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白騎士さんが通る  作者: 煙道 紫
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セレナ

アデュート帝国が憎い。


アデュート帝国が行って来た戦争。その大抵は他国からのやっかみで『自国の領土を護った』に過ぎないが、自国の領土を増やす為に行った戦争も多い。


多種族から成る人類種。その中でも、その社会性から共存する事が出来ない種族も居た。


同じ人間種でも意見の違いから衝突する事が在るのだ。ある程度の知識を得た今となっては仕方無い部分があるとは理解はして居るが、だからと言って恨み辛みが消え去る訳では無い。


私は過去の戦災孤児で父は兵士となって死に、母は私を生んだ後に栄養不足から衰弱死したらしい。

唯一、幸運だったのは孤児院の園長が生まれたばかりの私を拾ってくれた事。


そして、不幸だったのは、その園長が奴隷商だった事。


良く在る話だ。育てて、売る。


売れなかった商品は生産施設で子供を産み続けさせる。


園長曰く、「野菜よりも時間が掛るが高く売れる」そうだ。


私は13歳で太った貴族に売られて奴隷となった。奴隷にも地位があるらしく、新入りはきつい仕事に食事も僅か。ゴミ箱を漁る権利は地位の高い奴隷の物だった。


そして14歳になったある時、地位の高い奴隷になる方法を知った。


私が花を散らして、ご主人様に真面な食事を与えられた時に初めて満腹したのを今でも覚えている。


そして、私がご主人様の相手をすると言う事は、前の奴隷は用済みになると言う事だ。


毎日、私に当たり付けて偉そうにしていた前の奴隷は路地裏に斬って捨てられたのだ。


私も(いず)れ・・・。そう考えると恐怖心が湧き上がって来た。


始めは飽きられない様にいろいろな所作を勉強して実践した。

けど、この程度の事は前の奴隷もやっていた筈。だからこそ資料室の本を盗み読み、勉強をして世界を知った。

この場所以外でも暮らしていけると確信した2年後。貴族邸からの脱出に成功する。

ある程度の信頼を得ていたのだ。多少、自由な時間は有ったし脱出は難しい事では無かった。


そして数日後、アデュート帝国の戦争が終結した。

路地裏で山菜を獲って暮らしていた私は遠目から帰還した兵士を見ていたが、それがいけなかった。


兵士数名に囲まれて暴行を受けたのだ。

同じ国の人間でも醜い人間は居る。乱暴な行為の途中で気絶して次の日の早朝に、寒さと共に起きたのだった。


「こんなにも醜い世界なら。いっその事全て壊れてしまえ。」


擦れた声で憎しみを呟くと胸に黒い靄の様な物が現れる。

黒い靄はだんだんと私の心を蝕み、私はそれを受け入れた。脳内で響く不協和音。叫ぶ言葉は「魂を集めて捧げよ。全てを破壊してやろう。」


それからの私は他人から奪う日常へと変化していく。


生来の能力で地頭の良さが在ったらしく、始めは大通りでのスリ。次第に高価な壺と偽り安値の壺を売りつける詐欺を新人の商人に行った。


スリで得た金は高価な壺を売りつける為の衣装に使われたが、十分以上に回収できた。


次に、詐欺で得た金を使用して占い師に転職。カードシャッフルする為の手先の器用さはスリで、相手を信じ込ませる話術は詐欺で覚えた。


占いは私には相性が良かった様で、そこそこの才能を発揮した。多少の人気が出て来ると運命の出会い。


暗殺ギルドボスの1人。ゴル・ズーアン。


「アデュート帝国の敵国の依頼で貴族の殺害をしたいが、侵入するには守りが強固。

その貴族の娘が占い好きらしいので、長年この土地で占いをして居て市井で有名なお前の力を借りたい。

断れば殺す。」


チャンスに違いなかった。


「依頼の報酬として暗殺ギルド員にして頂戴。」


「何故?」


「この国が憎いから。」


「・・・成功報酬だ。」


長年、その土地で占いを続けていると言う事は顔が広く知られていると言う事。

故に、不祥事を起こした場合は指名手配される。貴族はその事を理由に安心して私を邸宅へと案内した。


私が考えたのは毒草。

毒草は貴族の娘に、「眠る前にこの香を焚くと夢見が良い」と偽り渡したもの。香りを誤魔化す為に他のハーブ類を加えている。


毒草には夢見が良すぎて皮膚をナイフで切られても起きない効果がある。

乱暴されたときにこの毒草を間違えて食べてしまい、焦ったのだが、痛みを感じなくなり有効なモノだと気付いたのだ。


路地裏に実験体は大勢いた。


貴族の娘が香を焚くと、死んだかのように眠りに付く。

翌朝、意識も無く眠り続ける娘に貴族が使用人を呼び、警備が薄くなった所にゴル・ズーアンが侵入。


その日の夜には暗殺が完了したらしく、ゴル・ズーアンは私の腕を引いて行き、私は暗殺ギルドへの入会を果たした。


そして、更なる変化。


目を閉じて念じると相手を一定時間、操れるようになっていたのだ。

調べると『霊媒師(タロットマスター)』という職業らしく、出現は稀。この職業のスキルを利用し、暗殺ギルド内での地位をどんどんと上げて行った私は遂にボスとまで呼ばれ、5年前、皇帝ユリアヌスの暗殺の依頼を受けたのだった。


皇帝暗殺の作戦は簡単。


「微量の香を焚き続ける。」


香には精神的・肉体的な依存性がある。

1度使用すれば、より多くを欲する。多くを欲すると依存度が高まり、反動が大きくなってくる。


反動とは小さい物では幻覚・眩暈・吐き気に加えて冷や汗。

大きくなると、全身の穴から液体を垂れ流し呼吸できずに死に至る。


5年かけて此処まで来たのだ。失敗は無い。


私は魂を集めて・・・。邪神様を復活させるのだ。


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