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まさかの6人目

 千春は、はぁー、とため息をついた。

「圭兄さぁ……なんていうか、5人も6人もありがちなフラグ立ってんのにぜんっ!ぜん!!気づいてないよね!てか誰にでも優しいからフラグ自分から立てに行ってるしそのくせ普段から折りまくってるし!」

「は?フラグ?」

 きょとんとする。

「……まさか、フラグって知らない?」

「いやいや、知ってるよアレだろ、旗だろ」

「…………」

 なんかまずいこと言ったか俺。千春の目が冷たい。

「大事なメールに目立つようにつけたりとか」

「………………」

「ビーチフラッグってのもあるよな!砂浜に立ててよーいドン!で背後に向かって走るヤツ。たまにバラエティ番組でもやってる」

「……………………」

「あとなんかありましたっけ」

「……あとでググれ」

 千春は考え込んでいる。


 そういえば千春も前に「圭兄、好きだよ」なんて言ってきたけど、あれはさすがに5人からの告白とは違うよな。千春のことは好きだけど、血は繋がっていなくても妹は妹だし、そんな風に見れないと言ったら「引っかかったねふふふー!冗談だよ!」ってあっけらかんとしていたし。


「しかし、罪な男だよねぇ」

 なんて千春が言う。やめろよ変なタイミングで。あれはマジだったのか考えちゃうじゃないか。

「いやいや、それにしたって真琴はないだろ」

そこで机の上のケータイが振動して、ビクッとした。


 珍しく、その真琴から電話だ。


「圭、ごめん今いいか、あのさ、今日5人から告白されたって聞いて」

「うん、今千春に相談してて」

「えっ千春ちゃんそこにいるの!?えっとそれはちょっ……また今度にする!切るね!」


 ツーツーツー。


 何なんだ、と思ってよくよく見るとLINEも数件入っていた。千春にも見せる。


「今日例の5人が告白したって聞いたんだけど」

「圭どうすんの」

「誰かと付き合うの?」

「返事いつまでとか約束したん?」

「俺ちょっと話があるんだけど」

「変なやつって思われるかもだけど」

「大事な話をしたいんだ」

「今電話いいかな?」

「おーい」

「圭ー」

「既読つかないけど、とりあえずかけるね」

 そして、通話履歴。


 俺たちはしばらく沈黙した。



「あのさ、圭兄。……アタシの考えが正しければ、このLINE、今から告白しようとしてるように見えるんだけど。さっきの電話も」

「いや、でもさ…男同士だぜ?」


「そうだよ。でも、でもさもう鈍感な圭兄だから言っちゃうけど、佐倉先輩日頃からめちゃくちゃ圭兄のこと切なげに見てるからね!告白してきた5人だってアタシだって……圭兄のこと好きな人は皆勘づくくらいなんだからね!」

 千春は半ば怒るように言って「皆真剣なんだからあとは自分で考えてみなよ鈍感圭兄!」とドアをバーン!と閉めていった。


 俺はベッドに寝転びしばし考えた。

 5年後の桜、俺の隣に5人の誰かが並んでいる姿は想像つかない。


 次に、真琴の隣に俺でない、誰かが並んでいる姿を想像した。それは嫌だ、と瞬時に思った。

 他の人と手をつなぐくらいなら俺がつなぎたいし、桜を見上げて「綺麗」だね、って言ってる真琴の顔を見たい。


 これって、そういうことなのか。

 探してきた答えが、やっと見つかった気がした。



 ケータイを手に取る。真琴から53件もLINEがきてた。トーク画面を開くと、その大半が送信取消されている。


「俺黙っておこうと思ってたんだけど、ずっと前から圭のこと、好きだ」

「ごめん、気持ち悪いかもな」

「でもこれが、俺の本当の気持ちなんだ」

「皆が告白したって聞いて、焦ったんだ。本当は言うつもりなかった」

「振られてもいい、でも5人の他にもここにお前のこと好きなやつがいるって知って欲しくて」

「やっぱダメだ、ごめん、振られてもいいなんて嘘だ。受け入れられないならしょうがないけど……せめてそばにいたい」

「無理でも友達としてでいいから一緒にいたい」

「気持ちまとまってなくてごめん」


 しばらく画面を呆然と見つめた俺は、「フラグ 恋愛」で検索した。

「恋に落ちるきっかけ。相手に惚れてしまうような言動」と出てきた。

「フラグを折る」というのは、フラグが立って順調に進むと思われたものが予想通りに行かない展開になることを指すらしい。


 要は、千春は「皆アピールしてきてたのに俺が気づいてなかった」ことにさっき怒ってた、ということだろう。


「……なんだよそれ」

 そんなん、わかるわけないだろ。自分の想いに鈍感な俺が、人の想いを察することなんて出来るはずがない。


「あ、そうか」

 だから皆告白してきたんだ。5人も……真琴も。言葉にして。

 そう、その想いには真剣に答えなくちゃいけない。


 その日は、明日どうやって5人と、そして真琴と話そうと考えて、ほとんど眠れなかった。

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