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新生デオンの暇仕事  作者: kazfel
ハプスブルクの黄昏
92/185

青年

 1906年4月初め。

「英国のメイド服ってすごくエモいよね!」

 カフェの開店前、ルカが興奮して黒綿のサテンの服とスカートに、白い薄い生地のエプロンを渡した。

 レースのエプロンは後ろまで全体を覆っていて、下の黒服が透けて見えるほど薄く、エレガントなひだ模様になっていた。

 リアは幅広の肩ひもでエプロンを留め、ひもで後ろで☓にしてボタンを留めた。

 黒服は袖口が白で腕周りがだぶついていた。

「やっぱりリアはこういうの合う!」

 尾を大きく振り上げたルカが大喜びした。

「際ですか……」

 この頃になると没落した中小貴族出身者の市民や、貴族に憧れた中産階級の市民たちがカフェに訪れていた。

 また女性が自由にカフェに出入りするようにもなったのだ。


 休日にはルカから緑色のリネンのスーツ、細いズボンと白シャツが渡された。

「デオンがますますカッコよくなる服、新調したから着て」

 言われるまま着込むとキリルとユーリも青色のスーツセットだった。

 ペシュト側のデパートを目的もなくマシロ一家と彷徨いていた。

 一家は飽きると市電に乗って、菓子店「ジェルボー」の大型店舗でバタークリームケーキを買った。

 腹が減ったら市の森公園隣のレストラン・グンデルでグルメに溺れた。

 夜になれば街道に電灯がついた。

「マシロはウィーンをうろうろしたいぜぃ」

「お前は私の頭に乗るだけだろうに……」


 5月ころに白狼の頭上のマシロとデオンはウィーンへ出掛けた。ウィーンも市電が通るようになってエルトリアと変わらず、オペラハウス、美術館、国会議事堂が建ち並んでいた。

 だか旧市街を環状に囲む大型建物群はウィーンらしく壮観であった。

 狭い路地の教会の前でスケッチをしている青年がいた。

「なぁ、マシロを描いてくれ〜」

 利発そうな青年は狼の頭にから声がしたのだからひどく驚いた。

「こんなでぶトカゲより、私を描いてくれよ」

 デオンは艶めかしいポーズをとってみた。

「何なんですかあなたは?」

「マシロは通りすがりのプリチーなトカゲだぜぃ」

 マシロは白狼の頭上で立ち上がった。

「犬なら描きますよ」

 若者は白狼を素描した。出来上がるとマシロが怒った。

「マシロがいないじゃないかー。ぷんぷん!」

「変なトカゲより私をモデルにしたらどうだ」

 デオンは迫った。

「人物画は苦手なのでいいです」

 青年に断られた。

「画家を目指しているなら、人物画くらい描けないとだめだぞ」

「すみません。急用があるので」

 青年は逃げ出した。

「お前みたいなきれいどころも描かないとは、駄目な奴だぜぃ」

 マシロはため息をついてから眠った。


 夕方、街角で人だかりができていて誰かが街頭演説をしていた。

1神(アインゴッド)1皇帝(アインカイザー)1民族(アインフォルク)

 髭面の男はドイツ民族の優位性を説いてから最後にこう締めた。

 群衆は拍手をして歓声をあげている。

「ああいう乱暴な政治演説ができるようになったんだから、ウィーンは自由になったものだ」

 デオンはウィーン革命時の素朴な演説を想起した。

 デオンは麒麟を呼んで白狼を連れてエルトリアへ帰った。


 青年は1907年7月、110数名受験応募者と共に、ウィーン市シラー広場の美術アカデミーで試験を受けた。

 実技の第1次では受かり、課題の第2次試験で青年は持参した作品を提出したが、肖像画と静物画が少なすぎたため、審査員から合格点を得られなかった。

 同時期にエゴン・シーレがアカデミーを合格して16歳で入学していたが、グスタフ・クリムトの弟子になってからは1909年にアカデミーを退学した。

 シーレは1918年にスペイン風邪で死亡した。


 後に建築学の勉強のためウィーンに来た19歳の青年は、ホーフブルク博物館のハプスブルク家宝物館で、ガラス張りの陳列棚の古い槍の穂先を凝視していた。

プロットが尽きたから休みます

PS4で作業したり戦争映画みたり再開はかなり後

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