お手伝い
暗殺ギルド員の幹部を捕獲した私は、スキル【次元移動】で家々を飛び越える。
素早く移動するだけのスキルだが、スキル使用時に慣性が働く仕様になっている為に、慣性が働いている間に更に移動スキルを発動させる事で更に加速して行く。
様々な場面で使用する事が出来るので、【次元移動】を使用した移動方法は慣性ジャンプや慣性ムーブと言われており、初心者でも比較的簡単に出来るプレイヤースキルの一つであった。
勿論の事だが、普通に走るよりも早く、短い移動距離であれば慣性を使った移動方法が最も早いのだ。僅かにスキルゲージを使用するが黒金糸装備の効果により、0.2秒後には回復するのでクールタイム以外に気にする部分も無い。
「さて、国境はどこら辺だったか・・・。適当な所で降ろすか。」
現在時刻は、昼の遅い時間。もう数時間すれば夕方になるので余りにも遠い距離へは行くことが出来ない。
この街へ入る為の門まで行くと何故か門が閉じていたので、慣性ジャンプで塀と堀を飛び越えて森の方へ向かった。
青々とした森特有の匂いが私を包む。数十分もしない間に尻のブルズアイに矢を射られた場所へとたどり着いた。思い出すだけでモゾモゾする。
「安全確認ヨシッ!」
周囲を入念に確認し人影が居ない事を確認する。
そして、アイテム化していた暗殺ギルドの幹部を元の状態に戻した。
「□■▼△△〇◎!」
「お家にお帰り。」
興奮していると言うより、恐慌状態にある男の肩を優しく叩く。
背中を軽く押してから森へ帰るように指さした。男は肩を落とし、トボトボとした足取りで森の中へと帰っていくのであった。
「これで良し。」
後はクエストを4回熟せば、戦争クエストが発生する。私は金策をする為の金策へ向かう為にギルドへ向かう事にしたのだった。
冒険者ギルドで適当な討伐クエストを確認していると背後から声を掛けられた。
振り返ると先程ギルドカードの対応をした冒険者。ギルド内で初めて声を掛けられたのは暗殺ギルド員の彼のお陰だろう。現状を考えるに恐らく、野良パーティーの申し込みだと考えられる。
私は1度頷きパーティー用のクエストを見繕った。三次職なら【獄炎の使者】が手軽でやりやすいだろうか。クエスト進行の為に彼のステータスを確認する。
「特化タイプじゃないのか・・・。育成ミスってるな」
基本的にRPGでは得意分野に特化させて育成するのが基本になる。レベルの上限が決まっている以上、ステータス値も決まっており、レベルアップ時にのみ付与される育成ポイントを全ての値に平等に振ってしまったら所謂『器用貧乏タイプ』になる。
不得手を補うためのパーティーなのだからソロプレイでも育成ポイントを平たく振った『器用貧乏タイプ』は野良パーティーを組む際に苦労するのだ。
一応、『殴り精霊術士』や『魔術剣闘士』も居る事には居たが、どの職業でもスキル回しで対処できるので悪手だった。
彼は更に悪手の『器用貧乏タイプ』で剣士であるのに『器用』と『素早さ』にステータスを振ってしまっている。これでは飛竜種か良くて属性竜程度の雑魚ボスしか討伐出来ないだろう。
「まあ、仕方ないから寄生させてあげるか。」
強いプレイヤーとクエストを進行する際に殆ど働かないプレイヤーを『寄生虫』と言う。基本的には嫌われるものだが、ネットゲームではレベルや称号等を最大にして居るプレイヤーが多いので礼儀正しく接すれば手伝ってくれる場合も多いのだ。
【獄炎の使者】は属性竜の中の火属性、《オルタロス》の討伐。攻撃力と体力が多いだけの雑魚なので、大した準備も必要ない。
通常、露店で販売している回復薬については最上級の物が無く、中級程度の物でも金貨が必要で大変高価になっているので予定していた準備薬も高価になると考えている。つまり、金策の為の金策は想定しているよりも面倒になる。
街中の販売店を見ても必要な薬やステータスを一定時間上昇させる料理系のアイテムが非常に乏しいので最悪、自分で調合する事になりそうだった。
「準備完了です。行きましょうか。」
彼のステータスを確認し、準備は必要ないと考えてそのまま準備完了を知らせる。
言葉は解らないが、ネットゲーム時代の癖が抜けていないのだった。
「▼〇△◎△」
ロバート君も準備完了した様だ。知らんけど。クエスト受注書を受付に持って行き、パーティー単位で依頼を受ける氏を記入する。
受付嬢は依然、緊張の只中に居るが、前の様に腰を抜かしたりはして居ない。貧血症状は治まった様子だった。見た目からも新人と分かる年齢であるから、仕事に慣れていないのだろうと考えられる。
私はロバートの手を引いてギルドから表へ出た。ギルドが有る大通りで乗り物を召喚して空の上から《オルタロス》が出現する火山地帯の最下層へ向かうのであった。




