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新生デオンの暇仕事  作者: kazfel
喜べ喜べ自らが陽光に満ちた大空を駈けるように
58/185

カフェ「テレーゼ」へようこそ!

 1851年8月。ウィーンはもとのように馬車や人通りもにぎやかで復興が進んでいた。

 王宮内のフランツ・ヨーゼフは聡明な貴公子になっていた。彼の執務室にデオンらは乗り込んだ。

「マシロ、デオン殿、母さんが会いたがっていたぞ」

 白軍服の皇帝はどうしてすぐに来なかったのかと、尋ねた。

「私はただエルトリアに居たかっただけだ。よくも、オーストリアとロシア軍を店に呼び寄せたな。このド畜生めが!」

 デオンが怒鳴り散らした。

「何がヨーゼフだ! 改革王のヨーゼフなめんな! 1000グルデンだ。クソ兵士の飲み食い代払いやがれぃ!」

 デオン頭上のサラマンダーマシロも騒いだ。

「そんなのすぐに払えないよ」

 皇帝は弱り目になって、すくんだ。

「なら月に100グルデン払え! それで勘弁してやる!」

 叫んだデオンは証書を出した。


「なら冬の間だけ、王宮に居なさい」

 ゾフィー大公妃が入って来た。

「月に400、2000グルデンを払いますわ。あなた方がいなくて退屈していたのよねぇ」

「じゃあ、そうするぅ〜」

 マシロが了承してしまった。

「多くもらえるなら、従うか……」


 10月初めにデオンらは王宮へ行くとメッテルニヒがいた。

「メッたん、戻ってたの?」

 マシロが聞いた。

「ええ、9月23日から来ていましたよ。大公妃があなた方を呼び寄せたと言うので来ました。マシロ殿は相変わらず太ったトカゲで、デオン殿は美青年のままなのですね。ウィーン会議のままとは……」

 腰が曲がったメッテルニヒは目をうるませていた。

 前より、さらに老い貫禄さが失われていた。彼を断罪する気がデオンには起きなかった。責めるのはやめよう。

「あなた方が普通に歳をとっただけだ。私は妖精たちに使える騎士だから若い姿のままなのさ」

「もう王宮通いは最後にします。あんな荒事(あらごと)を進める皇帝たちとは、相入れません」

「今、私たちのカフェへ来ないか? 後で送るからさぁ」

「おごりなら、喜んで」

 巨大化した白狼にメッテルニヒを乗せてブダへ飛び、デオンは先にカフェの裏口から入った。

 マシロも入り、合図のため、メッテルニヒを呼んだ。

「あなたは、もしや……!」

 リアは席を案内したメッテルニヒが、落涙したのに気付いた。

「舞踏会のあなたが懐かしく思います。もう2度とお会いすることはないと思いましたよ」

「ただの気まぐれですよ。好きに頼んでください」

「これは、ザッハートルテもどきのケーキですかな?」

 メッテルニヒは客のチョコレート・タルトを指した。

 フランツ・ザッハーはメッテルニヒ家に仕えていた料理人で16歳の頃にザッハートルテを披露した。

「それを真似たものだ。本人にはチクるなよ」

 リアは微笑んで、ささやいた。

「了承しました」

 笑顔のメッテルニヒはチョコレート・タルトとマシロのコーヒーを頼んだ。

                  第1部完

全編読破ありがとうございました

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