後のマスター会議にアナタにも参加してもらう」

「いや、メアリさん。この状態を見てくださいよ。参加できると思います?」


 ズラリと並ぶ依頼人の列を指して言う私にメアリさんはキリっとした目を細める。


「本部の指示は絶対だ。たかが代理が断れると思わない事だ」

「えぇ〜」


 七日後というのは中々難しい。

 というかなぜ私? 他にも暇してそうなギルドマスターの一人や二人はいそうなものだが。


「せめて十日後になりません?」

「なる訳ないだろ」

「じゃあ先日辺境支部で違法な諜報活動を確認したけど誤認かもしれないから調べるためにあと三日くださいって伝えてください」

「? なんだそれは」

「まあそれで駄目なら諦めて七日後に今ある資料まとめて真相を明らかにしますから、それも合わせてお伝えください」

「よくわからんがそんな事で本部が決定を覆す事はないからな」


 不機嫌そうにヒールを鳴らして去っていくメアリさんのお尻に視線がいってる列の人々を手拍子でこっちに意識を戻させる。


「はいはい、停滞してしまい申し訳ございません。受付を再開しますね」



 翌日、マスター会議は十三日後に変更になったと通達が来た。やったぜ。


通常業務に支障をきたす会議がフランドールを襲う。

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 お疲れ様です。第二章早々不穏なスタートで。  やはりギルド本部も後ろ暗いからか、フランの要求にサッサと応じるあたりやってたことのやばさは感じていたようで。そして本部はエリート意識が高いと。  また面…
第二章キター!早い!作者様、フランが乗り移ってない?大丈夫? またしても早速波乱しかない導入に草ですね。周りがトゲトゲしてても静水のように受け流す彼女を見習いたい物ですねえ、羨ましい…
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