エターナル
「もといた世界に帰りたいよね?」
リーシュアがダラに聞いた。
「うーん……元の世界では学校に通っていたことくらしか覚えていないしそれに……」ダラはここで言葉を切り、思慮深げな、つまりどんな仮病を使おうか迷っているような人の表情をした。
「それに?」
「……なんだかそれ以外にはなにもなかったような気がするんですよね」
「え、どういうこと」リーシュアの声には困惑がにじんでいた。
「説明しにくいのだけれど、ぼくにはとくに家族とか、友達とか、そういうのはそもそもいなかったような気がするんです」
「うぅん……そんなことってあるかなあ?」彼女はまだ困惑していた。しかしダラは、どうもその考えが正しいような気がしてならなかった。
「……いや、間違いないです。こことはべつの世界にいた気はするけれど、それにまつわる記憶が学校に行っていたこと、本当にそれしかないんです。行って何をしていたのかもわからないし、学校に行く以外になにをしていたのか、どういう人とつきあっていたのか、なにもわからないんです。まったくわからないんです。欠片も思い出せないんです。そして、そんなものはそもそもなかったんだ、っていう気がするんです。ほかのことは全部ぼやけているのに、これだけははっきりした考えとして頭に浮かぶんです」
リーシュアにはダラの言っていることがよく分からなかったが、「……まあとりあえず、あそこでどうするか考えようか」と前方を指さした。
「え?」
ふたりはいつの間にか街に近づいていた。
教訓:無理




