表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新生デオンの暇仕事  作者: kazfel
ハプスブルクの黄昏
88/185

凶行

 1879年年末、アンドラーシが外相を解任された。後にエドゥアルト・ターフェがなった。

 エルトリア重視からスラブ民族尊重へと変わっていった。

 アウスグライヒはマジャール人が優先されていることから、チェコ人は常に不満であった。


 1880年1月にはカフェ「テレーゼ」の客たちが文句を言い出した。

「皇帝は急にチェコ優遇へ変わっていきやがった!」

「首相がボヘミア出身者だと? ふざけるな!」

(これは乗馬に凝った皇妃が、アンドラーシを捨てたのかな? それも世の常……)

 リアはしみじみ思い始めた。


 1880年。21歳のルドルフは16歳のベルギー王女シュテファニーとブリュッセルで婚約の儀式を行った。

 シシィは、艶のないブロンドの髪で大して美しくないやや太めの少女に幻滅していた。

 一同が宮廷に入ったがエリザベートの華やかな姿がまたも圧倒し、花嫁がかすんでしまった。


 1883年9月2日。シュテファニーはエリザベートを出産した。

 ルドルフは青年期から連邦国家構想を抱き、変革を求める革新派のユダヤ人ゼップスとエルトリアの過激派とも親交を深めていた。

 汽車や自動車と電話を決して用いない。シェーンブルン宮の照明は燭台のみの旧世代の皇帝とは、決してわかり合えず、政治的対立が続いていた。

 

 フランツ・ヨーゼフとて、ドイツ帝国との融合を願う者、スラブ民族の地位の高揚を目指す者、マジャール人の権利をさらに高め、完全独立を唱える者たちを知らない訳ではない。

 ハプスブルク王家を中心とした貴族社会の中で諸民族の協調を求めるのが皇帝の趣旨だった。


 ウィーンは1882年頃から政党の活動が活発化してきた。93年にウィーンの法律家カール・ルエーガーに率いられたキリスト教社会党は、金融界を支配するユダヤ人への反発を掲げ、貧しい市民と下層階級の支持を得た。

 ヴィクトーア・アードラーの社会民主党は、マルクス主義に基づき工場労働者の生活向上を目指した。

 ゲオルク・フォン・シェーネラーのドイツ国民党は90年に結成した。

 反ユダヤとハプスブルク帝国の解体、オーストリアをドイツ帝国に合併し、分離した非ドイツ人地域はドイツ帝国の属州とする。戦争こそが新たな国家形成への最善の基礎とも述べた。

 96年にはテオドール・ヘルツルが「ユダヤ人国家」のパンフレットを発表してユダヤ人の国家を建設する必要を説いた。

 97年にはバーゼルで第一回シオニスト会議を開いた。

 

 閑話休題。ルドルフは結婚後、妻に失望して高級娼婦ミッツイ・カスパルと交際していた。

 30歳になったルドルフは男爵令嬢マリー・ヴェッツェラと恋に落ちた。

 フランツ・ヨーゼフは宮廷を誹謗(ひぼう)する記事で偽名で新聞に書くルドルフを政治の場から遠ざけていた。

 失望したルドルフはアルコールに溺れ、淋病にかかったことからモルヒネを常用していた。

 1889年1月26日、ルドルフが主張する反ドイツ、親ロシア、フランス同盟構想が実名で新聞で報道されると「失望した。そなたは私の後継者にふさわしくない!」と皇帝に侮辱された。


 1月30日のマイヤーリングの悲劇はカフェ「テレーゼ」にも伝わっていた。

「皇太子がマリー何がしと情死だって」

「皇太子は我々寄りだから惜しいなぁ……」

「皇帝が登極を認めていなかったから、復讐で騒がせたのかなぁ」

「弟と孫を早くから亡くしてヨーゼフも大変ねぇ」

「確かに周りの不幸が続くねぇ……」

 リアと客たちは長く沈黙していた。


 ルドルフはマリー・ヴェッツェラとマイヤーリングの狩猟用城館で拳銃で心中した。

 カトリックは自殺を認めないから葬儀ができないため、宮廷は政治的な他殺だと報じた。

 しかし新聞では情死として全世界に広まっていった。


 1889年終わりにシシィは自分の衣裳、日傘、靴、ハンカチ、バックなど明るい色合いの物すべてと装飾品、装身具をギーゼラとヴァレリーに譲り渡した。

 エリザベートの持ち物は喪服とパールグレーのドレスで、1890年7月末のヴァレリーの結婚式と、ヴァレリーの子供の洗礼式時に着用していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ