52.不穏な影
サトウと別れた次の日。カイラはシルやムルとギルドに来ていた。
「昨日はサトウと会ってたんでしょー!黒いムニムニはいたの?」
シルがカイラに聞く。
「く、黒いムニムニ?」
「もぉー!カイラったらわからないの?黒いムニムニだよ!最初スペアフィッシュ狩った時に船にいたじゃん!」
「あの小隊長さんのことじゃないかしら」
ムルが助け舟を出す。
「そーそー」
「あぁ使い魔の事ね。いなかったわ。サトウ一人だったわよ」
答えた直後「あ」とカイラが思い出したように再び口を開いた。
「そういえば船でリーウェンの港に来てたから船の中には居たんじゃないかな」
「えぇー!行けばよかったぁ」
「来ても後半あんたは面白くないわよ」
シルは半目でカイラを見る。
カイラはシルの性格上じっとしていることが少ないので、交渉の場には向かないと考えてシルを連れていかなかったのである。
「船で待ってたのに」
「丸一日も小隊長さんに張り付く気?」
「だめかなぁ」
「少なくとも歓迎はされないと思うわよ」
「えぇ嫌われてたらやだな、、、」
シルは下を向いてぼそっと言った。
「さぁ、いい感じの依頼はないか探すわよ!」
どんよりとした空気を変えるためかカイラは声を張った。
「いい依頼をお探しかな?」
カイラの後ろから男と思われる声がかけられた。
カイラが振り向くとギルド内なのに深々とフードをかぶり口元しか見えない男がいた。
「だれよ、あんた」
カイラは警戒しつつ聞いた。
「私の名前は、、、そうだなダンケとでも名乗っておこうか」
「それで?そのダンケさんとやらが私たちに何用よ」
「いやなに、難しい話をしに来たわけではない。君たちに緊急指名依頼の受注をお願いしたくてね」
「緊急なの要件なの?」
「いや、緊急の要件ではなく君らにしか達成できない依頼だ」
「悪いけど絶対に受注するとは言わないわよ」
カイラは男を睨め付けながら言った。
「まぁまぁ。話だけでも聞いてくれ。君らはサトウという男を知っているね?」
「それが?」
「そんなに殺気を向けないで落ち着いてくれ聞いてくれ。それにここではたくさんの人に聞かれてしまう。ちょっと近くの喫茶店で話でもどうだ?」
「悪いけどここで話せないような要件は聞けないわ」
カイラは男を見てそう言った。
「喫茶店代はこっちで持つし喫茶店にも人はいる。立ち話では何だし喫茶店へ行こうじゃないか。君らにとっても悪い話じゃないだろう。それに何を警戒しているのかは知らんがBランクのギルドメンバー3人に男一人が勝てるわけあるまい?」
カイラは男の方を見た後シルとムルを見る。
シルは短剣に手をかけている。ムルはカイラの方を見た後にっこり微笑んだ。
「わかったわ。ただうちの分の喫茶店代はこちらで持つわ。見ず知らずに人におごられる理由はないもの」
「わかった。では喫茶店へ案内しよう」
男はカイラ達三人を連れてギルドを後にした。
カイラ達は男の後をついて行っていたので表情は見えていなかったがフードの下の男の口角は上がっていた。




