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新生デオンの暇仕事  作者: kazfel
ハプスブルクの黄昏
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誕生

 バルカン半島南部を狙っていたロシアは1853年7月にトルコ領のモルタヴァとワラキアを占領した。

 ロシアは9月24日オルミュッツでフランツ・ヨーゼフと対談してトルコ戦に参加して欲しいと頼み込んだ。

 10月4日にはトルコはロシアに対して宣戦布告してクリミア戦争が始まった。


 デオンたちは繁華街グラーベン通りをふらついた。店先には皇帝夫妻の肖像画や2人を描いた銅版画に絵陶磁器があふれ、庶民人気を感じていた。

「お、きれいなお姉さん」

 頭上のサラマンダーマシロはエリザベートが一人の女官を連れて買い物に繰り出しているのを知らせた。 

「お忍びにしては目立つなぁ」

 楽しんでいるところを邪魔するのは悪いと思い、デオンは声をかけずにいた。


 1854年1月に英国とフランスの連合軍がダーダネルス海峡を越えて黒海に入り、トルコと同盟を結び、3月にロシアと開戦した。

 12月に英国と協定を結んでやっとオーストリアはロシアとの関係を破棄した。


 3月5日シェーンブルン宮の皇帝は早朝にゾフィーを起こした。

「お母様どうか起きて下さい」

「陣痛ね!」

 ゾフィーは即座に助産婦に指示した。

 11時頃にシシィの陣痛が激しくなり、ゾフィーは義娘のベッドの前に皇帝と並んで腰をかけた。

 フランツ・ヨーゼフはシシィに両手を握られ、キスした。

 皇帝は涙を流し、シシィにたえず口づけをして、励ましていた。

「そろそろ分娩よ」

 ゾフィーはシシィの頭を抑えて侍女は膝、助産婦が後ろから支えた。

 午後に赤ん坊が生まれ大きな女の子だった。

「これで何もかもうまくいった。さっきの苦しさは何でもありませんわ」

 シシィは涙をうるませた皇帝といつまでも口づけをかわした。

 シシィとゾフィーは抱き合った。

 皇帝は控えの間にいた二人の弟や一族の者から祝福を受けた。体を洗って服を着せた赤ん坊をゾフィーが腕に抱いて皇帝と一緒にシシィのベッドの横に座った。

「丸い赤子だぜぃ」

「あなたほど太ってないわよ」

 ゾフィーはデオン頭上のマシロに返した。

 親子は6時過ぎにシシィが寝入るまでとどまった。教会で感謝の礼拝がとりおこなわれた。


 ゾフィーと名付けられ、3週間過ぎに子供の養育はゾフィー大公妃が決めたヴェルデン男爵夫人に任せた。

 ゾフィー大公妃の居室の隣を子供部屋にした。

 シシィはせまい階段や吹きさらしの廊下をいくつも通ってから、大公妃の決めた時間帯で子供に合うことを許された。

 ウィーンカフェ内では「男の子だったら何か恩赦があるのにがっかりだ」という学生や、

「女の子ならさらに美しくなるぜ。自慢のプリンセスじゃないか」労働者ののんきな会話が飛び交った。

「まぁ、元気に育てばいいじゃないか」

 デオンの意見で皆はうなずき、祝杯をあげた。

 1856年2月にパリで講和条約が結ばれてロシアはモルダヴィア、ワラキア侯領トルコに返還することになった。

 ドナウ川航行は回復され、ダーダネルス、ボスフォラス海峡と黒海が自由海域になった。

 ロシアは同盟に従わなかったオーストリアに異常な敵意を向くことになった。


 7月にシシィは二人目の女児を出産した。

 ギーゼラというエルトリアの最初の女王からつけられた。

 名付け親は公爵夫人ルドヴィッカだが、シシィたちの前には現れなかった。


 カフェ「テレーゼ」でもシシィの女児の報が知れ渡っていた。

「男の子なら何かしら施しか、大きな刑期免除でもあるのになぁ」

「また女の子が生まれたの?」

 リアが尋ねた。

「そうなのだよ。皇妃様が大変な美人というじゃないか」

「でもワシはリアちゃんが一番だ」

「そうだな。我らのお姫様だ」

 客たちの騒ぎをよそにリアはエリザベートの健康を案じた。

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