試験②
☆
少年少女の年齢はクロエと同じか。
少年と少女の髪の色は同じで、顔立ちもよく似ていた。
二人とも紫色の髪をしているから転生者だ。
そしてなぜか不機嫌な表情をしている。
どちらもやや幼いが端正な分類に入る顔立ちで、切れ長の目をしていた。
二人はお互いを見ようとはしてない。
それなのに二人は手をつないでいた。
これはどういう状況だ?
クロエはフレデリックに視線を向けた。
「二人は俺の秘蔵っ子でその実力はSクラスにも負けない━━と言いたいが、まだ力は未発達だからな。太刀打ちできない」
「おい、フレデリック。俺たちをなめるなよ?」
「そうよ、フレデリックさん。アタシたちは最強。それを実証積みでしょう?」
双子は軽くフレデリックを睨んだ。
フレデリックは苦笑しつつ、
「個人としてはどうだ?」
「それを言われたら自信はない」
「悔しいけど」
双子は唇を噛んで俯いた。
「この二人も紹介する。ソラとソアラだ。わけあってファミリーネームはあかせないが」
「俺はクロエ。嫌々ながらここに通うことになった」
すると双子はばっ、とクロエを見た。
少年━━ソラはクロエの手を取り、
「何だ、お前もかよ?」
「ん?」
「それはちょっとアタシたちもなの」
少女━━ソアラは遠い眼差しをして、
「無理やりにね。拉致同然にここに連れられて、そのまま」
「人聞きの悪いことを。二人が寝ていた時にこっそりはこんできたことの何が悪い?」
「「それは犯罪だ!」」
ソラとソアラは同時に叫んだ。
フレデリックを睨む。
「少しは自覚しろよ!」
「俺は二人の両親に頼まれて仕方なくだな」
「どうだか」
「あのまま家に閉じこもっていても力の制御ができずに自滅していたぞ」
「いつかは出来ていた!」
「そのいつかは十数年先かもしれないぞ?」
「「・・・・・・」」
双子は反論せずにそっぽを向いた。
自覚はしているのだろう、今の自分たちに力がないことを。
「今日から二人にはこのギルドに属してもらう。その間、俺が引率する」
「必要ない」
「アタシたちは出来る子」
「エミルから見て二人はどうだ?」
フレデリックが視線を投げるとエミルは困ったように、
「そうですねー。力的にソロには向かないでしょうね。二人はセットで一つ、でしょうから。引率の方がサポートする形を取れば覚醒もはやいでしょうし」
エミルは「ふむ」と頷いてから、
「クロエさんもどうです?三人と同行しては。何かと勉強になりますし」
「一つ聞きたいんだが?」
「何ですか?」
「アンタにではなく、ソラとソアラにだ」
「何?」
答えたのはソアラだ。
「二人の力って、何だ?」
二人が二人一緒に行動するのが常なら、そうする必要があるのだろう。
ソロで登録するにしろ、二人と行動を共にするにしろ、どういったものか知っておきたい。
まあ、初対面の相手にバカ正直に答えるとは思えないが━━
「共鳴増幅魔術」
ソラは答えてニヤリと笑った。
☆
「このギルドに属せるか否かは、試験を受けてもらいます」
エミルは胸を張るように言った。
「アンタにその権限はあるのか?」
「正式に決めるのはギルマス様ですけど、一部に関しては私に委任されてます」
「別の誰かはいないのか?アンタは信用できん」
「そんな~。クロエさん。私をお捨てになるのですか~?」
「足にしがみつくな」
「クロエさんは鬼畜ですね~」
泣き真似をするエミルを冷めたような眼差しがい抜いた。
それに気づいたエミルは何事もなかった顔をして、
「ソラさんとソアラさんはともかく、クロエさんには是が非でも試験を受けてもらいます。これは強制です」
「あぁ。それは別に構わないが」
「嫌がらないんですか?」
「試験なしにしてくれればいいんだがそれはできないんだろう?」
「もちろんです。ここでは実力がモノを言いますからね。学生さんだろうと甘えさせません」
「具体的な試験内容って何だ?俺としてはすぐに終われるのが好ましいが」
「今日すぐには無理ですね。ちゃんと準備をしていただけないと」
「初っぱなから命にかかわるのか?」
「まあ、簡単な魔物退治ですよ。ここに属している方たちも何人か向かってもらいました。なぜかまだ報告がないんですよね。ですからクロエさんには現場報告と、場合によっては魔物のほうを」
「はっきり聞くが。これは俺は目立たない試験だよな?」
「どういうことですか?」
エミルはクロエの真情を探るような眼差しをした。
「危険度は限りなく低いよな?多少危険度があがったとしても」
「はい。ギルドランクCが数人とギルドランクAの方が二人、います。クロエさんがやることなんて些細なことですよ」
「それを聞いても不安しかないが。いまだに依頼未達成が気になる」
「それは私もですが、今は実力がある方たちは出払っていまして。クロエさん、別の試験でも構いませんが?」
「いや。ランクAの奴らに興味ある。そいつらの力をこの目で見るいい機会だな」
「それでは仮ギルドカードをお渡ししますね。クロエさんが働いたぶんだけポイントもつくようにしますから」
「分かった。で、退治する魔物と数は?」
クロエが聞くと何が楽しいのか、エミルは笑いながら、
「魔物の名前は【火喰い】。知能が低い火炎蜥蜴と同じ種類で、数はざっと千」
「「「は?」」」」
クロエ以外が間抜けな声をもらした。




