85.カイラの要望
「それはですね・・・F-35Bよりも対空戦闘能力が高い機種ですね」
俺は目をそらしつつカイラの反応を見ながら言った。
「おいおい。こっちのF-35Bってやつで龍種倒せるんだろ?それより強いだって?」
カイラは眉を上げただけで特に言葉を発したりとかはなかった。
が、ガルはしっかりと反応していた。
「えぇ対空戦闘ではこっちの方が強いですね」
「それじゃあ何か?おまえさんは国だけじゃあ飽き足らず龍種も滅ぼす気かい?」
「まさか。考えてませんよ」
「でもなぁ。過剰戦力もいい所だぞ」
「そうですね・・・」
俺は答えた。
「じゃあ、とりあえず帰りましょうか」
俺たちは格納庫を後にする。
B-52や地上配備型のミサイル基地なんかは説明しなかった。
説明したら面倒くさそうだったので。
「こりゃあここにいる以上安全だわな」
ガルが帰る道すがら言ってきた。
「そうですね。もう連れ去られるなんてことはないと思いますよ」
俺は答える。
さすがにこの戦力、レーダーまで完備していて侵入を許すことはないと思いたい。
ただ魔法が未知数なところはあるので何とも言えない所もあるが大丈夫だろう。
そうして島をある程度説明して回り会議室に戻ってきた。
「皆さんにはしばらくの間ゲストルームで過ごしてもらいます。食事は食堂でおねがいしますね」
俺はこれから過ごしていく上での注意点を伝えた。
「では各自解散してください」
話を切り上げると各自自分の部屋となったゲストルームへ向かっていった。
しかしカイラだけはこの場に残っていた。
「どうしたんだ?」
「どうしたんだ?じゃないわよ。あんたこのあと外交会議でもあるんでしょ?」
「どうしてそれを?」
俺はカイラに問うた。
たしかに帝国から「国連の総会を開け」という要望書が届いていたが、それを知っているのは国連職員と俺とスヴェートぐらいのはずである。
「これでもそっちの道には詳しいのよ。どうせギルドにも戻れないでしょうし、一つ提案があるんだけど」
カイラがまっすぐにこちらを見てくる。
「なんだ?」
「あたしたちを国際独立軍に入れてくれないかしら?」
「・・・」
一瞬フリーズしてしまったのは責められることではないだろう。
「は?」
そして振り絞った言葉がたった一字だけだったとしてもだ。
「だから、国際独立軍に入れてくれないかしら。もちろんシルもムルも承諾済みよ」
「なんで?」
「だって、私たち帰るところが無いもの。シルの両親は工房とか自宅があるけれど、私たちギルドメンバーは大陸を転々とするから家は持ってないの。それにギルドもしばらくは荒れるだろうし戻るところが無いのよ」
「ちょっと考えさせてくれ」
俺は言った。