39-1.おじさんのランクアップ試験
タイトル通り、おじさんたちがメインの話となります。
主人公ふたりも出てきますが、おじさんばかりで大丈夫かな……。
ミオの査問会議から始まった王都訪問はさまざまな出来事があった。非常に濃い経験を経て、一行はリージュへ無事に戻った。
「カリスタさん、ただいま」
「はーっ、帰ってきたあ」
これほど長期の間、家に戻らないことはなかったミオとメイは、工房に戻ったとたん、懐かしさを実感した。
「お帰り。お疲れ様」
店番をしていたカリスタから報告を受ける。特に問題は起きなかったという。ミオの査問会議もつつがなく終わったと話すとカリスタも安堵した様子だ。
その日は疲れているだろうから、というジェイクとカリスタの気遣いで、屋台で買い込んだもので食事を済ませ、早々に休んだ。
次の日は王都で買い込んできたものの整理だ。楽しい作業である。工房であれこれ取り出す。
「じゃーん! とうとう手に入れた<モウモウの槍>!」
ミオもメイも相好を崩して鳴き声シリーズの槍をほおずりせんばかりだ。
「しばらくは<ブヒブヒのかばん>の中に入れておいて、わたしたちが手に入れたということは誰にも言わないでおきましょう」
「そうだね!」
今やリージュやハントだけでなくその周辺でも中々手に入らないと聞く。
「言い掛かりで査問会議に召喚されたけれど、それを凌駕する収穫があったわ」
「本当にね」
特にSランク錬金術師のサルトスとの出会いとアルルーンたちだ。査問会議のことはずいぶん印象が薄れてしまっている。
ふたりは荷物の整理を済ませた後、家の中を掃除し、貯蔵庫の素材の状態を確認する。その後、食料品の買い物をしがてら、土産物を配り歩いた。
夕方だったのが幸いして、冒険者ギルドに顔を出したミオはレジナルドに会うことができ、無事にお守りを返すことができた。
レジナルドといっしょに彼のパーティメンバーにも土産を渡すと驚きつつも喜ばれた。
「え、俺らにも?」
「もらっても良いのかな」
「うわあ、ありがとう! 嬉しいよ!」
レジナルドの新しいパーティメンバーが良い人たちのようで、ミオはこっそり安堵の息をつく。
「ケ、ケイトさん、これは受け取っても良いですよね? セーフですよね?」
「もちろんよ。ミオちゃんとメイちゃんの気持ちですからね。ありがたく思いなさいよ!」
ケイトに、あたふたしながら確認している者もいた。そんなに怖いか? いや、怖いか。
メイがその様子を見て腹を抱えて笑う。
ケイトと言えば、他のギルドの女性職員とともに受け取った土産にきゃあきゃあ騒いでいる。
レジナルドは騒動から一歩離れ、ミオにこっそりと査問会議の首尾を聞いた。
「どうだった?」
「うん、無事に終わった。その後にすっごいことがあって、いろいろ心配していたことが吹き飛んじゃった」
「そうなの?」
レジナルドも気を揉んでいたのだろう。安堵する様子に、申し訳ないという気持ちと同時に嬉しさがこみ上げてくる。
「なんとね、あのサルトス師にお会いしたの!」
「え? Sランク錬金術師の?」
さすがに、畑違いの職種でも、レジナルドも知っている。Aランクですら他の職業であっても名が知られているものだ。
「うん。おじさんの知り合いだったの」
「ジェイクさんって飄飄としていながら、とんでもないことをしでかす人だね」
レジナルドの言いようがおかしくて、ミオが首をすくめて笑う。
「これ、返すね」
そう言ってミオはお守りをレジナルドに渡した。
「お守りのおかげで無事に帰ってくることができたわ」
「効き目は抜群だろう?」
「本当ね!」
そうして工房に帰って来たミオとメイを、早々と錬金術師組合本部から届いた書類が待ち構えていた。
「……」
ふたりは手紙をカリスタから渡され、無言になる。旅行から帰った安堵感と買い込んだ物品への高揚と満足感で弾む表情だったのが一変し、感情が抜け落ちた顔つきになる。
食堂に移動し、大きく息を吸って、ミオが封を切り、手紙を読む。
「今回のことは不問に付す、ですって」
「無罪放免ってこと?」
「うん。難しい表現で書いてあるけれど、相手のはやとちりだって、」
「じゃあ、謝って来いってのよ!」
ミオは力が抜けたように椅子に座りこみ、逆にメイは立ちあがって憤懣やるかたないとばかりにうろうろと歩き回る。
「まあ、なにごともなかったということで、良かったじゃないか」
事の次第が気になって食堂に顔をのぞかせたカリスタが笑う。
「うん、良かったよ」
「カリスタさんも、いろいろありがとう。あ、お土産、持って行って!」
「今日は夕食を作るから、久々にいっしょに食べよう」
「それは嬉しいね」
くるくると表情が変わり、大体が明るく楽し気な姉妹が、唐突に降りかかった災難に消沈した。生きていればままあることだ。それをうまく切り抜け、普段通りの活き活きとした様子を取り戻した。ミオとメイの祖母が作り上げたのだろう、温かな雰囲気を、姉妹は継承している。それが壊れずに済んで、カリスタは嬉しかった。
その日、長らく留守にした冒険者ギルドに顔を出し、早々にひと仕事受けて出かけていたジェイクは査問会議の結果を聞き、破願した。
「そうか。じゃあ、サルトスに連絡しなきゃな」
そういえば、<クルッポの通信機>をもらったから、手紙よりもそちらを使ってみるかとつぶやく。
「おじさん、<クルッポの通信機>って相当高価なのよ?」
ミオが呆れた目を向ける。メイなどは、そんなものをほいほいもらって、と言わんばかりだ。ふたりだって、サルトスからあれこれもらっていたのに、とは賢明なジェイクは言わないでおいた。




