39話 かーわーいーいー
会場の外は火の海で大荒れ、消防は勿論、警察も動き始める事態になっていた。
あまりにも被害の範囲が大きいため、だれも近づくことができずヘリも周りを飛び回ることしかできない。
しかし、会場内は熱狂、熱狂、熱狂の嵐!誰一人として外の様子を気にする観客はいなかった。
今の段階ではほとんどの人間が状況を理解していなかった。
そして、肝心の怪我人や死者数だが被害の規模に比べてこちらはどちらも0となっており、それも含め消防、警察は混乱していた。
「被害者は0だと!?それは本当なのか!?」
「会場内は!異常なし!?」
「どうなってるんだ、周りはこんなに燃えているんだぞ……」
「……!特殊部隊を出動させろ!今すぐだ!」
――
一方その頃、会場内では順調にライブが進み、最後の一曲となっていた。
「みんな~!今日は本当にありがとう!最後の最後まで楽しんでいってね!それじゃあ!最後の曲いっくよ~!」
星の掛け声とともに最後の曲が始まった。
「それにしても、結局何もなかったな」
龍輝はほっとして気を緩めると、最後の曲でようやく星のライブを楽しめそうだ。
マッスル越しでは最初からずっと楽しんでいたかなめが、星のライブの豆知識を桜に教えていた。
「いいですか、桜ちゃん!星ちゃんのライブの最後には会場が一番盛り上がる、サプライズがあるんです!」
「かなめ、さすがの私でもそれは知ってるわよ」
「そうなんですか?じゃあ代わりにお兄ちゃん!答えをどうぞ!」
突然の問いかけに龍輝は驚いた。
「……俺!?俺か、えぇっと」
しばらく黙り込んだ。
「ぶー!お兄ちゃん時間切れです!正解は、サビに入るタイミングで星ちゃんに耳がつくんです!」
「どういうことだ?」
「仕組みは秘密らしいので関係者の人たち含め誰も分からないそうなんですが突然かわいらしい耳が現れるんです!しかもライブによって違う形や大きさをしているんです!」
「そ、そうなのか」
「もー!お兄ちゃんは反応が薄いですね、それがとっても可愛いんですから!見ていてください!そろそろ来ますよ!」
――
「バクマさんからの連絡がありません、手動で起動しましょう」
大勢の観客の中から二人の男が動き始める、しかし観客のほとんどは盛り上がりすぎて立ち見の為、目立つこともなく、三人も星に夢中で気づいていなかった。
だが、たった一人気づいていた。
「みんな!最後まで盛り上がっていこー!」
星の目線の先には突然動き出す二人の男、一人は龍輝の真下、もう一人は桜の上。
完璧なタイミング、研ぎ澄まされた五感、龍輝と桜は星と目が合う。
マイクを左手に持ち替え、まずは右。
龍輝を指さすと人差し指を真下に下げる。
観客の歓声とともに素早くマイクを持ち替えると左手を上げ、左右に振り始める。
リズムに合わせてジャンプジャンプ!
歌って踊って指示も出せる、これが世界一のアイドルだ。
二人はその行動をよく見ていた。
龍輝は下、桜は上を見上げると、これまた完璧なタイミングでどこかへ行こうとする人物を発見。
そんなことも知らず、裏口から出ていこうとする男二人を分厚い扉を出た瞬間捕まえた。
「は!?なんだお前!」
「悪いが、あんたらの計画は失敗みたいだ」
龍輝は男を取り押さえた、だが計画が失敗したはずの男がニヤリと微笑んだ。
「それはどうだろうな」
ふと外を見た。
「おい、なんだこれは……」
二人は大窓から見える外の景色に言葉が出なかった。
龍輝と桜はようやく外の状況を知った。
「それともう一つ教えてやる」
「なんだ」
龍輝に焦りが見え始めた。
「会場内にいる仲間は俺たち含めて三人だ」
「……あと一人、どこにいる!」
「さあな、俺たちはおとりでもある、おとりに強いやつらが寄ってきている間に強いやつが標的を殺ればいい」
「くそ!桜聞こえてるか?こいつらは魂持ちじゃない、スタッフの人でも対応できるだろうから任せて――」
桜は険しい表情を浮かべる。
「龍輝、私もう一人の場所分かったかもしれないわ」
「……俺も分かったかもしれない、スタッフの人が誰一人としていない、舞台裏のスタッフルームに急ぐぞ!」
男は笑い出した。
「まだ殺しちゃいないだろうよ、どうせ会場ごと爆破するからな」
「爆弾もあるのか!?」
「せいぜいガンバッ……グ」
「あんたと喋ってる時間はないみたいだ、このライブが終わったら警察に引き渡してやるからちょっとの間ここで眠てるんだな」
龍輝は龍王の能力で男を一瞬で気絶させるとスタッフルームへ急いだ。
桜も同様に持っていた護身用ロープで男を縛ると星の安全を確保しに舞台裏へ急いだ。
「二人はやられたか、まあいい、あの女さえ殺せば!後ろががら空きだぞ!」
男が舞台袖で能力を発動し襲い掛かろうとした時だった。
会場全体の照明が五秒間だけ消えた。
照明が戻ると最後の曲は終わった。
二人が舞台袖へ来ると、そこにはかなめと気絶した男だけが居た。
龍輝は驚いてかなめに問いかけた。
「かなめが倒したのか……?」
かなめは言った。
「違いますよ、私は少しの間照明を落としただけです!」
「そう、だよな」
何はともあれ、スタッフは全員無事が確認され歌う予定だった曲はすべて歌い切った。
想像の中では鳥肌ものなんですけど、文字にするのはなかなか難しいですね、、
良かったら評価ブックマークお願いします!




