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新生デオンの暇仕事  作者: kazfel
ハプスブルクの黄昏
89/185

千年祭

 1896年5月。ヨーロッパ大陸初の地下鉄が開通した頃から、エルトリア建国千年を祝う千年祭が行われた。

 5月2日にはオペラで祝賀公演が上映され、3日にマーチャーシュ教会で大ミサが催され、ブダペシュトがライトアップされた。

 ゲレールト丘で花火が打ち上げられていた。

 4日はペシュトの工芸展示館の開会式、5日はブダ王宮下の広場で軍隊の閲兵式が行われ、夜に王宮で祝賀会が開かれ、デオンとマシロ1族が招かれた。

 

 貴族たちが居並ぶ華やかな式が終わるとデオンは老フランツの隣に座る喪服の女性を見かけた。

 黒いヴェールを被り、黒い扇子の陰に顔を隠していたエリザベートに、デオンは話しかけた。

「あなたは憎らしい位、変わらないのね」

「また旅をしていたのかい?」

 デオンは苦笑いして尋ねた。

「ギリシャのコルフ島にヨーロッパ中をさまよっていましたわ」

 シシィは扇子で口元とかのしわを隠していた。目元は幽鬼のように虚ろだった。

「デオン殿は金を取り立てた時からもちっとも変わらないな」

 頭頂部が剥げ上がり白髪と白もみあげと口ヒゲの皇帝は、白マントに赤礼服で威厳あるように見えた。

「そういう得意体質だからな」

「もう寝ようぜぃ」

 頭上のマシロが口を挟んだ。

「じゃ、元気で」

 夫妻と別れた後、ウィーンの王宮へ行かないのだから皇帝らと話すのはこれが最後だろう。

 なんとなくデオンはそう感じていた。


 翌日に市の森公園で乱立してあるパビリオンを回った。

 壁掛け式電話機の展示や電話でニュースが聴けるという展示館もあった。

 電話機は木製の縦長の箱に目のようなベルが2つ。

 左側下に黒いラッパ状のもの。右脇にハンドル。本体中央にもラッパ状のものがあった。

「マシロ良くわからん」

「その箱でニュースを聴く? 新聞の方がいいな」

 デオンは腕を組んでいた。

「あっち来て!」

 ルカとカムナギがデオンの腕を引っ張った。

 スクリーンに動く画像が映る映画というものでニュースを伝える出し物らしい。

「おおー」

「こっちの方が面白いなぁ」

 デオンは長生きすると面白いものに出会えて最高だと、しみじみ感じた。

「あっちの気球に乗ろうよ」

 キリルはデオンを気球乗り場まで連れ出した。

「あれは浮かぶだけなのか? なら騎獣で飛んだ方が……」

「私も乗りたい!」

 ルカも子供のように騒ぐので並ぶことになった。

 彼らと遊んでいるうちに夜闇になったが、ひときわ明るい電灯で外を照らしていた。

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