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告白

「おはよ、圭。どうしたんだそんな朝から走って」

真琴の最寄り駅から高校に向かうルート。

 いつも学校近くのコンビニあたりで真琴も合流し、圭にひっつく女の子たちをやれやれと眺め、会話を交わしながら教室まで向かうのが昨日までの流れだった。


 それが今日は合流地点より大分手前で会ったので真琴は驚いている。近道だと言っていた川の堤防の道。

圭は女の子たちを振り切って、真琴の正面で足を止めた。全速力を出して息が苦しい。


 真琴は、昨日の電話のことはなかったことにしたいのか、いつも通りの顔をしている。だけどよくよく見ると瞳の奥が不安そうに揺れている。


「真琴、話が、あるんだ」

 言うそばから息が切れる。ああ、カッコ悪い。

「……大丈夫か?」

 真琴は息が落ち着くのを待ってくれる。

「話って、もしかして付き合う相手が決まったのか?」

「違う」

 昨日から言おう言おうと思っていた言葉を、想いを今、伝える。


「真琴、俺……」


 言葉につまる。それは走ってきたせいだけではなくて。


 ああ、彼女たちはきっとこんな気持ちだったんだ。俺のことを想って、勇気を振り絞って想いを伝えて。鈍感な俺に、全力で向かってきてくれたんだ。


――だったら、全員を振った今、俺は全力で好きな相手と向き合わなきゃいけない。その責任が、ある。


「俺、告白してきた女の子たちは、全員断った」

 息をのむ真琴。

 この勢いのまま、言わなきゃ。


「昨日、人生イチってくらい考えてわかったよ。俺が好きなのは……真琴、お前だ」

 大きく見開かれた目。

「俺と、付き合ってください!」



 5人の少女たちは堤防の2人を見上げていた。

「あーあ、全員玉砕かぁ」と一花。

「まぁ、真琴くん相手ならしょうがないよね」と双海。

「私たち、圭くんのこと取り合って振り回してたけど、なんだかんだ自分から行くのはいっつも真琴くんのとこだったもん」と美鶴がつぶやくと、

「真琴くんが圭きゅんのこと好きってのは分かってたんだけどね…圭きゅんも、ホントの自分の気持ちに気づいちゃったか」と志緒里が言う。


「しょうがないさ」と唯月は吐き出すように言うと、うーん!と体を伸ばして「ふぅ」と思いを断ち切るように軽く息を着く。

「ま、これであたしたち全員仲良く振られんぼってわけだ。放課後カラオケでウサを晴らしていくか!」

「賛成!……でも唯月先輩、振られんぼって死語っぽくないですか」

「うるさいなぁ!」

 わちゃわちゃと騒ぎながら5人の少女たちは高校に向かって歩き始めた。


 道の向かいから、千春が5人を見ていた。

 最初に振られた彼女には、皆の気持ちが痛いほどわかった。本当なら皆、泣きたいはずだ。同じ人を好きになって振られた連帯感がかろうじて彼女たちを支えている。

 カラオケが終わって1人帰る家路で、自室で、シャワーを浴びながら、それぞれ泣くかもしれない。


 でも振られたって授業もテストも部活もあるし、人生は続く。千春だって泣いて泣いて、圭だけが世界の全てではない、とようやく最近わかるようになった。寂しいけど、圭の幸せと同じくらい自分の幸せを願える日がきっと皆来る。


「…振られんぼのカラオケ大会、あたしも参加しよっかな」

 ぽつりとつぶやき、千春も正門に向かって歩き始めた。



「本当にいいんだな、俺で」

 真琴が言う。今まで見たことがないような真剣な顔。

「真琴が、いいんだ」

 圭は真琴にこれ以上ないというくらい近づき、真琴はその体を抱きしめた。お互いの鼓動が聞こえる。抱きしめあったのなんて初めてなのに、妙になじむ感覚。

 真琴の胸の温もりはどこか懐かしい。


 ああ、僕の想いは真琴に向けられていたんだ。

 強く抱きしめられる。世界が変わる感覚。


 これまでの景色は、きっと君となら、よりあざやかなものになる。


「圭、もう遅刻確定だぞ」

「そう思うなら離してくれよ」

「……やだね」

 降ってきた真琴の声は涙まじりで、顔を上げた圭は頬をこぼれる涙を指でぬぐった。それでまた、2人の距離が近くなる。

 涙目の真琴が圭の顔を優しく両手で包み込んだ。お互いを怖がるような、探るような視線。その奥に、自分を想う確かな気持ちを感じる。


 圭は決意する。


 このフラグだけは、絶対折らない。


 抱きしめた手に力を込める。

 青空の下、2人の唇がふれあった。

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