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ハイファンタジーのエター集  作者: 皿日八目
タイトルなし
21/26

上方修正

章が進むにつれ過去に書いた作品となるため……

つまり質が下がっております。

1

『ドゴフォアイ・デポルシネ』という奇妙なタイトルのソーシャルゲームがある。ゲーム自体はぜんぜんまったく面白くないが、ひとつ大きな特徴がある。それは、ありとあらゆる神々(および悪魔)が登場することである。ソシャゲの☆☆☆☆☆(激レア)おなじみの面子(ギリシャ神話、北欧神話、日本神話、ソロモン七二柱など)はもちろんのこと、誰も聞いたことのないような神話を出典とする神々すら登場する。だからこのゲームは神々のあいだではけっこう有名で、とくにマイナーな神々のなかには、自分がいつ実装されるのかと公式ホームページに張り付いているものも珍しくない。


 このトアル神もそのひとはしらだった。トアル神はとある青年こと明がいたとある街を担当しており、いろいろな問題を解決しなければならない。しなければならないのに、この神はいま天上で、『ドゴフォアイ・デポルシネ』に熱中していた。ずっと待ち望んでいた「自分」が間もなく実装されようとしているからだ。


 嗚呼……遂にこのときが来た。私の名前は『十有説話集』五三〇ページの第四章五三節にチョロっとしか出ていないから、さすがの運営も拾えないと思っていたけれど……長生きはしてみるもんだなあ……


 実装されたらすぐに彼は「森羅万象と連綿と続く時間を寿ぐ御神籤(つまりガチャ)」を何度もひくつもりでいた。位の低い神とはいえ、超越的な存在であるのには違いないから、べつに「自分」を一発で引き当てることもやろうと思えば簡単なはずだった。しかし彼はゲーマーを自負していたため、そのようなずるをする気にはならなかった(そのわりには、とある街の人々のカードで勝手に御神籤の決済をすることに抵抗はないのだった)。しっかり一回一回まわし(このゲームに複数連ガチャなど実装されていない。一回一回にどきどきしてほしいという運営の心遣いだ! というプレイヤーもいるが、ただの手抜きだろうというのが大多数の見解だ)、いつか「自分」を引き当てるのだ。


 トアル神がそんなことを考えているうちに、ついに「自分」が実装されたアップデートが配信された。彼はすぐに御神籤をひきはじめた。

――二〇回。ルキフゲ・ロフォカレなんて三十柱は持ってるぞ……

――五〇回。なんでこのガチャからチャク・ムムル・アインが出てくるんだよ……

――百三二回。…………出た!

 ついにトアル神はトアル神を引き当てた。彼はふるえる指をなんとか抑え、【詳細】をタップしようとする。


 イラストはいいな! ……こんなに若くはないんだけどな。どんなステータスなんだろう? どんなスキルなんだろう? 最近実装された神は皆凄く強かったから、私も凄く強いはずだ! たぶん!

 

 期待に目を輝かせながら、彼は「自分」のステータス画面を見た。すると――


「……は?」


 カスだった。能力値もカスだが、特にカスなのはスキルだった。「一ターンのあいだ、『トアル神』は無属性となる」……属性というシステムが三バージョン前には死んでいるこのゲームではなきに等しいスキルだった(たとえ三バージョンより前であっても、ほとんど無価値のスキルには違いない)。

 ゲームのトアル神の惨状に現実のトアル神は怒り狂い、ゲーマーとしての矜持はどこへやら、運営の人間の思考に働きかけ「自分」をもっと強力なキャラクターにさせた。

 しかし彼はそんなことをすべきではなかったのだ。運営をトチ狂わせ、超強化した「トアル神」は、ほかのキャラクターの立場をつぶしてしまい、二か月後にサービス終了を招くことになる。そのあおりで会社もつぶれる。

 人も神も、あらゆる生命体はめちゃくちゃに怒ると、目の前が見えなくなってしまうものだ。


 だから、肉体を伴った人間がひとりそばをぷかぷか浮かんでいったときも、トアル神は気づかなかった。

☆用語解説☆


【悪魔】――あくま

本物。ちなみに偽物はこのコーナー。


【アップデート】――あっぷでえと

元のままがいいんだけど。


【運営】――うんえい

絶対神。どんなに強力な神、悪魔、怪物であっても、一瞬で産業廃棄物に変える能力を持つ。


【御神籤】――おみくじ

大凶。


【カス】――かす

クズにもカスにもクソにもゴミにも、立派な使い道がある。だから本当にアレなやつにはもったいない敬称。


【神】――かみ

たくさんいるが、実用的なのは一握り。


【惨状】――さんじょう

カラスの多いゴミ捨て場。


【ずる】

歩けるのに、車や電車を使うなどといったこと。


【超越的】――ちょうえつてき

腹が痛くなったら近くの人間を便器に変えられるようなこと。


【十有説話集】――とあるせつわしゅう

トアル神のことがチョロっと記された書。とある街の「とある」とは「ある場所」という意味であり、本当に「とある街」などという名称なのでは決してない。しかし『十有説話集』はこのとある街に伝わる書なのである。ちなみにこの小説の「とある」の使い方はあまりよろしくないので、きみは真似しないように。


【ドゴフォアイ・デポルシネ】――どごふぉあい・でぽるしね

トアル神の暴挙により、サービス終了に追い込まれたソーシャルゲーム。しかしトアル神はとどめをさしたに過ぎず、彼がなにもしなくともサービス終了は時間の問題だった。意味不明・理不尽なシステム、バグ、露骨な搾取、運営の不手際……とてもここでは紹介しきれないほどの問題点が山積しており、末期時のプレイヤーの半数はネタでやっているに過ぎないと言われていた。繰り返すが問題点が多すぎるため、ここでは代表的なものをひとつだけ紹介するにとどめる。

「惑星直列事件」

マイナーな神々も網羅するこのゲームだが、逆にメジャーな神々の実装はかなりもったいぶっていた。そんな折、やっとユピテル(べつにゼウスでいいのに)を実装すると運営が発表し、プレイヤーたちはその明るい話題で持ちきりになった。しかし排出確率が発表されると、そんな話題も藻屑と化した。信じられないほどの低確率だったのだ。そのあまりの低確率に「トンネル効果が起きるより低い」、「完全な惑星直列が起きるより低い」などど冗談交じりにプレイヤーが言いあったことから、この呼称が生まれた。だがこの事件はこれで終わりではない。ユピテルが実装されてから数日、SNS上に一枚の写真がアップされる。それはなんとユピテルを引き当てた写真だったのだ。「実はけっこう当たるのかも!? みんなも引いてみて!」と挑戦を呼びかけるコメントも添えられていた。これは報道番組で取り上げられるほど話題となったが、その投稿が運営による自演であることが発覚すると、また報道番組で取り上げられるほど話題となった。

こんなにひどいゲームだが、しょせんは人間の作り上げたもの。千年メンテナンスを続けたものすらある神々開発のゲームにはかなわない。


【マイナー】――まいなあ

きみが知っているならマイナーじゃない。

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