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新生デオンの暇仕事  作者: kazfel
ハプスブルクの黄昏
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祝祭

 1854年4月22日午後4時にエリザベートと家族を乗せた蒸気船がウィーンのヌスドルフ波止場に着いた。

 シシィはスカート裾が大きく広がったピンク色の薄手絹ドレスでアンティーラという白いレースのマントと白の小さな帽子を被っていた。 

 若く気品ある花嫁を軍服姿のフランツ・ヨーゼフが待ち望み、後ろにハプスブルク家の縁者やオーストリアの高位高官が花嫁一行を出迎えて並んでいた。

 カノン砲の祝砲と、ウィーン中の教会の鐘の音で花嫁一行を歓迎した。

 凛々しい皇帝は拍手する何万人もの市民の前で、接岸した船に駆け込んでシシィを抱きしめて、やさしく口づけをした。

 ドナウ岸を埋め、レオポルツベルクの高台まで並んでひしめく市民はシシィを見とれていた。

 ゾフィー大公妃とデオンらは、皇帝の後に続いて船に乗った。

 歓迎の公式行事のあとはヌスドルフからシェーンブルン宮殿まで馬車の隊列を組んだ。

 先頭に皇帝とマクシミリアン公爵。2台目馬車にシシィとゾフィーとデオンたち。

 3台目はルドヴィッカとゾフィー夫のフランツ・カール大公。他の家族たちが続いた。

 宮殿までの道程も群衆であふれていた。

「これは、まれにみる美人さんですなぁ」

 サラマンダーマシロがシシィの胸元に張り付いてきた。

「こら、離れなさい。皇妃には後で宮廷作法など色々学んでもらいますので」

「着いたばかりだから、少し位のんびりさせたらどうだ?」

 デオンはゾフィーに諭した。

「私たちはあなた方みたいに暇ではないのですよ。早くここに慣れてもらわないと。マシロ、離れなさい」

「ふぁ〜い」

 マシロは極端に短い足をあげた。


 23日には6頭立て馬車でファヴォリータ宮殿に向かってケルントナー内から目抜き通りのグラーベンとコールマルクトを通って、ホーフブルク王宮に入った。

 この日には48年の革命家の刑期が半減され、王室不敬罪などの特赦が下され、エルトリア、ロンバルディア、ヴェネツィアでは戒厳令が解除された。


 4月24日晴天の中、皇帝の婚礼を記念して、帝国内のすべての教会で礼拝が厳かにとりおこなわれた。

 王宮との棟続きのアウグスティーナー教会で挙式が行われ、指輪交換の瞬間にアウグスティーナー教会屋根に配置された近衛歩兵大隊が最初の祝砲を撃ち、カノン砲の号砲が響き渡った。

 夜には皇帝夫妻を乗せた2頭立ての公用馬車が街を巡遊した。

 城壁の外に住む住民たちも市中へ大挙して押し寄せた。コールマルクトとミヒャエラー広場で夫妻の馬車が姿を見せると、市民たちは興奮して大歓声をあげ続けた。

 10時からの祝賀の晩餐会でデオンとマシロはやっと、豪勢な食事がとれた。


 4月27日の夜、盛大な宮廷舞踏会が催された。

 エリザベートは全身白のドレスに新調のダイヤ入りベルトを腰にしめ、頭には頭飾りと白のロザリオをつけて、緋色のビロードの天蓋の下に皇帝と並んで腰掛けていた。

 デオンはヨハン・シュトラウスの楽曲を聴きながら適当な相手と躍った。

 皇帝夫妻は儀礼として別々の相手と躍った。

 舞踏会が最高潮になるとシュトラウス作曲で皇帝賛歌とバイエルン祝歌が織り込まれた「エリザベート賛」が初演された。


 28日の午後にはプラーター公園での祝典があった。皇帝家と公爵家の一団を乗せた無蓋馬車が何台も雑踏を抜けて行った。

 日本の提灯を飾り付けた大通りやヴルステルプラーターを通り、花火広場へ向かった。

「サーカス団か」

 ゾフィー大公妃の後について来たデオンはアクロバット芸や中世風の衣装での曲乗りなど皇妃と共に楽しんだ。

「あの馬きれいだなぁ」

 レンツ・ファミリーの馬をデオンは凝視し、シシィも同じく馬に興味を持っていたのに気付いた。

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