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白騎士さんが通る  作者: 煙道 紫
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お城と社会人 その2



「あー、はいはい。そういう事ね」


ギルドの裏口へと連れられて来た私は彼が何をしたかったのかを察した。


裏口には貴族的然とした馬車が停められており、御者が暴れる馬を必死に卸していたのだった。


察するに昨日の戦争クエストの報酬関係だろう。

普段はムービーを飛ばして居たが、報酬は大きな城の中で壮大なBGMと共に受け渡される。


城には祭壇の様な物があり、上位者3名は職業毎のポージングのアクションをしてリザルト画面へと進むのだった。


ゲームでは戦争クエストが終了した時点で直ぐにムービーへと入り、報酬が受け渡されるのでさして気にして居なかったが、確かに戦争クエストのポイントを集計し、城で催されるパーティーの準備をするには時間が掛る。


この世界では、こういう所で無駄な現実感が有るのだ。


私は馬が暴れる馬車へ乗り込み柔らかい椅子へ座る。ソファーとまでは言わないがそこそこ良い椅子であるようだ。


乗り込んだ合図を御者へ送るために私が天井を装備している大剣の柄で突くと馬車はゆっくりと動きだした。


「城かぁ~。こういう時じゃないと入れないんだよなぁ。」


ゲーム内では入場は制限されていて、クエストの依頼でしか入城する事は出来ない。

基本的にはムービーで使われる城に入る機会は少ないのだった。

この世界の細かい部分を見ると決めた私としてはある種の観光気分が味わえるだろう。


「城っ。城っ。城っ♪。・・・ん~・・・城?」


私が適当な歌を歌っていると『城』の言葉が気に掛かる。


そういえば、ドレスコードは有るのだろうか?


「普通に困るんだが・・・。マジでどうしよう。」


思わず愚痴がこぼれてしまう。基本的に社会人には社会的な常識が求められる。お高いレストランにはそれ相応の格好で行かなければ入店を断られる事すらあるのだ。


戦争クエストの報酬は金策に代表されるほどに高い。

将来を考えると金貨は何枚あっても良いのだから受け取らないと言う選択肢は無い・・・が。


城は社会人的に考えると国のお偉いさん方が集まる上流社会。


その様な場所へ戦闘着のまま入城出来るのだろうか?


城下町を散策する際には町の住民たちに奇異の目を向けられた事は記憶に新しい。

ゲームでは良く見る白騎士装備はこの世界の基準では『変な恰好』なのだ。


では、国のお偉いさん方が集まる城に『変な恰好』で入城できるのか・・・。


「どう考えても無理です。本当にありがとうございました。」


ドレスコードの有るレストランににコスプレした人間が居るような物だ。

入城は無理でしょ。常識的に考えて。


「んーで。そうなると・・・。あっ。」


ブツブツと呟く。

ゲーム内には『装備』とは別枠で『ファッション』と言うアイテムが存在する。


装備の効果は其の侭で見た目のみを変更する事が出来る課金要素の一つで、どのゲームにも存在する要素。


装備の性能は良くても見た目が気に入らないと言う事はゲームでは良く在る事。それを解消する為に有るのが『ファッション』であり、非常に多くの種類が存在するのだ。


そして、何よりも中の人(プレイヤー)の性癖を表すのが『ファッション』であった。


自分の思い描いた性癖マシマシのキャラクターをお人形に見立てて着せ替えするのだ。ゲーム実況者でもなければ不細工キャラを創り上げるプレイヤーは少ない。


キャラクター(イコール)中の人の性癖。これはゲームの常識である。




さて、此処に精神的に社畜おっさんが一人居る訳だ。


んで、働いた報酬を得る為にはドレスコードのある城で相応の格好をする必要がある。


キャラクターは少女。


「はい、詰みです。」


つまりは、おっさんが上流社会の目が有る中で自分の性癖を暴露しなければならないと言う事態に陥っているのだ(逆切れ)!


「えちえち装備(ファッション)しか持ってねぇっ!」


そりゃそうだ。当時の私は学生だった。ファッションは課金要素である事から使える金額は限られており、自分が欲しいと思ったファッションしか揃えていない。


若い男性は()()()()()を考える事が当たり前な部分もあるのだから、傾向的には()()()()装備になる。


「ふぁーwwwwww」


こんなん、笑ってまうわ。


私が壊れて大阪弁になっていると馬車が停まる。


クソっ!ドレスコードの存在に気付くのが遅すぎた!


この事に少しでも早く気が付いていれば()()する時間もあった筈。


これから俺は自分の性癖を大勢の目の前で晒さなければ成らなくなった!


しかも壇上に上げられてだ!


想像しただけでも悲惨な事実に眩暈がする。


社会人のおっさんを絶望させ、殺すには・・・。自分(おっさん)の性癖に刺さるえちえち装備を着せて壇上に上げて大勢に晒せば良い。


「うん。ぼくおぼえた」


脳みそまでもが幼児まで退化していると馬車のドアが御者によって開かれた。時間は既に存在しない。


「いや、どうせ恥ずかしいなら堂々とした変態で居よう(震え声)。」


言葉は強がっていても心は(もぅ。)羞恥で(まぢで)いっぱいだ(むりなんだけどぉ)


私は仕方なく・・・。ファッション装備の『月夜の薄衣』を装備し、精神的に吐きそうになりながら入城したのだった。




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