聖女の役割
「以上が、本日の報告になります」
エジェスから今日の出来事を聞こえたロベルトは、自然とため息をついていた。
「例の聖女はこれと言って怪しい動きをしなかったようだな」
リリン=サフィアを受け入れることにしたロベルトだが、彼女のことを完全に信用することはできていなかった。聖女がいてくれることはオリエント領では助かる人材だ。だが、彼女は帝都の神殿から来た聖女だ。追い出されたと本人は言っていたが、すべての話を鵜呑みすることができない。
神殿のスパイかもしれないという疑いがずっとロベルトの中にある。
「昨日の今日ですから。それに、今は様子見なのではないでしょうか?」
エジェスも疑いを消していない。リリンが何かを目的にオリエン城に入り込んでいると考えて目を光らせているのだ。
「帝都での調査も進めていますが、さすがに結果が出るまでまだまだ時間がかかるでしょう」
オリエント領は帝国の北に位置していて、魔物が侵入するのを防いでいる。帝都との距離もかなりあって、調査のための人を送っても、調査結果が戻ってくるまで時間がかかってしまう。その間は自分たちでリリンの様子を注視する必要があった。
「医務室配属にしましたが、医師たちが目を光らせてくれています」
「今日は大きな怪我人もいなかったし、調合の手伝いをさせただけのようだな」
「聖女としての力を発揮する場面があれば、彼女の力もすぐにわかるでしょう」
魔物と戦う者が多いオリエントでは怪我人が出ることは当たり前のようになっていた。そのうちリリンの聖女としての力も見ることになるだろう。
「今は次の襲撃に備えないといけない」
魔物が南下してくるのに季節は関係ない。数体の魔物が現れることはよくあることだが、団体で一斉に襲ってくることもある。前回は冬前だった。またいつ起こるかわからないので、万全の体制を整えておかなければいけなかった。
リリンのことだけを考えているわけにはいかないのだ。
リリンが聖女としての役割を全うしてくれることが一番ロベルトには必要なことで願いでもあった。
彼女が害とならないことを祈りつつ、ロベルトは残りの仕事を片付けていくことになった。




