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白騎士さんが通る  作者: 煙道 紫
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恐るべき進行

アデュート帝国の隣国。ルノワール王国が『聖都イザリス』は質実剛健なその国民性と他国から《石のように固い》とも呼ばれる法への絶対的な信仰によるある種のディストピアの様を擁しており、しかしとも政体として共和制の理念が軽んじられる事も無く、最高法執行官である元老院たちの最高権威としての対面を保ちつつも、行政権を国王ネルウァに託していた。


嘗ての先祖たちが切り開いた高山であるレヌレード山。自然の要塞とも言われる恵まれた山脈に加えて、聖都イザリスを囲むのはその国民性故に堅牢に創られた巨大な壁。高さは優に50Mを越え、その『他国から来た者を信用しない』と言う市民の閉鎖的な思想に拍車をかけていた。


ルノワール王国はこの戦乱終了後の世事に於いて領土を広げない。

自然的な、または人工的にも堅牢としか言えない壁には平地との高低差を利用した遠距離・破壊兵器が並べられており、この国の戦争とは相手の攻撃が届かない所から一方的に攻撃し続けると言うアウトレンジ手法である為にその戦略も堅牢な壁から出ない事が前提で在った。


領土が増えたら壁から出なければならない。


国民にとって、壁の外に出ると言う事はある種の冒険に等しい。それ程までに閉鎖的な国民性を持ち合わせる人々から国家は国家保安税として高い税金を取っていた。


国民達は壁の外。在りもしない幻影に必要以上に怯えながら、今日も高い税金を払う為に真面目に働くのだった。


「地獄かな?」


極東には日本と言う国が在って、似た様な様相を醸しているらしいですよ(白目)


冗談は置いておいて、乗り物で邪教徒のアジトへ向かう。

設定上、聖都イザリスはその閉鎖的な性質から外部の者を受け付けないが一度受け入れられたのなら、これ程隠れやすい場所は無いのだろう。


残念ながらイザリスには悪い組織が多い。

暗殺ギルドや邪教徒の本部が在るので自然とそういう人間が集まるのだろう。ゲーム上の設定である。


まぁ、NPCはクエスト等で敵対しなければ当たり判定さえ無いし、モンスターとは明確に分けられている。


メインストーリーに関するNPCがプレイヤーのミスで死んでしまったら物語が進まなくなってしまうのだから当然の事であった。

露店の主人を攻撃したら商品の売買が出来なくなるゲームはネットゲームには少ないのだ。


「と、言う事でやってきました。ここが邪教徒のアジトです。」


邪教徒のアジトは露店が並ぶ大通りに面した『モネの木』と言う大衆居酒屋から侵入する。


乗り物から降りて居酒屋に入るとシンと静まり返った店内を見渡して、右手にある机のオブジェクトを持ち上げる。


メッチャ見られてるけど大した事では無い。クエスト進行中でも店内のNPCがいる状態でアクションを起こすのだから、今更になって他人の眼を気にしても仕方がない。


そして、他人の視線よりも豪華アイテムだ。


本来、特別なクエストを経てやっとの事で発見できる場所で、暗号読解からアイテム探しと戦闘に関わらないクエストが多い事でユーザーから不評を買った『邪教徒のアジトを探せ!』クエストで判明する邪教徒のアジト。


私は場所を覚えているので最速で向かうが、本来であれば8つのクエスト群をクリアしなければ発見できない隠された場所でありプレイヤーはクエスト中、王国にアジトを報告する・しないの選択が出来る。


「しないほうが、お得ですよ(小声)」


王国に報告してしまうと邪教徒たちは姿を消してしまう。


そして、邪教徒が消えるとイカゲソの交換が面倒になるので、攻略上は報告しない一択である。

プレイヤーは面倒を嫌うのだ。


さて、私が机のオブジェクトを持ち上げると机の脚の下にある重量を感知して作動する仕掛けが動き、机の下の床が僅かにズレる。

その、僅かにズレた床に指を掛けて床を引っぺがすと地下へと続く階段が現れたのだった。


「正直、めっちゃ楽しみ。」


1年間、毎日クエストを3回廻さなければ得る事が出来無い豪華アイテム。

ゲーム内では得る事が出来なかったそれを手にするこの高揚感は何者にも代えがたい。


地下へと進むと学校の校庭程の広い空間。

薄暗い蝋燭の明かりが僅かに周囲を照らして、光源と言えばそれだけである。

そして、広い空間の中央には煌々と周囲を照らす篝火に邪神像。


私は全体的にぬるぬるしている邪神達の像を横目に1人の邪教徒の男に声を掛けて、1000個のイカゲソを両手で渡す。


「乗り物下さいっ!」


言葉が通じない事は解っているのだが、テンションの上がった私は声を抑える事が出来なかった。


案外、大人になってもこういった、欲しい物を買う前とかにはワクワクするものなのだ。

・・・私だけだろうか?


邪教徒の男は一瞬びくりと身体を震わせると、私が渡したイカゲソを受け取り邪神像に供えるともごもごと口を動かして何かを唱える。


「あっ。そうやってアイテム精製するのね。」


ゲーム上では商店のメニュー表の様にアイテムが陳列されており、イカゲソの必要個数が値段表記のように書かれていたのみであったが、如何にもこの世界ではアイテムを召喚するらしかった。


そして、私は男から目的としていた騎乗系の乗り物を受け取ると、試乗と称して大通りへと向かうのだった。



「おぉおおおっ!はえーっ!」


さて、この豪華アイテム【死の進軍(デス・ペラード)】。騎乗する事を目的とした【騎乗アイテム】で使用中、移動速度が1200%上昇すると言う効果を発揮する。


何時も使用している【滅亡竜(デス)】は移動速度が600%上昇+飛行能力の追加なので速力の差は歴然。

まぁ、【死の進軍(デス・ペラード)】には飛行能力が備わっていないが為に、入り組んだ巨大迷路のショートカットが出来ない分、滅亡竜(デス)にも活躍の場があるが、ダンジョン周回時には多大な効果を発揮する乗り物で在った。


プレイヤーとして言うならば、移動速度は幾らステータスを上昇させても変化が無いのだ。


速力のステータスを上昇させて変化するのは攻撃速度であるので。


騎乗アイテムはダンジョン周回効率を求めるような課金勢が購入する代表的なアイテムでもあった。


一応、メインクエストを熟すと【ペガサス】と言う騎乗アイテムを貰う事が出来るのだが、移動速度280%上昇と課金用アイテムとの効果は歴然。

何度でも使用できるアイテムであるので、初心者の内に購入して於くのが時間効率的に最も優れた方法だろう。


私が乗り物に【滅亡竜(デス)】を選んでいたのは飛行能力に加えて見た目がカッコ良かった為である。

スタイリッシュで流線美溢れるデザインの竜が赤い炎のオーラを纏っているのだから、男の子は好きなデザインだろう。


この子(デス・ペラード)はなぁ・・・。」


死の進軍(デス・ペラード)】の見た目は正直、刺激的だ。


黒くて細い芋虫が楕円形の何かに大量に群がって居るかのような見た目に、ドロドロに溶けた人間の上半身が突き刺さっているかのようなデザインは、柔らかい表現をするなら人を選ぶ。


邪神の素材から精製されたものであるし、廃プレイヤーは見てくれよりも性能を選ぶ傾向が強いので受け入れられていた面も強いのだろう。


一度でも乗ってみると素晴らしい速力で景色が流れて行くので、例えるなら、現実世界でバイクに乗っている様で楽しいのだがまぁ、見た目(デザイン)だけでは選ばないな。と言った感じ。


騎乗アイテムの外観を変える課金アイテムも存在するが、私は持っていないのでこのまま使うしかない。


「まぁ、使い慣れたら可愛く思えてくるでしょ。」


同じ見た目で同じ性能でも、自分が持っている騎乗アイテムが一番可愛い。

人は其れを愛着と言うのだろう。


この子(デス・ペラード)と色々な国を旅していけば、その内に愛着も沸いて来る。


「じゃあ、この子(デス・ペラード)でアデュート帝国まで戻りますか!」


滅亡竜(デス)の飛行能力で無視してきた地形を辿りながら、気持ちの良い速力で来た道を戻って行く。


途中、道行く馬車に当たってしまったが、モブに謝る訳でも無いのでその儘に、アデュート帝国の城下町へと続く門を潜り抜けるのであった。


「って。直ってないんかーいっ!」


そして私が見たものは、破壊され尽くした街並みであった。



【死の進軍デス・ペラード


異端の語り部に紡がれる絶望。

戦場跡地で濃縮された呪いの言葉は何時の日だったか、形を以て蠢き出した。


死と恐怖の深淵に飲まれた戦士たちはその魂を永遠に、舐め取られていく。彼らが望むのは唯ひとつ。


もっと仲間【道連れ】が欲しい。



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