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魔女と呼ばれる私、癒しの花を咲かせます  作者: しぃ太郎
第三章 小さな蕾と灰色

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第39話 ローレンス神父と、火事の真相


 ――ローレンス神父視点――



 エレナが崖から転落して三日――。


 やはり、神はその都度適度な配役を与えるらしい。


 私は、「不吉なもの」を追い出す配役を与えられたと思った。

 無意識に、興奮で指が震える。


「おお!神よ!あなたが与えてくださったのこの役割を、必ず全うしてみせます……!」


 そう。

 今、この瞬間にも、この村に居着いている赤い瞳の「不吉な者」。

 何度も導こうとしたが、届かなかった。

 ならばこれは、試練なのだ。

 きっと、神はこの場面をあらかじめ用意してくれていたのだろう。


 私は、もう一度神に祈り、聖書を抱きしめた。


 ――もう迷いはない。


 ◇◇◇


 彼女の存在を知った五年前。

 遠目からでも、すぐにわかった。


 本当に『赤い瞳』だ。

 医者が言っていた事は本当だろうか?

 神は極稀に、奇跡を扱う力を授けることがある。この国の数少ない聖女が正にそれだ。


 しかし、あの少女は――。

 昔から人々に忌まれてきた証を持つ者が、神の奇跡を授かるなど……あり得るのだろうか。


 確かめねば。

 そして、私が導かねばならない。


 そう思っていたのに――。

 少女は悉く、こちらの善意に応えなかった。


 それならば?

 神よ。

 もう宜しいでしょうか。


 私は随分と努力したのです。

 あの、未熟な子らを導こうと何度も動きました。


 それでも堕落し続ける存在ならば、それは必要でしょうか。

 ……いいや。無用だ。

 神の御心のままに……この役割を全ういたしましょう。


 私は、静かに聖書を閉じた。


「すべては神の采配です」


 ◇◇◇


 ―― セラ視点 ――



「セラさん。希望を捨てずに……。神は寄り添って、あなたを見守ってくれています」

「……じゃあ、どうすれば……?」


 私の問いに、神父は首を振って、祈りの言葉を呟いた。

 それは今、一番聞きたくないものだった。


「立派な人でした。……彼女の安らぎを祈りましょう」


 ――神が見守っている?


 私が手を離した、あの瞬間も?

 すり抜けていった、お母さんの手。

 今でも感触が甦るようだ。


 あれは……やっぱり私の罪なの?

 足元がどんどんと崩れていくような感覚だった。

 

 心が軋む。目の前が暗くなる。

 ……全部消えちゃえばいい。

 だってお母さんがここにいない。

 こんなの必要ない。……見たくない。



『もう亡くなっているだろうな』

 勝手な事ばかり言う村人も。


 お母さんがいない薬草園を律儀に守ってるルミアも。


 何もできなかったキアンも。


 罪深い私も、全部なくなっちゃえばいい……。


 手元の松明を枯葉に向ける。もう秋の終わりだ。

 燃えやすい。

 すべて燃えてしまえばいい。

 パチパチと音を立て、小さな火がついた。


 煙とともに、次の瞬間には一気に広がっていた。

 目の前の真っ赤な炎。

 それを見ながら、私は呟いた。


「……いらない。消えちゃえ」


 少しだけ、炎に癒される。

 これで全部無かったことになればいい。


 知らないうちに、燃え上がる火に魅入られる。


 何も感じない。

 ただ、炎の中に自分も溶けてしまえたらいいと思った。



 ◇◇◇


 外が暗い。

 いつの間にか、時間が変わっていた。


 ――あれ。

 家の中が静かすぎる。

 その静寂が、なぜか私を追い込んでいく。得体のしれない不安が心に押し寄せてくる。


 あれ?

 いつも偉そうなキアンは……?

 ルミアはどうしたっけ……?


「キアン?ルミア?」


 よく思い出そうとすると、激しい頭痛が襲った。

 その瞬間に、石を投げられる、二人の映像が流れ込む。


 崖。炎。――石?


 私は、何をしてしまったのか……。

 両腕で体を抱きしめても震えが止まらなかった。

 薬草園が燃えてしまった。

 薬を作るための――お母さんが残したものを自分で壊してしまった。



 ――その時、外から声が聞こえてきた。

 村の人だ。


「うちの子が霜風邪で倒れたんだ……!薬が欲しい、お願いだ」


 何度も叩かれる扉。

 私は震える手で棚から薬を取り出す。

 見るからに残りが少ない。


 深呼吸を繰り返す。

 うまく吸えない空気を必死に肺に送り込む。今は目の前に薬を求めている人がいる。


「お母さん……。私、やらなきゃ。ちゃんとお母さんみたいにやらないと」


 ポケットに入った、20グラムの分銅。

 私の名前が彫られ、この薬屋のマークも入っている。


 お守り代わりに手放せなかったそれを握り込む。

 そうだ。

 後悔は後回しにしなければ――。


 まずは、目の前の患者だ。

 私はゆっくりと、ドアを開いた。



 

ここまで読んでくださってありがとうございました。

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