退屈な舞踊シーズン
11月のウィーンではカフェ内の市民でもバイエルンからの公女と皇帝の結婚準備話でもちきりだった。
「あでやかな人らしいな。こりゃ、結婚パレードが楽しみだ」
「結婚時期に政策がゆるくなれば文句ないけどな」
「フランツィが結婚するの?」
デオンが尋ねた。
「そりゃ、23歳の適齢期だし、相手はそれほど位が高くない貴族だとさ」
「父親がサーカスばりの曲乗りを家族に強いるとか貴族らしくないとか。ヴィッテルスバッハ公家は変人が多いというぞ」
「なんか大変だぜぃ」
冬の舞踏会シーズンはウィーンの貴族令嬢たちを幻滅させた。
スマートな青年皇帝の代わりにデオンが相手したが、「なんか女の人と踊っているみたい」
「身長がもっと高かったらいいのに」
「騎士じゃ物足りない」と散々な悲傷を受けた。
「皇帝は怪我の後遺症で医師から舞踊を禁じられているんだ」
「あら、そうなの。残念ね」
「最大の楽しみが無くなって今季の舞踊はつまらないわ」
令嬢たちはデオンの説明でも納得がいかない様子であった。
舞踊後の楽しみはオリオ・スープとファッシング・クラプフェンである。
高栄養の澄んだスープとあんずジャム入りの揚げパンをデオンとサラマンダーマシロは堪能した。
「別にフランツィと踊れる訳じゃないのに、女どもときたら!」
デオンが愚痴るとマシロに「お前は添え物なんだから諦めろ」と一笑された。




