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未練があるなんて、思わないで下さい  作者: みん


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5/12

5 プチトマト

結局、その日の夕食は『ラヴィーが疲れているから』という事で、2人はアシュトンの部屋で食べる事になり、私は食堂で1人で食べる事になった。用意されていた料理は、全てアシュトンの好きな物ばかりで、私も好きな物だったけど、いつもと味が違うように感じたのは、気持ちの違いなのか?

アシュトンと2人で食べると、何でも美味しく感じたのに。




「奥様、どうぞ」

「ノエラ、ありがとう」


ノエラが食後に淹れてくれたのは、カモミールとレモングラスのハーブティー。その香りとノエラの気遣いに、荒れていた気持ちが少し落ち着いた。


「あの2人の様子はどう?」

「知りません」

「ノエラ……」


ノエラは、執事長アンセルと侍女長コネリーの娘で、私がブレイザー家に嫁いで来てからずっと私に付いてくれている。いつも、アシュトンではなく、私の味方になってくれていた。だからか、ノエラは私よりも、アシュトンとフラヴィアさんに怒っているようだ。


「奥様は優しすぎますよ!もっと、もっと怒って良いと思います!なんなら、私が代わりにやってきましょうか!?」

「ノエラ、落ち着いて?その気持ちだけで十分よ」


私だって、怒ってないわけじゃない。ただ、記憶を失っているアシュトンを責めたところで、どうしようもない──と思っているだけ。責めたところで、嫌われてしまうだけ。アシュトンの記憶が戻ったら、また私を愛してくれるという望みもある。だから、今はただただ耐えるだけ。


「取り敢えず、明日でも良いから、カロリーヌさんにフラヴィアさんを診てもらうようにお願いしてちょうだい」

「分かりました……」


と言いながら、納得いかない様子のノエラ。


「いくら憎くても、お腹の子には関係無い事よ。子供はどんな子でも大切で、守られるべき存在なのよ」


ー私は守れなかったけどー


「はい、分かりました……申し訳ありません」

「お願いね。いつもありがとう」



そう。子供は何も悪くない。ただ、色々と問題が生じるのは確かで、子供が生まれてくるまでになんとかしなければいけない。

“婚外子”として生まれてくるのと、“嫡出子”として生まれてくるのでは、その子への対応が大きく変わってくる。婚外子として生まれた後、ブレイザー家で養子に迎える事もできる。


フラヴィアさんを、()()()()()だ。


「…………」


私が、フラヴィアさんを第二夫人として迎えられれば簡単なんだろうけど、そう簡単にはいかないだろう。

アシュトンが事故に遭ったのが7ヶ月前。それから2人が関係を持ったのが2、3ヶ月してからだとすれば……出産予定は3月か4月ぐらいになるのかな?それまでの短い時間で、どうするのか早く決めないといけない。


ー私は、冷静にアシュトンと話し合いができるのかしら?ー






******



「カロリーヌさんが戻って来るのが3日後なんだそうです」

「すっかり忘れてたわ……」


ブレイザー伯爵家の主治医のカロリーヌ=ハドル。この国─サザリアン王国ではまだまだ珍しい女医だけど、カロリーヌさんの母国であるスカレティア皇国では珍しくはなく、医療に関してもスカレティア皇国の方が発展している。


そのカロリーヌさんは、毎年この時期になると、この時期にしか咲かない薬草を採りに1週間ほど不在となっていた──という事で、取り敢えず、フラヴィアさんの診察は3日後になり、それまでの間はゆっくりしてもらう事にした。アシュトンも、ずっとフラヴィアさんの傍にいる。


私はというと、執務をこなしてから久し振りに邸の裏庭にある家庭菜園へとやって来た。ここには、アシュトンが苦手なプチトマトを植えてある。


『プチトマトは嫌いだけど、マリレーヌが育てたプチトマトだと思うと食べられるよ』


そう言って、アシュトンは苦手なプチトマトを食べてくれていた。だから、今日の昼食に久し振りに食べてもらおうと取りに来た。


ー執務は、いつからアシュトンにしてもらおうかなぁ?ー


アシュトン自身は元気だから、少しずつでも仕事をしてもらわないといけない。私はあくまでも代行に過ぎないから。当主の意見でなければ納得してくれない事も多々あり、手付かずのものもあるから、少しでも早くアシュトンに引き継がなければならない。


ー今日中にでも、話をしようー


そう思いながら、プチトマトを採ってから邸へと戻った。








()()()()はトマトが嫌いなんです」


昼食のサラダに添えられたプチトマトを見て、そんな事を言ったのはフラヴィアさんだった。勿論、料理長も料理人も使用人達も知っているし、プチトマトを誰が育てた物かも知っている。


「久し振りに帰って来たアシューに、嫌いな物を出すなんて……」

「ラヴィーの気持ちは嬉しいけど、使用人達を責めないでくれ」


アシュトンは、プチトマトの事も忘れてしまっていた。




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