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6-1. 冒険者ギルドに納品する薬を錬金しよう

 

 二日続けて採集に出かけた翌日だというのに、ミオもメイも久々に錬成をするのだと思うと、いつもよりも早く目が覚めた。


 ジェイクとチロのおかげで素材はたっぷり採取できた。

 でも、ふたりはここ最近、錬成では失敗ばかりだ。もともと、ふたりは採集は得意だが、錬成はそうでもなかった。そして、今や錬金術の師である祖母はいない。

 自分たちでやるしかないのだ。


 まずは薬を作ることにする。

「冒険者ギルドへ早めに持ち込んで、買ってもらえるだけ買ってもらいましょう!」

「そうよね。明日のパンを買うお金が心もとなかったら、錬成に集中できないものね」


 朝早くからあちこちを歩き回りばたばたと支度をする気配に起き出してきたジェイクは、寝ぼけ眼で朝食を食べながら聞いた。

「時間を計る魔道具を調整しなくていいのか?」


 鳴き声シリーズのような不思議な作用をもたらす道具を魔道具という。

 魔道具は複雑な回路を持つものと、錬成することによって道具に不思議な力を発揮させるものとがある。前者は魔道具師が作成し、後者は錬金術師が作る。


 工作が苦手、あるいは手間を省きたい錬金術師は魔道具師が作成した魔力を伴わない部品や道具を使用することもある。

 魔道具師が作った簡易キットなどである。


 魔道具は魔力が蓄積されている媒体(魔石など)を内蔵されているタイプと使用時に魔力を流してやるタイプがある。

 当然、魔力が蓄積されているタイプは媒体が魔力を失えば動かなくなる。

 森羅万象には力が宿る。つまり、そこいらに魔力は漂っている。なお、人間が魔法などを使って魔力を失った場合でも、時間が経てば自然治癒する。これを速めるのが魔力回復剤だ。


「薬を作るくらいなら大丈夫よ! ……たぶん」

「そうよね、慣れた作業だもんね! ……きっと」

 ミオとメイは面白いくらいに自信のなさそうなのがシンクロしている。


「おじさんも手伝って! 薬をなるべく急いで作って、冒険者ギルドで売れるだけ売りたいの」

 昨日、山からの帰り時間は遅くなったためか、流れるように自然に姉妹の家に帰って来たジェイクだ。

 乗り掛かった舟とばかりに手伝うことにした。ちなみに、チロは別室で休んでいる。

「ふつか続けてのお出かけだったから、疲れているでしょう」

「チロちゃん、今日はゆっくり休んでね」

「にゃうん」


 ミオとメイの工房は二階と三階が居住区で、一階の正面入り口をくぐってすぐが接客スペースである店で、カウンターとその後ろに棚があり、様々な道具が置かれている。入り口のすぐ隣にある窓にぴったりつけられた棚にも商品を配し、道行く人の目に触れるように陳列されている。

 その奥の部屋が作業場で、ふたりが工房と呼ぶ錬成を行う部屋である。つまりはここが錬金術師の研究室でもある。


 大中小の炉と窯、大きな秤が鎮座する。その他、釜や鍋、柄杓、蒸留器などが置かれているが、ジェイクには未知の物体だ。それでも、使い込まれた器具たちは埃をかぶることなく、よく手入れされているということは分かる。


 ミオが台の上に乳鉢と乳棒を運び、ミオが大きな円形状の木枠を運ぼうとして四苦八苦している。ジェイクはそれを受け取る。

「これ、網が張ってあるが、なんでみっつもあるんだ?」

「ふるいよ。目の粗いもの、細かいものとがあるの。あと、目の粗さを調整できるものもね」

 そのほか、ナイフも大中小とあり、はけやへら、鉢などもある。


「それで、薬はどんなものを作るんだ?」

「回復剤と解毒剤よ」

「一番需要があるから!」


「錬金術便覧にも載っているの。ほら」



 <回復剤>

  外傷を癒す。飲み薬とぬり薬。いやあな臭いがするぬり薬もある。

  すれ違うと、あ、あいつ、つけているな、と分かる。


 <魔力回復剤>

  魔力を回復させる。まずい。レベルが上がるにつれ、まずさは薄れる。


 <解毒剤>

  毒によって薬の種類が変わる。まずはなんの毒か判明することが重要。

  おおおおおお落ち着け! 

  効かないからってむきになって飲み続けないように。


 <健胃剤>

  気候の変化や体調の悪化による胃を整える。

  強い薬が胃を痛めないように一緒に内服することも。



「……なあ、こんな説明の仕方なのか?」

「ね、面白いよね」

「いや、面白いっていうか、真面目にやれというか、お前が落ち着けっていうか」

「回復剤ってぬり薬もあるけれど、本当に臭うのよね」

「ああ、そこは分かる。本当に離れていても「あ、ぬっているな」って思う」

「やっぱり思うんだ!」

 メイが思わず声を上げ、ミオと目を合わせ、ふたりは弾けるように笑い声をたてる。


「錬金術素材一覧も便覧と似た感じよ?」



 【夢みる水晶】

  透明なもの。錬成時の素材の溶媒。

  じっと見つめていると、夢を見ているような気持ちになる。すぴすぴ。


 【目移りするアヤメ】

  下剤の素材となる。

  あまりの花の美しさにどれも選べず、目移りしてしまう。



「……【目移りするアヤメ】ってそういう意味なんだな。というか、【夢みる水晶】の説明、最後、妙なのがくっついていないか?」

「いいじゃない、分かりやすくて」

「いや、分かりやすいっていうか、」


「あ、じゃあ、ここは?」

 メイが錬金術便覧をぱらぱらとめくって開いたページをジェイクに見せてくる。



 <鎮痛剤>

  飲み薬。聖母の優しさでできています。でも苦い。とんでもなく苦い。

  聖母の優しさ、どこへいった……。



「お、おお。痛みを鎮めるためには苦いのをがまんしなくちゃならないのか。本当に聖母の優しさはどこいったんだ」

「ねー」

 メイがけらけら笑う。つられてミオも笑う。屈託がない。





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