季節の廻りの三倍速
ここから西に行くと街があるのだとか。リーシュアはそこを目指しており、その道中にて寝込んでいたダラを発見したそうだ。
「いっしょに行こうよ。道すがらいろいろ色々教えられるから」
ダラに断る理由はなかった。
ダラがいるこの世界は「イアケシ」といって、海にいくつかの大陸が浮かぶ、地球とそう変わりない場所である。今いるこの草原は、世界地図で見るとまさに右下の大陸のそのまた右下のところにあった。
「たまにいるんだって。他の世界からやって来る人が」
リーシュアはダラの前に立って進み、以上のようなことを――言葉が通じる理由も含めて――彼に説明した。
「じゃあぼくもそういう人ってことすね」
「うん……ただ、記憶がはっきりしてないのはなんでだろうね?」
それは作者が設定の構築をサボタージュしたためであるが、もちろんふたりには知る由もない。
しばらく歩き続けていたが、「……ところでさ」リーシュアが口を開いた。「きみ何歳?」
「十八歳です」ダラはそう答えた。まったく意外性のない答えだと自分では思っていたが、リーシュアの反応は意外そのものだった。
「ええっ。うそだあ、そんなに若いはずないもん」なぜか彼女は吹き出し、しかし次の発言にはダラが吹き出した。「五四くらいでしょ?」
「ぶっ……いや、そんなに老けて見えますかね……」
ダラのやけに真剣な反論はリーシュアにとって全くの予想外だったようで、一瞬(と言っても少なくとも三秒以上は続いていた)おどろきを顔に浮かべたが、すぐ納得したような表情に変わった。
「あーそうか。数え方が違うんだね」
「数え方?」
「距離」ひとつとっても、まっこと多くの表し方がある。キロとかマイルとか尺とか……これ以上はちょっと作者の知識の欠乏により挙げることができないが、とにかく、地球上においてだってそうなのである。そして言語と同じく、ここはイアケシ――異世界なのだから、もちろん単位だって違う。世語の理石はたいへん便利なアーティファクトではあるが、どうやら単位までには気がまわらなかったらしい。しかし今からたくさんの単位を羅列し、それをすべて記憶しろと読者に迫るのも酷な話である(もちろん作者にとっても。というか、むしろそれこそが大事)。だからここはひとつ、あのアーティファクトの能力を拡張し、単位も都合よく我々のものとそろえてくれるようにしよう。しかし年齢の数え方だけはイアケシ側に合わせよう。この世界は春夏秋冬がすべて一月ずつで、つまり四か月で一年が終了するのだ。そのため歳の進みがダラのいた日本と比較すると三倍速く、そのためリーシュアはダラのことを五四と言ったのである。
「そういうことだったんですか。それなら確かに五四歳ですね」リーシュアの言葉にダラはやっと合点がいった。「じゃあ……」と言いかけて、あわてて言葉をひっこめた。年齢を聞くのは失礼かもしれない。
「わたしも五四歳だよ」リーシュアは笑って言った。
「同い年だね」




