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新生デオンの暇仕事  作者: kazfel
ハプスブルクの黄昏
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ルドルフ

 8月21日。ルドルフが6歳になると子供部屋を離れて男性ばかりの所帯で生活することになった。

 5歳で4カ国(ドイツ、エルトリア、チェコ、フランス)語を話せる麒麟児だった。

 フランツ・ヨーゼフは皇太子の帝王教育をレオポルト・ゴンドルクール伯爵に任せた。

 しかし野外での夜間演習など体をいじめるほどの訓練を課していた。

 

 10月にデオンがシェーンブルン宮殿の庭に来ると皇太子がオベリスクの噴水で泳がされていた。

 ルドルフは寒さで震えていた。

「何でこんなところで泳いでいるの?」 

「貴公はトカゲ使いか。これは冷水浴だ。鍛錬の最中なのだ」

「じゃ、マシロ放していいかい?」

「そんなトカゲ好きにしろ」

 

 バロック様式の公園に水貯まりの後ろに2つの洞窟がある人工岩の噴水だ。

 上部の金ワシがいるオベリスク噴水上に貯水池があった。

 そこから人工岩の下の方へ流れていた。

 マシロはゴーゴンの口から出ている滝水から入った。湯気が出て、温泉になった。

「こらぁ、余計なことをするな!」

「だってマシロはサラマンダーだから」

「でぶトカゲ持って消え失せろ!」

 デオンは仕方なく退散した。


 11月30日、フランツ・ヨーゼフはデンマーク戦争から帰還した兵士たちの閲兵式を挙行した。

 エリザベートは再び病院で看護にあたった。


 ルドルフはゴンドルクール伯爵の過酷な訓練のあと、発熱や扁桃炎(へんとうえん)や胃カタルを起こしていた。

「ゾフィーからゴンドルクールの手荒な訓練をやめさせてくれないか?」

 デオンは大公妃に願い出た。

「あのくらい将校養成の幼年学校では普通ですよ。あの子の体が弱すぎるのです」

「ライヒシュタットの事を忘れたのか?」

「ルドルフはまだ結核にかかっていませんよ!」

 デオンは(らち)が明かないので皇帝の執務室へ押しかけた。

「あんたは息子を殺そうとしているのか?」

「私はただ、虚弱体質を治すためより強く鍛えてくれるよう頼んだだけだ」

「だからヒゲは駄目だぜぃ」

 マシロすら見捨てられ、1865年春にデオンらは去った。

 夏にゴンドルクールの臣下が勇気を出してシシィに訴えでた。


 8月21日。

「ゴンドルクール伯爵を解任しないのなら、私は本気でここを出ていきます。子供たちの養育の権限を成人するまで私に一任してください。そして私の行動も私自身で決められるよう、ご配慮をお願いいたします。私がどこに旅をしてどこに滞在するか、使用人を誰にするか。自分のことは自分で決めます」

 シシィが皇帝にルドルフの教育方針についても苦情を言ったのでゴンドルクール伯爵は解任された。

 要求が通るとシシィはルドルフの体を新しく侍医になったヴィダーホーファー医師に診せた。

 ルドルフの教育担当者を直訴したラトゥール大佐に一任した。

 そしてゾフィー大公妃の子分の女官や廷臣たちもクビにして、側近をエルトリア人に固めた。

 ラトゥール大佐は後に軍人や僧侶ではなく、市民の知識人ばかり集めた。

 ルドルフの教育陣を宮廷の中でさらに異質の存在とした。

 ルドルフは成長すると1848年革命の民主主義的な理念を理解し、熱心な自由主義者となっていく。


 シシィはクリスマス前には故郷のミュンヘンで侍医フィッシャー博士の診察を受けるため、ウィーンを発った。

「また変なときに去っていくのね。せっかく家族揃ってブダ城でクリスマスを過ごしたかったのに」

 ゾフィーはぼやいた。

「ねえ、ママはどうしていないの?」

 幼いルドルフが皇帝に尋ねた。皇帝は沈黙するしかなかった。

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