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バートを伴って採取に出かけた。ちょうど良いとばかりに、チロとジェイクもまじえて魔獣と戦った。
バートはなんと、防具をつけずに普段着で戦った。
「<ニャーニャのローブ>を着て戦って、破れ目が大きくなってしまったら一大事だからな」
当の本人は平然としたものである。
「ああ、ふたりとも心配するな。バートは強い。防具がなくても大丈夫だ」
ジェイクの言葉ではぴんとこなかったミオとメイは実践を目の当たりにして、Bランク冒険者のすごさを実感した。
バートはすぐにチロの機敏な動きに合わせ、縦横無尽に動き、剣を振るった。確かに、魔獣の牙も爪も届くことなく、倒していく。
「俺の出番はないな」
ミオとメイの傍でジェイクはのんびり観戦する。
「<ニャーニャのローブ>がなくても、十分に回避力があるわね」
「これで<ニャーニャのローブ>を着たら、どんな魔獣の攻撃でも当たらないんじゃないかしら」
バートが案内した採取場所はいつもミオが行く森から少し離れた場所だ。
「目印になるものがないから、よく覚えておくしかない」
そう言われて、ミオは必死に頭の中で歩数を考えた。なるべく大股になったり小股にならないように気を使う。
「距離感なら俺がつかめるから、大丈夫だぞ」
ジェイクの言葉にミオは安堵する。
「冒険者必須の能力だな」
「そんなものなの?」
バートがうなずき、メイが首を傾げる。
「そういうのもランクが高さに響いて来る。まあ、ジェイクはほとんどBランクみたいなものだからな」
「おじさん、本当にビルに振り回されていたのね」
そんな風にやり取りしながら、一行は無事に【五割れのライラック】を見つけた。
「あ! 【白のライラック】もあるわ!」
「【五割れのライラック】とは違うの?」
ミオが他にも見つけ、歓声を上げ、メイが首を傾げる。
「【白のライラック】はね、不幸をもたらすと言われているの」
「え、そんなの使うのか?」
ミオの言葉にバートが目を丸くする。
「これはこれで使い方があるのよ」
ふふ、と笑いまじりに言うミオに、バートが目を奪われる。
「もくもく玉、ぬるぬる玉といった玉シリーズの素材となるの」
なお、錬金術便覧による説明は以下の通りだ。
<もくもく玉>
煙玉。煙幕を張る。自分も吸い込まないように風向きを考えよう。
咳き込んでいるうちに攻撃されてしまう。
<ぬるぬる玉>
粘液をふりかけ相手の動きを阻害する。
元々ぬめっている魔獣には無効。攻撃がさらに通りにくくなるから注意。
使用を誤って武器を取り落とさないように。
役に立つが、正しい用法をしないといけない癖のあるアイテムだ。だからこそ、不幸をもたらす【白のライラック】で敵のラック(幸運)値を下げておきたいところだ。
「なるほどね。敵を不幸にするということなのね」
そういうことなら、と採取をしていく。
「バートさんに良い場所を教えてもらえたわ」
「<ニャーニャのローブ>の回避能力を取り戻さなきゃね」
ミオとメイは張り切って錬成に取り組んだ。
そして、後日、バートが工房に<ニャーニャのローブ>の引き取りにやって来た。
「どうだ? 回避能力は元に戻ったか?」
開口一番、期待に満ちた表情でバートが問う。
「それが、その、」
言いよどむミオに、バートが肩を落とす。
「なんだ、駄目だったのか」
「ううん。回避能力は以前よりも上がったと思うわ」
「おお! うん? じゃあ、なんでミオもメイも元気がないんだ」
ミオの言葉にバートは曇った表情を明るくしたものの、首を傾げる。
「そのね、」
ミオはメイと顔を見あわせた。
回避能力は元通りになるどころか上がった。錬成は成功したのだが、妙な現象が起きたのだ。
<ニャーニャのローブ>はどこをどうやったものか、たまに「ニャー」と鳴くようになったのだ。
ふたりとも、錬成が成功したと分かり、歓喜したものだが、どこからともなく、に「ニャー」という鳴き声が聞こえて来て戸惑った。
「え!?」
「チロちゃんじゃないよね?」
錬成の時にはチロは工房の中に入れない。元より、色んな機材があるから、入らないように言い含めていた。
「失敗?」
妙な効果がついてしまったが、引き渡しの日は迫っている。回避能力の方は向上しているから、バートに見せてどうするか相談しようとなった。
「いや、これ、最高じゃないか! この世に一着しかない<ニャーニャのローブ>だ!」
バートは早速ローブを着こんでくるりと回って見せた。
マニア心理とはかくも不思議なものである。
ミオに虫よけの粉をかけてもらい、メイからローブの洗濯傷みが少ない洗剤粉をもらい、バートはすっかりご満悦である。
「繊維の細かな中に入り込んで馴染むから、風でも消えないけれど、洗ったらまたこの虫よけ粉を振りかけて」
「草の汁の汚れみたいに取れにくい場合はこの洗濯粉を使うと良いわ。汚れた箇所に直接つけてもみ洗いしてね」
料金込みのアフターサービスも万全で、バートは感激しきりである。
その後、バートはたまにメンテナンスに来るようになる。
<ニャーニャのローブ>の不思議な効果についてミオから尋ねられたバートはこう答えた。
「俺を励ます、あるいは叱るように鳴くんだ」
鼻の下を指でこすって、ちょっとくすぐったそうに笑う。
なんの話か。もちろん、ローブのことである。
「もちろん、戦闘中や偵察中には鳴かない。さすがはミオとメイだな!」
期せずして、妙な効果がついたが、顧客満足度が高いのでよしとすることにしたミオとメイだった。




