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新生デオンの暇仕事  作者: kazfel
ハプスブルクの黄昏
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絶望

 9月初旬。シシィはデオンを女官として着飾って共にデメルで菓子を買いに出かけた。

「次はプラーターに出かけましょうよ」

「あそこは出歩くと群衆が殺到するからだめよ。シェーンブルン宮の乗馬ならいいわ」

 美し過ぎるシシィは市民を惑わせてしまうのだ。

 翌日の昼、シシィは細くてエレガントなボディラインの乗馬服で、長い髪はいくつもの房にして頭の上でまとめられていた。

 小さなシルクハットを被り、横座りで馬を大疾走させていた。

 シェーンブルン宮裏の林へ駆け抜けた。

「あんな乗馬法あるか?」

 白ズボンと濃い緑の乗馬服のデオンは唖然とした。

「置いてかれたぜぃ」

 デオン頭上のサラマンダーマシロがぼやいた。

 デオンは麒麟を飛ばせて行くとシシィは林を高速でぬっていた。

「あなた、飛んでずるいわよ」

「そんな速いの付き合えるか!」

 不意にイノシシが飛び出したが、シシィの馬が器用に避け、下に降りた麒麟に衝突してデオンは落馬した。

 石に当たり流血したが、直に治った。

「散々だぜぃ」

 マシロはデオンの腹に飛び乗って避難した。


 別の日にはシェーンブルン庭園でデオンはシシィと散歩した。

 いつもの女官姿だが、シシィは自分よりも美しい女性といるのが史上の喜びで、美女アルバム用のデオンの写真も撮影してもらった。

「のんびりと木々を眺めるのも今のうちね」

「これから忙しくなりそう?」

「ええ、仕上げがあるもの」

「そうか。エルトリアの行方が楽しみだな」

 マロニエの木々の通りをゆったりと散策していった。

 

 10月初旬、シャルロッテはよろめきながら、ローマの教皇にメキシコ帝国への援助を願い出た。

 教皇ピウス9世の前にひれ伏したが、誰にも相手されずシャルロッテは正気を失った。

 彼女は精神科医と付添いの2人の手でローマからトリエステ近郊のミラマーレ城館に移された。


 エリザベートは秋にはマックス・ファルクというエルトリア人を側近に加えていた。

 ファルクはユダヤ人ジャーナリストでアンドラーシの近い友人だ。

 シシィはファルクの仲介でリベラルな政治家で文筆家のヨーゼフ・エートヴェシュとつながりができた。

 アンドラーシはウィーンとブダ間を行き来して、それぞれの会談に参加してシシィの女官イーダを通して、皇妃との連絡が続いていた。

 シシィとファルクとの毎日の対話も続き、エートヴェシュからもファルク宛の書簡が届いた。


 宮廷内ではエルトリア人の要求と皇妃を通してその要求を貫こうとするエルトリアのやり方に、激しい議論と怒りの声が響き渡った。

 反エルトリアが多い宮廷人は、ゾフィー大公妃とアルブレヒト大公がボヘミアと組んでエルトリアを抑える案が支持されていた。


 エルトリア統治総督陸軍元帥のアルブレヒトは皇帝より13歳年上の大伯父で、スラブ人に支配権を与えるべきで親ボヘミアのウィーン宮廷派が納得できると、シシィを牽制した。


 ウィーンのボイスト外相は、アンドラーシとデアークはマジャール人の完全独立を目指す革命家ラーヨシュ・コッシュートとは違うと主張した。

「2人はハプスブルク王朝と共存を望んでいたから何ら問題ありません。オーストリアのドイツ人とエルトリアのマジャール人の協力体制は不可欠なのです」

 皇帝は同じカトリック、ウィーンから近いエルトリアとの協調を選んだ。

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