40話 出会いと別れは突然に
スタッフが目を覚ますと会場内で起きたこと、今の状況について急いで警察に連絡した。
ようやく連絡が取れたのはいいものの、外の状況は変わらない為どうすることもできなかった。
星は今の状況を一人でステージに立ち、観客に説明していた。
「みんな!心配しないで!絶対大丈夫だから、もう少しだけ――」
星のライブは完璧だった。
だが、今回はそれで終わらなかった。
どれだけ素晴らしいライブでも現状を考えると一部の観客たちは不安になる。
いつ家に帰れるのか、このまま死んでしまわないのか、観客たちの意識は一瞬にして現実に戻り、最高のライブから最悪のライブになっていった。
「全部、私のせい」
――
一方その頃、外の状況は。
「死ね!ガチメル!」
バクマはひたすら周囲を爆破させ続けていた。
一切気を緩めることなく、永遠に。
しかしその攻撃はガチメルにはほとんど効いていなかった。
バクマの体力は限界に近い。
バ!バ!
数時間の爆発の終わりは突然訪れた。
周りは煙で何も見えない。
「げほっ、げほ、やったか」
煙の中からガチメルはゆっくりとバクマに近づく。
「そこだ!」
爆破が何かに当たった、バクマはそれを掴むと、突然腕に激痛が走る。
「ぁぁぁぁ!なんだ!蛇!?」
バクマが掴んだのは蛇だった。
隙を見せるとすぐ次の攻撃が来る。
空中には煙まみれの中、鳥たちが飛びまわる。
見たこともない何種類もの鳥たちがバクマ目掛けて飛んでくる。
足元はコンクリートのはずなのに突然穴が開き地面へ引きずり込まれそうになる。
「ガチメル!!どこへ行った!逃げたのか!」
圧倒的に不利な状況のバクマは叫びガチメルを挑発した。
「獣人界の汚点が!卑怯者!人殺し!」
「家族もろとも俺が!殺してやるよ!」
しばらく挑発を続けると、バクマを狙っていた動物達がどこかへ消えた。
「やっと、戦う気になったか、一撃で殺してやるよ!」
「一撃で死ぬのはお前だ」
「ッあ!」
バクマは何が起きたか分からなかった、気づけば地面に倒れ、目の前にはガチメルが居た。
「な、ん、なんだ、バケモン……が」
ガチメルは人間の姿をしていなかった。
龍のように鋭い爪、天使のような翼、鬼のような体格、熊の毛皮をかぶり睨みだけで戦意喪失するほどの史上最悪の獣人と呼ばれた男、ガチメル。
バクマは微かに息はしているが喋ることもできず、もう死にかけの状態だった。
「じゃあな」
ガチメルがとどめを刺そうとバクマへ手を伸ばす。
バクマの首に手がかかった瞬間、ガチメルが動きを止めた。
「ほんとだ、確かに五感には自信があるわけだ。」
「お前、何のつもりだ」
かなたはガチメルの言ったことが本当なのか試したのだ。
五感には自信がある、この言葉を信じ、まず煙の中でもはっきりと見える目の視界に入り、かなたのにおいを覚えていると信じ近づいていることをアピールし最後に「殺したら星が悲しむ」と呟き動きが止まった。
「やっぱりあんた、星のお父さんだろ」
「……」
「娘の命狙ってるやつ殺したくなるのは、うーん、まあ、分からなくもないが」
「……」
「え、やっぱり俺にも子供がいたとして、殺害予告が来たらそいつボコボコにするかもな……でも!殺すのはダメだと思う」
「はぁ、いつ私が星の親だと分かった」
ガチメルはバクマから手を離した。
「いつ?うーん、車から助けてもらった時、五感には自信があるって、それどっかで聞いたことあると思ったら星だ!ってなってなんとなく全部繋がったっていうか」
「そうか、星も同じことを言っていたんだな」
ガチメルはここに来て初めて表情が少し明るくなった。
それを見ると、かなたは言いたかったことを忘れその場に倒れてしまった。
それもそうだろう、何かと理由をつけて病院にもいかず連戦し、最後の最後で火消しまでさせられたのだから。
気づけば辺りは水浸しになっており燃えていた車の火はすべて消えていた。
火が消えて消防、救急、警察がライブ会場の周りに入り始めた。
ガチメルは世界指名手配の為かなたを抱えバレぬよう一瞬で大空へ飛び立った。
星が会場から出ると上を見上げた、空は少し曇っていた。
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