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SO WHAT ?! 1st.season  作者: N.river
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case5# GUN & SHOW -5/7

 真意はどうあれ、こうして意気投合しているところを目撃されたせいだ。その後の会話は思いがけず弾んでいる。

 用意した菓子がいくらか消えて監督は緑茶のお代わりを求め、それは飲み干そうかという舞台挨拶十分前だった。司会者を引き連れ水谷は控室へ戻ってくる。

 淡いピンクのスーツをまとった女性司会者はさすがプロというべきか、著名人を前にしたところでそつがなかった。ここでも日本語でゼンブキイテクダサイ、と両手を広げる監督は茶目っ気たっぷりで、眺めながら百々はドア脇で見守る水谷へ歩み寄っている。

「支配人、映写室の方は」

「回し始めるまでとフィルムの交換にはわたしもつき添いますが、後は田所君に任せます」

 思わず百々は眉を跳ね上げていた。

「ブラック監督をお見送りした後、代わりにカウンターへ入ってもらうことになりますがいいですか?」

 確かめる水谷には、うなずき返すほかないだろう。ならあのホットミルクは滲んで返され、引き締めなおした水谷はブラック監督へ顔を上げる。

「それではお時間となりましたので、移動をお願いします」

 全員が控え室を後にしたなら、予定通り百々はドアを施錠していた。一行を追い越し、先回りで鉄扉を押し開けロビーへ抜け出す。とたん上がる歓声はもう暴力の域だ。宙で無数と携帯電話のカメラは揺れ、その隙間に好奇の目が無数とのぞく。圧力に思わず立ちすくみ、「押さないでください」と声を張る仲間に我を取り戻していた。百々も急ぎその傍らにつく。

「コレ、すごすぎっ」 

「アイドル、アイドル!」

 歓声のボルテージは、そのときさらに上がっていた。

 ブラック監督だ。

 水谷の後につき、ついにロビーへ姿を現す。人だかりの勢いは飛びかからんばかりと勢いを増し、押さえる百々の前傾姿勢に拍車はかかった。

「これより先はっ、入れまっ、すぇーんっ!」

 だが到着した時もそうだったように、前にしたところで監督は平然としたものだ。むしろ朗らかと手さえ振りながら悠々、シアターを奥へと向かってゆく。その姿が見えなくなればやっとで人だかりの圧力も薄れていた。確認して離脱し、百々は監督の後を追う。シアターA、前方、防音扉の傍らで待機する監督らの傍らについた。

 すでに水谷と司会者の姿はそこにない。腕時計の指す時刻からしても、舞台挨拶はついに始まったようだった。

 そのとおりと閉じられていた防音扉が開かれる。

 どよめきは一気に奥から噴き出していた。

「……盛大な拍手でお迎え下さい!」

 司会者の声は促し、扉を押さえて水谷も笑みをたたえブラック監督を招き入れる。

 最初一歩を踏み出す前に監督は、これからを示し合わせて通訳へ視線を投げていた。その目を、間近に反り立つスクリーンへと持ち上げ、人差し指を突き付けた。

 十二時二十分。

「れでぃ……、あぁー、くしょんっ!」

 ショーの幕は今まさに上がる。


 護送車を視界に据えつつ回り込む。

 脱出にまごついているのか運転席のドアは開いたきり、まだ誰も出て来ない。

 目だし帽たちはその車体を盾にすべく逆方向、向こう側へと駆けこんでいた。

 阻んでレフは立ち止まる。マガジンには十一発。落とした腰で引き金を絞った。遮蔽物のない現状に二発ずつなどとしおらしいことは言っておれない。緩めることなく絞り続けた。セミオートマチックと銃は小気味よく弾を吐き、目だし帽たちは

護送車の影で縮こまる。

 そこでようやく運転席から制服は転がり出ていた。押し出しハートも現れたなら、タクシーの運転手を拾って離れろ、と怒鳴り声を辺りに響かせる。

 それきりハートも護送車へ背を貼り付けた。車体後方へと移動してゆく。ストラヴィンスキーが走らせるワゴンはそんな護送車とシルバーバンの間に鼻を突っ込むと、車体も斜めとブレーキを踏み止まっていた。接近を拒まれ急停止したシルバーバンは、互いの距離を取りなおすべく、直線上を猛烈な勢いでバックしている。ずいぶん距離をおいたところでガクリ、止まった。

 と、ハートが視線をレフへ投げた。

 そこで弾切れとレフの手の中、銃のスライドも開き切る。

 引き継ぎハートが回り込んだ護送車の後部から銃口をのぞかせ、目だし帽へ牽制を放った。

 交差点を囲って次々と、パトカーは交差点へと駆けつけている。機動隊のグレーバスも二台、「るるロード」前で中から制服たちを吐き出していた。散開すると飛び込んできたシルバーバンのせいで起きた玉突き事故の処理に、一般市民の隔離を進めている。

 カラになったマガジンを捨て、レフは次を押し込んだ。ワゴンから這い出してくるストラヴィンスキーの姿が目にとまったなら、マイクへ素早く口を開く。

「ワゴンまで走るぞ」

 目測で二十メートル弱か。

 なら全弾撃ち尽くしたハートの返事はこうだ。

「でかいポイントマンが食らって泣くなッ」

 間にも弾を装填しなおしたハートの動きは早く、スタートを告げて目だし帽へ再び引き金を引く。

 合図にレフは駆け出した。人の目は動くモノを追う習性があり、だからこそ目だし帽の視界を横切る。その足先でアスファルトの粉は吹き上がり、間近を弾はかすめて飛んだ。だからこそ阻止するハートの狙いに狂いこそない。

「お疲れ様ですっ」

 勢いのままワゴンへ体当たったレフへ、投げたのはストラヴィンスキーだ。だがその目がシルバーバンから逸らさることはない。

「ジープ三人、制圧ッ」

 知らせたのはハートだ。

「じゃ、くれぐれもこっちだってお願いしますよ」

 なるほど。見ればちょうどとシルバーバンのドアは左右、押し開けられている。目だし帽姿の男は二人、携えた銃器さえおそろいと中から現れていた。

 刹那、ワゴンのボンネットへ、ストラヴィンスキーがと腹ばいと身を投げ出す。絞る引き金に遠慮はなく、目だし帽たちも驚きドアへ身を縮めた。追い込んでさらに撃ち込み、元の位置へとストラヴィンスキーは身をひるがえす。

「中にまだ二人。フロントガラス割れて見えないんで、出てきますよっ」

「誰か回収に来いッ」

 声は、警官を呼ぶハートのものだ。

 などと注意がそれたその時だった。ワゴンのドアガラスが吹き飛ぶ。シルバーバンからの反撃だ。銃弾は右へ左へ車体をなめた。

「ちょっ……」

 ボディに穴あく音を聞きながら身を縮める。

 止んだところで、レフは散らばるガラスを踏みつけた。

「右、もらうぞッ」

 身を跳ね上げれば追いかけストラヴィンスキーも、左をカバーする。

 大盤振る舞いした後の、運転席側の目だし帽は予測が甘い。仕留めてストラヴィンスキーが元の位置へ身を沈めた。しかしながらマガジン交換で伏せたのか、助手席側に目だし帽の姿はない。ただストラヴィンスキーの予告通り、後部座席から三人目は抜け出てきた。

 レフは狙いを切り替える。四発、放った。制圧するには及ばず、姿のなかった助手席側の目だし帽が、屈んでいたドアの影から飛び出して行くのを目にする。

「クソッ」

 聞きつけストラヴィンスキーが前線復帰した。

 任せてレフはまだ立つ三人目へ引き金を絞りなおす。捻じれるように倒れたところで肩をひるがえした。

「ハートッ、そっちへ一人、行ったぞッ」

 追いかけストラヴィンスキーもボンネットを回り込んでゆくが、こうも動く的を射るのは至難の業だ。

 と、それは忘れていたような四人目だった。折り曲げていた体を伸ばし、運転席の後部からのそり、出てくる。

 気づきレフは銃口を突き付けなおした。

 目を、これでもかと見開く。

 なぜなら四人目の動作が重たげだった理由はこうだ。

「ルチノーイ・プラチヴァターンカヴィイ・グラナタミョートッ?」

 口走ったそれはロシア語だ。ゆえに横目で捉えたストラヴィンスキーが、たった三語で訳してみせる。

「R、P、G!」

 全長一メートル足らず。重量およそ七キロの対戦車砲はワゴンを睨んだ。

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