第三話ーー美人さんを救おう!
「ガボガボボゴポゴポ…ガボボボ!」
訳、今から行くからな…美人さん!
とカッコ良く叫んでみても水が邪魔で何を言ってるのか分からないと言う残念な結果に終わりました。あと今ので結構空気を吐き出し過ぎて辛い。
そんな弱音を噛み殺し、気絶して沈んでしまっているであろう美人さんを探すために潜水する。っていうか勝手に俺も沈んで行ってる。あれ?これちょっとヤバくない?俺が潜るのでなく、勝手に沈んで行ってるって言うのはちょっとどころか普通に死活問題な気がする。浮けるのだろうか?ということで試しに息も少し苦しいことだし、海面に浮上するために中学三年までやっていた水泳教室で習った立ち泳ぎの応用で海面を目指して水を足だけでかいてみる。
………。
…う、うん。そりゃあもうさすがに小学校に入ったばかりの子が中学生になっちゃうくらいの期間立ち泳ぎやってなかったんだ、そんな簡単にできるわけないよね!いやぁ〜そうだよそうだよ、それに俺は元から立ち泳ぎが苦手だったんだ。じゃあおふざけもこの辺にしてしっかりと両手両足を使って真剣に泳ごうかな?
………………。
よ…よ〜し、おお泳ぐぞぉ〜〜。
「……ガタガタガタガタ…」
ん?違うよ?この音は恐怖で歯が上手く噛み合わないとかではなくでですね。えぇーと、あれですよ。内海の冷たい海水で身体が冷えたから、歯が上手く噛み合わなくなったんです。上手く噛み合わないのは同じでも理由は違うんです!内海の冷たい海水で身体が冷えたから上手く噛み合わなくなったんです!!大事なことだからもう一度言っときました!!!!つ…強がりなんかじゃ、ないんだがらね!?
はい、ごめんなさい。むっさいオッさんのツンデレなんて誰得かも分からんもんを見せてごめんなさい。
さ、さあて気を取り直して良い具合に潜れているので、美人さんを助けに行こうか!待っててください、美人さん!!
◇◇◇◇◇
ピピーピ ピピーピ ピピピー
ナイスバディの美人さんレーダーに反応あり!前方(海底)に美人さんがいる模様!艦隊ヒャクヤーーあ、今頃だけど俺のアバターネームねーーよ、全速前進せよ!ターゲットに敵戦艦が接近中なり!!急ぎ救出せよ!!!!
てことで途中から分かった、沈む方向に対して泳げば泳ぐ速さ倍増設定。たぶん現実世界ではそんなことは無いと思うけどこの世界ではそんなことあったらしいです。ただ今カエル泳ぎという名称でお馴染みの平泳ぎで某世界一の猿顔怪盗みたいに真っ逆さまに泳ぎまくっております。
どうやって俺が美人さんの位置と敵戦艦に例えたモブを察知したかと言うと、アビリティカード"冒険の心得"によって自分を中心とする球状の一定範囲内なら立体的マップを右手を肩の高さで伸ばした辺りに出現させることができるのだ。それによってマップ検索で範囲内にプレイヤーがいるならば青点で、モブがいるようならば赤点で表示するようにしていたので分かったわけだ。
内海の海底にとんでもない速さで落ちて…もとい潜っている今、範囲内にプレイヤーが表示されたならそれは泳ぎアビリティを持っていると言う稀有なプレイヤーしかいないわけで、そんなプレイヤーは俺が知る限り美人さんの一人だけなので先ほどマップに表示された青点は美人さんだと思い至ったわけである。何もストーカースキルを俺が持っているなどと言うことではないのであしからず。いや、まあ…それに似たような性質のスキルなら持っているんですがね。
ヤバいな。第一話で廃塔とはいえ最上階手前のモブをワンパンで倒すと言うけっこうカッコいいことをしていたのに、だんだん俺が変態なのではと言う疑問を持たれだしている気がする。言っておきますが皆さん、この物語の主人公ヒャクヤは今もこの世界に残っている34.203人のプレイヤーたちの中で一番強いプレイヤーは誰?という質問したら2.000票は清く爛れた票が入るくらいには有名かつ強力なプレイヤーなんですよ!皆さんが思っているような変態ではないのでそこのトコよろしくお願いします。ただ俺は少しばかり紳士なだけです!だからと言ってそこだけで俺のことを判断しないでください、たぶんこれからもしかしたら、きっとカッコいいシーンとか出てきますよ。
ん、いいタイミングで水中の雑魚モブが来やがったのでこいつをワンパンで倒して俺の株を再浮上させたいと思います。
アビリティカード"冒険の心得"のパッシブスキル"観察得解"によってモブの名前・HP・属性が判明していく。そこに重複させてアビリティカード"氣士"のアクティブスキル"気流読者"を発動させることによってモブの『気』が何処に集まっているのかを読む。気とは生命体の全てが持っている意識のことで、その気に色と形をあてがったオーラを読みとれば何処が弱点で何処が一番厄介なのかが良く分かるようになるのだ。とはいえ、これは普通モブ専用スキルみたいなものでプレイヤーにやってもあまり意味ないのはご愛嬌である。
その二つのスキルのおかげでモンスターの詳細が分かる。今回俺を襲って来た不幸な生贄の名前はドラグルタートルというらしい。総HPはたかだか870と、廃塔に出てきたレッサーロックシェルドレイクーー総HP2050ーーに比べればカスだ。まあ、魔魚の棲家とまで"英雄賢者アダマンの世界冒険記"に書いていた割には少なからず落胆があるが、廃塔とはいえ最上階手前のモブと比べるのは少し可哀想かも知れない。まあ、ワンパン決定は揺るぎなくなってしまったが。ここまでくると属性とか弱点とか関係ないのだが、とりあえず確認しておくことにしよう。
属性は地と水か、まあまあ予想の範囲内だな。たぶん弱点は甲羅の中だろう…。そんな予想を立てていた俺の目に入ってきた気の流れが指す情報は予想外だった。弱点を覆う黄色いオーラが甲羅に生えた綺麗な水結晶だったのだ。
ドラグルタートルは真正面から見た感じ的にヒレ?から反対側のヒレまでの横幅は2・3メートルくらいあるだろうデカさで水結晶がけっこうくっついた硬そうで少しカッコ良さげな甲羅を背負っている。顔は現実世界のワニ亀みたいな顔だ。
俺から見たらこの顔が出ている甲羅との隙間に黄色いオーラが集まると思っていたのに水結晶に集まっていたのだ。少し、というか結構ビックリである。とりあえずビックリをプレゼントしてくれたお礼に愛剣の錆となる栄誉をプレゼントし返そうと思います。
右手で持っている愛剣を何の気なしに左に振る、ただそれだけの動作で17の節が稼働して鞭状となった愛剣バンジージョーカーがギャリギャリと稼働音を内海の重い闇水に響かせる。連動することで速度を増していく愛剣は、水圧さえも斬り裂いているように思える切っ先を敢えて狙った最も硬い甲羅めがけて突き進む。
ーー捉えたーー
その確信が俺にはあった。だが、現実はその確信を裏切る形で異なった。どうやら俺の愛剣も流石に水圧を斬っていやしなかったご様子で、速度が完全にはできっていなかったのだろう、後はドラグルタートルが俺の予想をまたもや超えてきた速度で泳いだのもあるだろう。結果から言うと当たりさえしなかったです…。
は、恥ずかしい…。総HPカスだとか、敢えて硬いとこ狙ったとか色々俺強いからアピールしときながら当てることすらできないなんて……。あ、あの…そんな使えないクズゴミを見るような目線やめてください。マジで死にたくなってくるんで、できれば生暖かい目で見守ってくださいお願いします。
ふと気づいた。ドラグルタートルが視界から消えていた。あれー?と思っていたら背中に走る重い衝撃、俺の身体が内海で初めて重力に沿った移動以外の動きを見せる。流石に浮上はしなかったが少しだけ前に身体が逸れたのだ。重鎧を着込んでいる俺を水中で移動させるとは……、こいつもしかしたら俺以上に筋力値高いのかしら?これはもう……ドラグルタートルさんマジぱねぇ!
ただ哀しきは、それほどの体当たりをかましたところで君のレベルじゃあ俺の重鎧を越えて俺にダメージを食らわせることができないことだな。あと、体当たりしてきた瞬間に察知することができたから愛剣をしならせて自分の背を思いっきりぶっ叩いたら終わりだったのが少しだけ寂しいです。愛剣の威力を見誤って、それでダメージ食らうし…。辛い………。
き…気を取り直して美人さんを救おう!マップを見る限りじゃあ後数十秒ほどで見えてくるはずだし、まだ青と赤の点は衝突してないけど段々囲んでる赤点増えてきてるしね。できるだけ早く着くためにも急いで平泳ぎだーーー!!
やっと出た主人公の名前。
そんな出方でいいのか主人公www
アビリティカードなどの重要臭溢れる設定は話を進めていく時に書いていこうと思っているのでもうしばらくお待ちください。
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